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『Runners Pulse』編集長の南井正弘さんの偏愛品

“完璧なフィッティング”への長い旅を楽しむ、J.M.WESTONの一足

author: 南井 正弘date: 2023/03/15

J.M.WESTON(ジェイエムウエストン)といえば、フランスを代表するシューズブランドであり、日本でも長きに渡りファッショニスタに愛されてきた。これまでに3足のジェイエムウエストンのシューズを履いてきたが、今秋もう1足を購入することに。その理由は、このブランドならではの独特な足慣らしとフィッティングにあった。

1995年、ニューヨークの直営店での出会い

最初にこのブランドを知ったのは1980年代のこと。フランスを代表するシューズメーカーであり、180という品番のローファーの美しさに魅せられたものだった。そして、そんなブランドの靴を初めて買ったのは、1995年の年末のこと。ニューヨークにある同ブランド直営店で、お菓子のブラウニーを想起させるダークブラウンスエードの180を購入した。

それまでに履いていたシューズと比較すると明らかに足長が短かったが、事前情報でジェイエムウエストン独自のフィッティング方法により、かなり小さめのサイズを提案されるということを聞いていた。そのためそれほど動揺しなかったが、そうでなければ「嘘だろ!」と叫びたくなるかもしれない。フレンチアクセントの英語を話すスタッフが「最初は窮屈に思うかもしれないけど、徐々に革が伸びて、足の一部のようにフィットするから!」と熱弁するので、それを信じて5Eという、そのサイズを買った。

日本に帰国後、室内でも履いたりして、とにかく足をシューズに馴染ませたが、なかなか足にフィットしない。このあたりは、買ったその日から足にフィットするイタリア靴や、履きならし期間が極端に短くて済むオールデンとは対照的だった。しかし3か月ほどすると、足にぴったりとフィットしたのだ。

足の一部かのようにフィットするまで、一足を偏愛しつづけて

1998年、フランスのトゥールーズで行われた「ワールドカップ フランス大会 日本VSアルゼンチン」の前日に、パリのサン・ジェルマン・デ・プレにあるジェイエムウエストンの支店で、ゴルフと呼ばれるUチップのブラックを購入した。シャンゼリゼの本店ではなくこちらを選んだのは、こちらの方が空いていて、スタッフが一人ひとりの接客に時間を費やしてくれるということを知人に教えてもらっていたから。

噂には聞いていたが、ゴルフの場合はローファー以上に手ごわい。革の繊維がぎっしりと詰まっていて、なかなか伸びてくれない。何度履いても足に馴染むような気がしないので「もう少し大きめを買えばよかったかも……」と弱気になることは数知れず。それが半年ほど過ぎたある日、つま先、甲、足裏のいずれの箇所もぴったりとフィットして、まさに足の一部になったような感覚に。それからは品のよいカジュアルスタイルを楽しみたい日や、結婚式の二次会に出席するときなどに着用。購入してから24年が経過した現在も、快適な履き心地を提供してくれている。

今回、ゴルフのタンブラウンという茶色を買ったのは、ブラックだけではコーディネートが制限されるから。そしてもうひとつの理由は、それまでの苦痛が嘘のように、足の一部かのようなフィット感へと劇的に変化する瞬間を再び体感したいから。これからまた、半年から1年という完璧なフィッティングへの長い旅がスタートする。

ゴルフのデザイン的な特徴であるつま先部分。同国のライバルブランドの似たデザインのシューズは、この部分が剥離してしまう欠点があるが、ジェイエムウエストンのゴルフは、その心配はない。
硬度の高いラバー製アウトソールは、グリップ性と耐摩耗性に優れる。元々はゴルフシューズとして開発されただけに、長時間の着用でも快適な履き心地をキープしてくれる。
型崩れの防止だけでなく足馴染みを促進させるためにも、ゴルフだけでなく、ジェイエムウエストンのシューズには専用のシューツリーを入れておきたい。
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ランナーズパルス編集長
南井 正弘

1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年勤務後ライターに転身。「フイナム」「SHOES MASTER」「OCEANS」「価格.comマガジン」「家電ウォッチ」を始めとした雑誌やウェブ媒体においてスポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズに関する記事を中心に執筆している。 主な著書に「スニーカースタイル」「NIKE AIR BOOK」などがある。「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日走るファンランナー。ベストタイムはフルマラソンが3時間50分50秒、ハーフマラソンが1時間38分55秒。
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