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人の愚痴や悩みってどう聞けば良い?

佐伯ポインティに聞く「お悩み受け止め力」の高め方

author: 白鳥菜都date: 2024/11/11

泣き言を言うのは難しい。でも、泣き言を聞く方も難しい。正直、人の愚痴や悩みを聞くのは疲れるし、良い返しが思いつかない……。

そんなことを考えてしまう筆者が、今回会いに行ったのは佐伯ポインティさん。「猥談の人」というイメージの人も多いかもしれないが、実はお悩み相談の達人でもある。ポインティさんがお悩み相談に答えるのを聞いていると、不思議と楽しくなってくる。そんなポインティさんの「お悩み受け止め力」の秘訣を探ってきた。

佐伯ポインティ

1993年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業後、株式会社コルクで漫画編集者に。その後独立し、猥談バーの運営や猥談をテーマにYouTubeやTikTokで活動。2024年7月からはPodcast番組「生き放題ラジオ!」を配信。開始直後よりSpotifyの日本デイリーチャートで1位にランクインし、注目を集める。

X: @saekipointy@waidanbar
Instagram: @saeki_pointy
YouTube: @saeki_pointy
TikTok: @saekipointyy

お悩み相談番組「生き放題ラジオ!」を始めたわけ

―― 2024年7月からPodcast「生き放題ラジオ!」を始められましたね。今までは猥談を中心に活動していたと思うのですが、より広いテーマでお悩み相談をすることになったのはなぜですか?

前から、いつかPodcastをやってみたいなー! と考えていました。X、YouTube、TikTok、InstagramといろいろなSNSをやっていると、同じコンテンツでもそれぞれ見てくれている人が違う感覚があって。Podcastはまだやったことがなかったので、どんな感じか気になっていたんです。

そんなことを考えていたタイミングで、祥伝社の編集者さんから「お悩み相談の本を作りませんか?」という連絡をいただいて。それで、本にすることを前提に「生き放題ラジオ!」を始めたんです。

―― その編集者さんは、どこか、ポインティさんのお悩み相談に魅力を感じていたんですね。

これまでの動画をめっちゃ観てくれていて、今回の提案をしてくださったみたいです。最初に依頼をくれた時に、「ポインティさんは、重い悩みや相談でも真剣に聞いてくれる。けれど、暗くなりすぎたり相談者のテンションに引きずられすぎるところがないから安心感がある」ということを言ってくれました。

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―― 本にする前提で始まった番組とのことですが、結果的に現在まで番組は続き、反響も大きいですよね。

本当は4〜5回で終わらす予定だったんです。でも、やってみたら「あれ? ずっとランキング上位にいるな? 米津玄師の次にポインティってどういうランキング?」となって。お悩み相談ってこんなに受け入れられるんだとびっくりしました。

これまでの活動で、多くの人に受け入れられそうな時って兆候があったんですよね。それは、自分で強く宣伝しなくても、友達が「聞いたよ」「見たよ」と言ってくれること。「生き放題ラジオ!」はそういった反響が多かったので、もっと続けてみようかなと思い始めました。

ポジティブマインドだけど人の悩みを聞くのは好き

―― ちなみに、ポインティさんご自身は今まで、お悩み相談の本を読んだり、お悩み相談の番組を聴いたりすることはありましたか?

いや、それがあまりないんですよね〜! あんまり悩まないんです(笑)。だから正直、お悩み相談ってそんなに人に求められているのかなと、疑問に感じる部分もありました。

でも、一時期やっていた揚げパン屋さんで、お客さんとして来てくれた視聴者さんと話しているうちに疑問が解消されました。「苦しい時期にポインティさんの動画を観てすごく助けられました」と言ってくれる人が、結構いたんですよね。もちろん今まで動画へのコメントも見ていたけれど、実際に会って喋ることで、祥伝社の編集者さんが言っていたことの意味を実感できました。

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―― 人からお悩み相談をよくされるようになったのは、SNSで積極的に発信するようになってからですか?

そうですね。たまたまですが、友達は自分と同じように悩みが少なめの人が多い気がします。楽天的な人とか、ポップな人が多いかも(笑)。でも、クリエイターの友達の相談とか、恋愛相談はたまにありました。

SNSで発信を始めたら人の悩みに触れることが増えましたね。Instagramでお題募集をすると、悩みを送ってくれる人がすごく多くて。性愛の分野はもちろん、ウェルネス的な文脈のものや、もっと広く人生の悩みみたいなものまで広がってきました。

―― ご自身も周りのご友人もポジティブなのに、悩み相談に乗ったり、泣き言を受け止めるのが上手なのはなぜですか……?

たぶん、相談してきた人の悩みに共感する、同じ悩みがある存在っていうよりは、逆にめっちゃポップな人間だからかもしれません(笑)。精神がかなりシンプルで葛藤がないんですよね。

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自分自身に厚みや深みがないから、人の悩みを聞くのが好きという面がある気がしていて。何か引き裂かれるような気持ちになる葛藤をした経験がなくて、割とずっとポップに生きてきたので(笑)。そういうある種の軽薄さによって、「人の業(ごう)を見せる相手」として選ばれやすいところもあるのかもしれないです。

―― これまでに人から聞いて、印象に残っている泣き言や悩みはありますか?

たくさんあるな……。でも、最近だと、ある作家さんから「マジで、真剣に死ぬのが怖くて眠れない」という悩みを聞きました。死ってみんな怖いとは思うんですけど、夜寝れないほどっていうのはすごいなと思って。

それを聞いて、僕はその作家さんが読書家だからじゃないかなと思ったんですよね。本を読んでいると、作者と友達になったような気持ちになることってあるじゃないですか。その作家さんは、カントのことをいま連載してる作家みたいに熱く語るほど、古典や哲学書、昔の小説を読みまくってる人なので、好きな本の作者が死んでるパターンがすごく多いんですよね。そうなると、友達が結婚しだして焦るように、「俺の好きな人、全員死んでる。俺も死ぬのか……」って焦る、みたいな。

普通に夜の過ごし方をラフに話していた時にそんな話になったんですけど、やっぱり人が考えていることは面白いなと思いました。

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お悩み相談はストーリーとして楽しんでOK!

―― お悩み相談には「共感力」が大事みたいな話をよく聞きます。でも、先ほどのお話のように、思いもよらない悩みを聞く場面もありますよね……。 

個人的には、共感する力が強いと、逆に相手の悩みの底にある悲しみや怒りに引きづられて辛くなっちゃうかもと思います。

ポインティ自身は本当に、普段から人に共感することがないタイプなんですよね。でも、相手を理解するのはすごく好きで。

もちろん、話してくれたことは真剣に聞きたいけれど、自分の人生と相手の人生には距離があることをちゃんと意識するというか。相手の人生に、自分が入り込みすぎないようにするのも大事なんじゃないかなと思っています。

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―― そこのバランスが難しいです……。私も割とポジティブなタイプなのと、人の泣き言や悩みに深入りしすぎないことを意識した結果、「きっと大丈夫だよ」ってすぐ言ってしまうのでよく怒られます。

自分で言うのも不思議だけど、こう見えてあんまりポジティブを押し付けないタイプなんです(笑)。

相手の“作画”に合わせるというか。たとえば、相手が『NANA』みたいなテンションで悩んでいるのに、ポインティが『コジコジ』みたいなテンションで話しちゃったら合わないじゃないですか。だから、そこは相手のテンションに合わせることも大切なのかなって。Podcastでは、文体とか相談者が使ってる単語から、どんな作画かなーってその場で考えてます。

ポジティブタイプで、人からの泣き言や相談を受け止めるのが下手な人は、相手の「葛藤」に着目するのが良いかもしれないです。何かを悩んでいる人って、A方向とB方向の両方に引っ張られて、その場に止まっている。その人にとってのAとBが何なのか、そして今どんな環境にいるのか、動けない理由は何なのかを深掘りする作業をしていくだけでも、相手の話に入り込めると思います。

そういう風に話を聞いていると、「その状況だったら悩むな〜!」「それって簡単に決断できないな〜」と理解できるので、もうちょっと深く話を聞けるようになるんじゃないかな。

―― なるほど。でも、それって結構、労力はかかりそうですね。ポインティさんは楽しんでそういった深掘りをされていると思うのですが、楽しむコツはありますか?

たぶん、悩みを解決するぞ〜! って意気込んでなくて、“ストーリー”として楽しんでるんだと思います。

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人の泣き言や悩みを聞いて楽しくないのは、人生の途中のエピソードだけを聞いているからだと思っていて。例えば、漫画の6巻だけ読まされても、キャラも展開も分からないし、なかなか楽しめないですよね。単行本も連載分も追いかけるつもりでいろいろ質問して状況を把握すると、いま主人公(相談者)が直面してる葛藤に対して「熱いシーンじゃん!」って思えるんですよ。

だから、例えば、会社員で仕事に悩んでいる人からの相談だったら、「その上司はどんな人なの?」「その時周りはどういう反応なの?」と聞きながら、情景描写を引き出して、自分の中でストーリーにしていく。そういう風に考えると楽しめるんじゃないでしょうか!

―― 一般的には良くないと言われるかもしれないけれど、こと悩み相談においては「他人の人生をコンテンツとして楽しむ」ことも必要かもしれないということですね。

そうですね。相手の方から自己開示して、話してきてくれた場合は、楽しみながら話を聞いても良いと思っています。「ちょっと聞いてくれない?」と言われたら、存分に楽しみたい。

でも、自分から悩みを引き出すようなことはしないようにもしています。「なんか浮かない顔してんじゃん」とかも言わない。無理に相手の心の中に入っていこうとするのって、開場されてない劇場に勝手に入ろうとするやばいやつみたいだなって思って。

だから、「お悩み受け止め力」を発揮する時は、相手が悩みを聞いてほしいと言ってきた時だけ。相手が積極的な時だけ、相手のストーリーを深掘りして楽しむのが良いと思います。

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ライター・編集者
白鳥菜都

ライター・編集者。1999年生まれ。学生時代からライターとして活動を開始。会社員をする傍ら、フリーランスでもライター・編集者として活動を継続。好きな食べ物はみかん・エビ・辛いもの。
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