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特集

武装じゃない、ありのままを肯定してくれる一着

MONO NO AWARE・加藤成順の「お守り服」

author: 白鳥菜都date: 2025/04/26

クローゼットやたんすの中にある数々の服。「この服、なんで買ったの?」と聞かれて、ちゃんと答えられる服はどのくらいあるだろう。
 

そこで、ファッションアイコンとしても知られるバンド・MONO NO AWAREのギタリストの加藤成順さんに、「お守り服」をテーマにインタビュー。加藤さんにとってお守りのような存在の服はあるかと聞くと、すぐに挙がったのが「BODE(ボーディ)」のシャツだった。
 

「意味を持って服を選んでいる」と語る彼に、このシャツを着るときに考えることや、ファッションとの向き合い方について話を聞いた。

加藤成順

1993年生まれ、東京都八丈島出身。バンド・MONO NO AWAREのギタリストとして活動する他、アコースティックユニット・MIZ、バンド・小原綾斗とフランチャイズオーナーでも活動。

Instagram:@seijun_kato
X:@seijun_kato_

大学入学後にのめり込んだファッションの世界

東京都八丈島出身の加藤さん。高校生の頃まで暮らした地元には、コンビニやチェーン店もほとんどなかったそう。当然、おしゃれな服が手に入るお店もあまりない。当時は、そこまでファッションに興味はなく、たまに遊びにいった都内のお店で服を買うくらいだったそう。

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「普段は学校の制服とジャージで生活していました。島で好きな服を買える場所もなかったから。高校生らしく、友達と遊ぶ延長上で、都内の『WEGO』とか『SPINNS』とかには行っていたかな。懐かしい思い出です」

そんな彼が、ファッションに興味を持ち始めたのは高校卒業後のこと。大学入学を機に、周りの友人や先輩の影響を受け、裏原宿の古着屋さんに通うようになったそう。

「最初は周りの話に流されるままに『この服はこんな価値があるんだ』という感じで、高い古着を買わされまくっていて(笑)。けど、そんななかでだんだんと自分でもそれぞれの服やブランドについて知るのが楽しくなっていきました。古着をきっかけに洋服が好きになりましたね」

それからはとにかくいろいろな服を試して、自分に似合うスタイルを模索する日々。それまで知らなかったファッション好きたちの価値観に刺激を受け、知識を吸収しようとした。今振り返れば、全く似合わない服を着ていた頃もあるという。

「もともとセンスがある人もいますが、僕はそうではないので、どうにか学んで自分に似合うスタイルを探そうと、周りに言われるがままに試した時期もあります。大学生の時には、美容師さんに勧められて髪の毛を染めたら似合わなすぎて泣いたこともありました。でも、そういう積み重ねがあったから、今でもファッションを楽しめているのかなと思います」

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自分の信念を思い出させてくれる「お守り服」

そんな加藤さんが今回「お守り服」としてチョイスしたのが、アメリカのブランド「BODE」のシャツ。ニューヨークを拠点に活動するエミリー・アダムス・ボーディ(Emily Adams Bode)によって2016年に設立され、メンズウェアでは比較的珍しい女性デザイナーによるブランドとしても注目を集めている。

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加藤さんがこのシャツを買ったのは3年ほど前のこと。ここ数年、習慣にしている“自分への誕生日プレゼント”として選んだのが「BODE」のシャツだった。

「毎年、自分の誕生日に合わせて4月に気に入った服を買うことにしているんです。この服を買う前からBODEは好きなブランドだったのですが、ちょうどこのシャツを見つけてグッときて買いました」

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シャツには、複数人の人物がスポーツをする様子と西暦、そしてそれぞれの人名が手描きで描かれている。このイラストこそが、今回加藤さんがこのシャツを「お守り服」として選んだ理由だという。

「このイラストはデザイナーのおじいちゃんやひいおじいちゃんなど、先祖を描いたものなんだそうです。自分のルーツを辿ってオリジナリティを出すものづくりの方針は、なんだか自分の音楽への向き合い方にも似ている気がして惹かれました。

いろいろな音楽を聴いて吸収できるものもたくさんあるけれど、結局は自分のなかでどう解釈するかが大切だと思っていて、このシャツからは似たものを感じるんです。だから、このシャツは自分を見つめ直すきっかけや、自分の信念を改めて自覚させてくれる服という意味で、『お守り服』に選びました。きっとこれからも手放せない1着です」

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BODEの服はハンドペイントのイラスト以外にも、ヴィンテージ生地を使ったり、ハンドメイドの刺繍を入れたりと、伝統を感じさせる。さらにこのシャツも含め、極小生産あるいは一点ものとして作られたアイテムが多いのも魅力だと、加藤さんは語る。

シンプルながらもインパクトのあるイラストの描かれたシャツ。どんな時に、どんなアイテムと合わせて着ることが多いのだろうか。

「僕は衣装と私服をあまり分けないのですが、このシャツはMIZ(※)のライブの時に着ていることが多いかもしれません。たぶん、MIZの方がよりリラックスした、ありのままの自分でステージに立っているからだと思います。

合わせ方は、中にボーダーのTシャツを着てみたり、色のあるパンツを履いてみたりと、シンプルになりすぎないようにバランスを取るようにしています。もう少し寒い日だったら、フーディーと合わせて着ることもありますね」

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(※)MIZ……MONO NO AWAREのボーカル/ギター・玉置周啓と、加藤成順によるアコースティックユニット。

ありのままの自分の心を表現するために着る

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加藤さんの「お守り服」の話を聞いていると、ブランドやアイテムの背景をよく調べてから服を買っている印象を受ける。グッとくるアイテムに共通点はあるのだろうか。

「BODEもそうですが、直感的にアイテムから意味や意思を感じ取って、惹かれることが多いんです。『きっとこういう意味でこんなデザインにしているんじゃないかな』とか。たとえばCORMIO(コルミオ)というブランドのベルベットパンツを持っているのですが、上品なデザインなのにロゴパッチが付いていて、なんだかパンク精神を感じてかっこいいなって思って。僕もあからさまに感情を出すよりは、内に秘めているものが多いタイプなのでグッときて買いました。

そういったことからInstagramをフォローしたり、デザイナーのインタビューを読んだりして、もっと好きになるみたいな流れが多いです。もちろん、ぱっと見てかわいいとかきれいとかで買うこともありますが、好きになったブランドは結局あとで背景を調べちゃいます」

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服を選ぶとき、「武装」のようになりたい自分になるために服を選ぶ人もいるだろう。しかし、加藤さんの服選びは真逆のスタンスのように感じる。さまざまなファッションに挑戦していた大学生の頃から比べて、今はどんなふうに服を選んでいるのだろう。

「『こうなりたい』というよりは『自分に合うかどうか』を大事にしています。キメキメにしているのが表現としてかっこいい人もいるのですが、僕はどちらかというと無理したくない。やっぱり生きているのは『今』なので、生活や考えが素直に表れているような組み合わせが好きですね。若い時は奇抜な格好もしていたけれど、25歳を過ぎた頃から、どんな意味を持った服なのか、そしてそれは自分の考えに近いのかを意識するようになってきました。

僕の仕事はステージに立つ仕事ではあるけれど、ありのままの自分を好きでいてくれる人たちのおかげで活動できている実感もある。だから、僕は『武装』せずに自然でありたいなと思っています」

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さらに、ファッションが好きだからと言って洋服をとにかくたくさん買うのが楽しいというわけではないとも語る。

「お金がたくさんあってなんでも買える状況になったら、あんまり楽しめない気がするんですよね。自分の持っているお金やアイテムのなかで工夫するのが面白い。

だから、今でも古着を買うこともありますよ。都内の古着屋さんは価格が高騰していたり、お店の色が強いセレクトになっていたりするので、最近よくやるのは地方のトレジャーファクトリー巡り。地域によって売られているものに個性があるし、なんでこんなものが売られているんだ!? っていうものがあったりして、面白いんですよ。服が好きになった人は、そうやって自分で探しに行くのも楽しいんじゃないかなと思います」

今回、「お守り服」をテーマに話を聞いたが、ある意味、加藤さんはいつでも「お守り」のように“ありのままの自分でいることを助けてくれる服”を選んでいるのかもしれない。最後にこの特集の名前でもある「着る理由」を聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「服は、自分の精神性を表現するもののひとつだと思っています。だから、いつでも自分にフィットしたものを着たいし、そのためにブランドが何を考えどんなふうに服を作っているのかも知りたい。僕は言葉で表現するのは苦手だからこそ、それぞれ『着る理由』を持って服を選んでいるつもりです。ファッションは、これからも自分にとって大事にしたい表現方法のひとつです」

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ライター・編集者
白鳥菜都

ライター・編集者。1999年生まれ。好きな食べ物はみかん、柿、桃、洋梨、辛いもの、お茶。
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