布の使い手。そんな言葉があるか分からないけど、布の使い方が上手な人はオシャレだ。これは間違いない。例えば、一般的に馴染み深い布のひとつ、マフラー。色や柄、服との合わせ方、巻き方次第でオシャレアイテムか、ただの防寒布になるか。その差は大きい。
もちろん布は、首に巻くストールだけでなく、壁に飾るタペストリー、床に敷くラグなど、日常に浸透。オシャレのアイテムであり、生活を豊かにする装飾品であり、実用品でもある。
世界中は布で溢れている
世界を見渡せば、多種多様な布(織物)が存在し、地域や部族によって織り方やモチーフ、素材、使い方は大きく異なる。
例えば、コンゴの「クバクロス」、マリの「ボゴランフィニ」、イランの「ギャッベ」、トルコの「キリム」、ウズベキスタンの「スザニ」、インドネシアの「バティック」、インドの「ルンギー」、カンボジアの「クロマー」……個性あふれる布は枚挙にいとまがない(国名を記載したが、その国のみでなく周辺エリア一帯で作られている布は多い)。
またひと口に布といっても、手織り(手作業)か機械織りかでも大きく異なる。手織りは伝統を受け継ぐものが多く、長年にわたり愛されてきた。その分高価で、装飾品としての価値が高い。
ポップでカラフルな万能布「カンガ」
手作りの布は味わい深く、同じものがひとつとないためコレクションにはいいが、やはり日常使いには機械織りの布がぴったり。中でも万能なのが、ケニア・タンザニア周辺で使われている「カンガ」だろう。「キテンゲ」や「キコイ」、西アフリカの「パーニュ」もあるのだが、使いやすさとバリエーションの豊富さでは随一だ。
カンガはコットンに柄がプリントされたもの。現地では女性が身にまとっている姿をよく見るが、それだけでなくモノを包んだり、背負子にしたりと汎用性が高く、一枚あると重宝する。
日本では衣装としてなかなか着られないが、では何に使っているかといえば、まさになんでも。押入れの目隠しに部屋の仕切り、キャンプでのテーブルクロス、冬のストール、レジャーシート代わりの敷布、寒いときの掛布、風呂上がりの腰巻き、湯たんぽカバーなど。大きさといい素材といい、ちょうどいいのだ。
天然素材で作られて、繰り返し使えて、何にでも応用できる布は、昔ながらの生活を今に伝える存在。“布の使い手”とは、見た目を繕うだけではなく、ほころびを繕いながら大事に使うSDGsな人のことかもしれない。