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特集

新たな環境に飛び込んで見つけた新しい自分

シンガー・Kaorukoの“現在地”を示すバケットリスト

author: 白鳥菜都date: 2024/05/28

都内のクラブを中心に活動の場を広げるシンガーソングライターのKaorukoさん。「アンダーグラウンドな世界で活躍するアーティスト」と聞くと、なんだかトリッキーな人物像をイメージしてしまう。しかし、取材現場に現れた彼女は飄々としていて、それでいてチャーミングだった。
 

いったい彼女はこれからどんなことをしたいと考えているのだろう? Kaorukoさんのバケットリストを聞いてみると、「ミュージシャンとして」ではない新たな一面も見えてきた。

Kaoruko

横須賀生まれ新宿育ちのシンガー・ソングライター。学生時代にアイドルとして活動したのち、グループ解散後も音楽活動を継続。2019年にEP「Starting now」でデビュー 。現在はクラブを中心にパフォーマンスをするアーティストとして活動中。

Instagram: @_kaoruko___

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「いざ聞かれると、あまり思いつかないかも……」と言いながらもKaorukoさんが教えてくれた4つのバケットリスト。それぞれについて詳しく聞いてみると、彼女が大切にしていること、彼女とクラブシーンとの関係性が見えてきた。

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金継ぎを体験してみたい

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――初めから意外なバケットリストです。Kaorukoさんはどんなきっかけで金継ぎに興味を持ったのでしょうか?

そこまで詳しくはないけれど、もともと日本の伝統工芸には興味があって何かやってみたいなと思っていたんです。そんな中で、大好きな椎名林檎さんが東京事変のYouTubeチャンネルで金継ぎを体験しているのを観て。「あ、これ私もやってみたいかも」と思ったのがきっかけです。

動画を観ているうちに金継ぎの背景にある“モノを大切に使う精神”にも興味が湧いてきました。

――そうだったんですね。Kaorukoさんご自身はもともと一つのモノを長く使うのが得意なタイプですか?

最後までしっかり使い切りたいという気持ちは強いほうだし、得意だと思います。例えばよく使っているリュックサック。もう10年以上使っていて、持ち手が千切れそうになったのでリメイクしました。

服や雑貨なども新しいモノはあまり買わなくて、ずっと同じものを使っています。5年くらいほぼ毎日履いてボロボロになったニューバランスのスニーカーもあります(笑)。ちなみに、今履いているこのデニムも7年くらい履いています。

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――もし金継ぎを体験するとしたら、具体的にどんなものを金継ぎしてみたいですか?

王道の食器類は試してみたいなぁ。でも、それ以外のものでもできるのかな?

陶器の作品やイラストを創るアーティストで、ancccooさんという方がいらっしゃって。いつも作品がすてきだなと思っているのですが、展示を見に行ったときに金は使っていなかったけど繋ぎ目が印象的な作品がありました。そういうオブジェみたいなものを金継ぎするのもかわいいかもしれないと想像しています。

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クラブ以外の空間でライブを試したい

――そもそも、最近はどんな場所でライブすることが多いのでしょうか?

普段出演しているライブは、クラブで開催される深夜帯のイベントが多いです。DJたちに混じって出演して、フロアでライブをすることが多いですね。

でも、私はもともとアイドルをしていたから、最初はステージじゃなくてフロアでライブするのにはなんだか違和感がありました。同じようなスタイルでライブをしている人もあまりいないので、目標も探しづらくて。だから、実はつい最近まであまりライブが好きじゃなかったんですよね。

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――フロアでのライブのどんなところに違和感を感じていたのでしょうか?

アイドル時代のライブと比べると、クラブでのライブはお客さんとの距離がぐっと近くなるんですよね。演者とお客さんが同じ高さの場所にいて、すぐ近くに人がいる状態でパフォーマンスするのにどうしても慣れなくて。

でも、今年の3月に渋谷の「翠月」でやったニューEP「Y」のリリースパーティーで意識が変わりました。そのときも狭い会場に多くの人が集まって盛り上がったのですが、なんとなく良い空間が作れたと実感できたんですよね。クラブシーンってほかの音楽を楽しむ場所に比べるとなかなか広がりを作りにくいと感じているのですが、だからこそ自分はここから発信することをやり続けなきゃって思えました。ロールモデルがなくても、自分がなればいいやって吹っ切れたらどんどん楽しくなってきましたね。

――とはいえ、挙げてくださったバケットリストを拝見すると、クラブ以外にもさまざまな空間でパフォーマンスをしてみたいということでしょうか?

そうですね。クラブという自分にとってのレギュラーな場所ができたので、それ以外の場所にも飛び出していきたい気持ちもあります。例えば、先日初めて台湾のイベントに出演して、そのときは野外のステージだったのですが開放的で気持ちよかったので、広い会場でももっと試してみたいなと思いました。

あとは、ライブハウスなんかのステージにポツンと自分1人で立って歌うようなライブは近いうちにやってみたい。ワンマンライブでなくて、いつもクラブでやっているようなDJの仲間や友達と一緒に演出を考えて、ショーケースみたいなことを色んな会場でもやってみたいなと思っています。

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クラブシーンでの活動を長く続ける

――「有名になる」とか「売れる!」と書くのではなく、「長く続ける」と書かれているのが興味深いです。

続けていくことって大事だなと最近思うんです。 昔は大人に「続けるのが大事だよ」と言われると、正直あまりピンと来なかったんですけど。

ライブが苦手だった時期も、ライブなんか一切しないで曲だけ作っていられたらと思っていました。でも、結局続けていたら楽しくなってきたんですよね。せっかく楽しめるようになってきたんだから、頑張れるうちは続けていきたいと考えるようになりました。それに、いまはクラブのコミュニティですごく周りの人に助けてもらっているので、いずれは自分がもっと引っ張っていけるような存在になれるといいなって。

――ダンスフロアですてきな出会いが多かったんですね。

本当にそうですね。私が出演したり遊びに行ったりしているクラブのお客さんって、歳上のものすごく真剣な音楽好きの方がほとんどなんですよ。でも、そんな人たちが私のような音楽も受け入れて一緒に楽しんでくれるのってうれしいなと思うんです。

私の曲のリスナーは若い子もいれば、歳上の人たちもいる。でも、クラブにはまだ若い子がそんなに来ていないので、世代を超えて一緒に楽しめるような“架け橋的な存在”に自分がなれたらいいな、なんて考えています。

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子どものための活動をしたい

――音楽活動とはまた全然違った角度のバケットリストですね。

実は私、学童の職員としても働いているんですよ。子どもたちが安全に遊べるように見守る係です。大人と子どもではあるけれど、友達同士のように会話できるので、いつも新鮮な気持ちになります。

それ以前にも保育園で保育補助の仕事をしていたこともあります。そんな背景もあって、漠然としてはいるけれど、子どものためになるような活動がほかにもできたらいいなと考えています。

――子どもと関わる仕事をするようになったのには、具体的に何かきっかけがあったのでしょうか?

大学時代に「発達心理学」という分野を勉強していて、子どもの心理的な発達について学んだのですが、今でも興味があって。

子ども向けのカウンセリングルームなどもありますが、もっと気軽に子どもが大人に悩みや不安を相談できるような場所があったらいいのかもな、と思っています。とはいえ、これについては全然具体的な活動ができているわけではないですし、まだまだ勉強中という感じです。

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“人との出逢い”でたどり着いた、Kaorukoの現在地

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――今回バケットリストを書き出してみて、ご自身の人生に対する気づきはありましたか?

ここ2年ぐらいでガラッと自分の考え方が変わったんだなと実感しました。元々の私って、ものすごくネガティブで、周囲の声が気になって、何か始めてもすぐにやめたくなってしまうようなタイプでした。

でも、クラブで出会った歳上の友人たちに「Kaorukoは色々気にしすぎ。もし失敗してもそれすら曲のネタにできるじゃん」みたいなことを言われて、本当にそうだなと思って。それから、いろんなことに恐れずに挑戦できるようになった気がします。

とはいえ、楽観的になりすぎて、思い悩むこともなくなった結果、曲ができないという悩みが出てきたのですが(笑)。でも生きやすくはなったので、クラブに飛び込んでみて本当に良い刺激をもらったなと思います。

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――ネガティブだったというのは意外でした。大学在学中にアイドルを経験し、アーティストへという経歴から、大胆な選択が得意な方なのかなと勝手に想像していました。

アイドルは最初から大学在学中だけと決めていて、もともとは普通に就職活動をするつもりだったんですよ。でも、いざアイドルが解散するとなったときに、やっぱり自分がやりたいのは音楽しか思いつかなかった。だから、就職せずに今の道に進みました。

――では、Kaorukoさんが人生の中で何かを選択するときに大事にしていることはありますか?

「それを選択したら、楽しいかどうか」だけかな。私、割と素直に気持ちが出てくるから、自分の本心にはそんなに迷わないんです。だから例えお金がなくても、大変だとわかっていても、自分が楽しめること、本当にやりたいことをやって生きていくんだろうなと思います。

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ライター・編集者
白鳥菜都

ライター・編集者。1999年生まれ。学生時代からライターとして活動を開始。会社員をする傍ら、フリーランスでもライター・編集者として活動を継続。好きな食べ物はみかん・エビ・辛いもの。
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