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Interview

vol.1:アオイヤマダ×大西茅布【前編】

最年少でTARO受賞…たまに「いい加減にしてほしいな」と思うことはあります(笑)

author: 山田ゴメスdate: 2023/06/28

「Z世代」のイノベーターたちにスポットを当てるリレー対談連載がスタート! 第1回目は、もっか若手では断トツな注目株の一人とされている表現者・アオイヤマダさん(23)が、「一番会ってみたい!」という、史上最年少の18歳で「岡本太郎現代芸術大賞」(※通称「TARO賞」)を受賞した新進気鋭のペインター・大西茅布(ちふ)さん(20)を指名 ── 前編は、アオイさんから茅布さんへの質問を中心に、お互いの想いの丈をたっぷりと語っていただいた

アオイヤマダさんから
大西茅布さんへの質問

●幼少期に観ていたホラー映画が作品の源泉?
●「最年少」という形容に対するストレスは?
●大きい作品を手がける理由とは
●自分の「作品」はどんな存在?


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 表現者・アオイヤマダ   アーティスト・大西茅布

映画でも何でも俯瞰的な視点から観るくせがあって…

アオイヤマダ(以下、アオイ):「対談」ってセッティングで、いきなり並んで座らされたら……緊張しちゃうね(笑)

大西茅布(以下、茅布):ですね(笑)。

アオイ:今回、この対談のお話をいただいて、私は一番に茅布ちゃんのことが頭に浮かんだの。最初に茅布ちゃんの作品を観たのは2018年に「TARO賞」を受賞したときの展示だった。感動のあまり声が出なくて……。

その後、SNSで辿っていたら、再び銀座蔦屋書店で観ることができたんだけど、そのスケール感にただただ圧倒されるばかりだった。

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茅布:だいぶ前から注目していただけて、うれしいです。ありがとうございます。ただ、ずいぶん失礼なことを申してしまうと……私はテレビのない家庭で育ったからか、しかも運動音痴な人間であったせいか、ダンスの世界にはほとんどアンテナを張らずに生きてきました。

なので、アオイヤマダさんのお名前も、今回の対談企画の話をいただくまで、存じあげませんでした。東京オリンピックも観てなかったので、アオイさんのご活躍も知らないままで……。

アオイ:そんなの全然平気(笑)! 

茅布:でも、YouTubeやインスタなどでアオイさんのことを検索したら、すごい作品がどんどん出てきて、目を丸くしていました。

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アオイ:ありがとう! ところで、「幼少期にお父様からホラー映画を観せてもらったことが、今の画風の原点になっている」って、何かで読みました。

茅布:ホラー映画に関しては、幼少期から「ああ…ここの筋肉はこうやって動くんだ」「動物には血が流れているから、こういう風に血が流れるんだ」……みたいに、わりと冷静に観ていました。その色合いが勝手に脳の基準として残っているというイメージ……かな?

アオイ:「ちゃんと理解しよう!」としながら観ていたってこと?

茅布:はい。矛盾した表現なのかもしれませんが、「客観的な妄想」を膨らませながら……(笑)。

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アオイ:(同室にいた茅布さんの父親に対して)ちなみに、お父様はホラー映画を茅布ちゃんに、意図的に観させていたんですか?

お父さん:意図的……なのかな(笑)? とにかく何でもいいから「親子で一緒に観よう」と──一緒に観ることができる映画となれば、むずかしいセリフの作品は子どもには無理、あまりに子どもっぽい作品は私には無理。で、ともに楽しめるのは、ホラー映画あたりかな、という結論になりました。

アオイ:「一緒に〜」っていうのは、素敵な教育方針ですね。私は、母の性格が突発的だったというか──(出身地の)長野県にいたときは、いきなり雪で波をつくって、寒いなか二人でビキニでサーフィンしている風な写真を撮ったり……と、そういう遊びばっかしていた(笑)。どこかに行くっていうよりは、家のまわりでどれだけ遊べるか……を、全力で追求していた。

茅布:私は、ずっとインドア系でした。親も大学の先生をやっていて──いわゆる勉強系で、それを見て育ってきたから、ずっと家に篭もりっぱなしだった。

そのせいか、映画でも何でも俯瞰的な視点から観るくせがあって……。カフェの2階から人混みを “鳥の目” で見ながら、「このカップル面白い!」とか「この親子ヘンな感じ…」とか、あれこれ想いを巡らせるのが好きなんです。その様子をメモしたりスケッチしたりして、絵に落とし込んでいる。引き篭もりならではの「上から目線」で(笑)。

アオイ:いいと思う! 

茅布:でも、引きこもってばかりではさすがにダメなので、最近は旅行チケットを安く譲ってもらったから、パッと沖縄に行って──宿も決めずに2週間くらい彷徨い続ける……みたいなことを父とやったりしてします。

アオイ:たとえば、沖縄に行って海を見たら、その「見たもの」は絵に反映されたりもするの?

茅布:水や人の感じとか、じっとりとした夏の暑さ……そこで感じた空気感のようなものを想い出して描いたりはします。アオイさんは、「見たもの」をご自分のパフォーマンスにどう反映していますか?

アオイ:反映かぁ……そういったことはほとんど考えないようにしている。こうしたインタビューを受けるようになってから、「見たものが踊りに及ぼす影響」について質問をされる機会が多くなって、一時期は「見るもの」「感じたこと」に対して、意識的に自問自答をするようにしていた。

たとえば、エジプトで見た遺跡や砂のつぶつぶ感や人混み……これらも全部、踊りに活かさなければいけない……みたいな。でも、そういう “義務感” に押しつぶされて、ヘトヘト疲れてしまったことがあるの。

だから、今は「見たものすべてを作品に無理やり落とし込む必要はない」と開き直ってる(笑)。でも、記憶に残っていれば自然と反映されると思う。

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茅布:私も、まわりの “近い人たち” ──同級生とかばかり見ていると疲れちゃうから、本や映画を読んだり観たりして、自分から遠い距離にいる人の感情や考え方を自分なりに消化して、表現したほうがいいんじゃないかな……と。即物的な直感に頼りすぎても、絵が単純になってしまいがちなので。

アオイ:すごく勉強になる! 私のような「身体を使っての表現」になってくると、ついつい自分を見つめすぎてしまう。見つめすぎて持っている知識や情報が常に磨耗されていく一方だから、それが苦しくて。あまり性急に、感情に任せすぎて “作品” を創ろうとすると、自滅しちゃうのかもしれない。

茅布:ゆっくりとゆっくりと、マイペースに。そこは心がけています。

「TARO賞」「藝大生」の “肩書き” も今では「ありがたい」と思えるようになった

アオイ:私がはじめて取材でメディアに取り上げていただいたのは、17歳くらいかな? だけど、インタビューに応えたり、テレビとかに出る機会が増えていくうちに、だんだんとメンタルバランスが不安定になってしまった時期があったの。「メディアが望んでいる姿を演じなければいけない」って、自分で自分を追い詰めていた。

茅布ちゃんも最年少で「TARO賞」を受賞したわけでしょ? その「最年少」って “肩書き” がプレッシャーやストレスになったことはない?

茅布:いい加減にしてほしいな……ってときはたまにあります(笑)。

アオイ:(爆笑)

茅布:取材やインタビューで昔の絵を掲載されたりすることがあるんですよ。「代表作」として中学3年のときの絵を出されたりして。さすがに古すぎるって言うか……せめて高校や大学の作品を出してほしい(苦笑)。

あと、以前、某カフェで展示の企画があったんですけど──そのときは高校生だったのですが、出展した絵の色がどぎつすぎて「この色じゃコーヒーが美味しく飲めない」と言われてしまい……。

まあ、そこは「たしかに!」と自分でも納得もできたので、怒りはしませんでしたが、代わりに飾られたのが小学5年生のときに描いたスケッチだったんです。心なし残念な気分になりました。自分が出したい作品と “受け入れる側” の人たちが求めている作品とのギャップには、常に悩まされています。

アオイ:わかる~! 私だって、10代から20代になるころ、周囲の評価と自分との溝の深さに散々悩まされてきたから。

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茅布:ほんの数年前までは、自分はただ「絵を描くこと」「表現すること」だけをやっていればいいんじゃないか……と、思っていたんですけど、今の時代は「自分の表現の背景」をしっかりと伝えることも大切なのでは──と、藝大に入学して「言葉にしないと受け入れてもらえない」ということを学んだ気がします。

アオイ:「表現と社会との関係」を大きく問われる時代なんだなと、私も実感している。そして、私にはその部分がまだまだ足りていない(笑)。

茅布:大学の先生とかも一見破茶滅茶にやっているようですけど、きっちりしゃべるときはしゃべりますし。逆に言えば、あんないい作品を描いている人でも、作品以外で自己主張しなきゃ、自分のキャラクターを世間に知ってもらうことができないんだ……と。

実際、私も「最年少」「TARO賞受賞者」「東京藝大生」という枕詞で、世間からほめていただけることがありますが、それは必ずしも私の作品を見てくれてのことではないので、実のところあまりうれしくはないのですが、「社会に注目してもらう」という面では役に立っている──近ごろは「ありがたい」と、思えるようになりました。

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アオイ:ほかにも藝大で学んだことってある?

茅布:『ブルーピリオド』(藝大生を主人公にした漫画)の影響か、藝大絡みの話題をすると、SNSでも「いいね」がたくさんつくのは事実です。でも、コロナのせいで大学にはほとんど行けていないですし、私の作品は大きいから大学では制作できないので、滞在時間は相当少ないほうです。

とは言え、大学でいろいろと面白い経験はさせてもらっています。受験当日には、「10kg近くの重い画材をもって8階まで階段を登る」という藝大名物の苦行(笑)も、きちんと体感しました。

アオイ:楽しそう!

大きい物は人の目を慣れさせる?

アオイ:茅布ちゃんの作品って、どれも大きいよね? その「大きさ」にもこだわりはあるの?

茅布:自分が「若い」「未熟」だというコンプレックスからなのか、つい作品が大きくなってしまうんです。プロの画家さんと比べると、やはり私の絵はまだ完成度が低いから、せめて大きさで勝負しよう……って(笑)。

「大きい物は人の目を慣れさせる」という考えもあります。ここに飾っている(製作中の)絵は地塗り処理がされていない布キャンバスに描いているのですが、その大きな絵が外に展示されたとき、風に吹かれてふわふわしているのも、それはそれで綺麗だな……とも。

単純に、大きいほうが気分もいいし、部屋一面に自分の絵がバーッと敷き詰められていたら、精神も安定するんです。ほかの物になるべく取り込まれないための防御壁的な役割も果たしているのかもしれません。

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アオイ:絵を描き続けてきて、「飽きてきたな…」みたいなことはある?

茅布:一つの絵だけを描き続けたときは、たまにそういうこともあります。目が疲れてきて……。そんなときは違う絵に取り組んでみたり、立体に移ってみたり、旅行したり。

でも、描くことをしばらくやめると、自分の中で「罪悪感」が湧いてくるんです。描き続けることは「辛い」と言えば辛いけど、やらないと死にそう……っていうか(笑)。

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アオイ:私も、踊りにかぎらず何をしていても罪悪感を感じる時期があった。たとえば、映画を観ていても、「これって何かの役に立ってるのかな?」と自問自答したりして……。

そんなことを突き詰めていったら、「なぜ地球は存在するのか?」ってことになっちゃうんだけど(笑)……なぜ? なぜ? なぜ? これは意味があるのか……? ちょっと前はそんなことばかり考えていた。

けど、「意味がないものはない」という結論に至って、今は「どうやって自分のモチベーションをキープするか」だけを考えることに専念している。

茅布:「モチベーションをキープする」ための具体的な方法を聞かせてください。ぜひ参考にしたいです!

アオイ:ん~~~……とりあえずはまだ自分が見たことがない新しい何か——国とか景色とか人とか思考とかに触れることかな? 本を読むでも何でもいいんだけど、最近はその日知った新しいことを片っ端からノートにメモるようにしている。

「雑学手帳」のようなことをはじめたの。ロスに「HOLLY WOOD」って大きな看板があるでしょ? あれって元々は「ハリウッドランド」って不動産屋さんの看板だった……なんて、くだらない雑学も(笑)。そういうのがけっこう面白くてさ。

“元ネタ”は別になんだっていいんだよね。ただ、「ここから何かを習得した」っていうような “オフ” の時間を意識的につくることで、感情の起伏も穏やかになってきた。

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私にとって、自分の作品は「子ども」みたいなもの

アオイ:茅布ちゃんにとって、「自分の絵」はどういう存在なんだろ?

茅布:自分の子ども……かな? 「どうやったら正しく大きく育ってくれるの!?」みたいな(笑)。絵と喧嘩しながら、ときには殴ったりもして……。上手く描けたときは、絵のことを実際にぽんぽんと撫でたりしています。展示したり売れたりしたときは、「やっと独り立ちしたね」と。

アオイ:可愛い存在なんだね(笑)。私が知っているカメラマンさんは「一度撮ったら、作品は自分の手を離れていくので、何の感情も湧いてこない」って言ってた。

茅布:大学に入ってからは、「描いたらすぐに展示」ってケースが多くなってきたので、展示した作品の脇で「あまり子どものことを解説しすぎる」のも過保護っぽくて良くない。一つの作品を立派に “自立” させて、自由な解釈で観てもらえるまでに育て上げるのが “親” としての義務なのでは……と思っています。

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アオイ:素晴らしい例えだなぁ! 私は、普段パフォーマンスをしているとき、「自分が今持っている感情を全部吐き出そう!」って思っちゃうの。掘り下げて掘り下げて……出し切ってしまうから、あとからその映像とかを見ても、そのときのことを思い出せない──何となく「他人を見ている」ような感覚なのね。

茅布:それは心地よい感覚なんですか?

アオイ:むずかしいな……最近は、ちょっと気持ち悪いかも(笑)。でも、結局は楽しいのかな?

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Text:山田ゴメス
Photo:山田英博
Edit:山田卓立

アオイヤマダ┃AOI YAMADA

2000年、長野県生まれ。15歳で上京し90年代のクラブやアートシーンを起源とする東京のファッション界に出会い、影響を受ける。メディアアート集団ダムタイプ「2020」等に出演。東京オリンピック2020閉会式にソロ出演後、ヴィム・ヴェンダース映画『Perfect Days』、ショートフィルム『KAGUYA BY GUCCI』『Somewhere in the snow』『FM999』やNetflixシリーズ『First Love初恋』に役者として出演。

web: アオイヤマダ
Instagram: @aoiyamada0624

大西茅布┃CHIFU ONISHI

2003年、大阪府生まれ。2014年に年齢を書かずに応募した独立展で、史上初の小学生での入賞を果たす。2021年には若手の登竜門とされる「岡本太郎現代芸術大賞」において、史上最年少(18歳/高校3年生)で大賞の「岡本太郎賞」(通称「TARO賞」)を受賞。同年、東京藝術大学油画学科に入学。確かな画力を礎に、人間の神話的かつ文学的な作品を創り上げる。

Instagram: @chifuzokei
Twitter: @lczf7n
開催予定の展覧会:
グループ展「CONCERTO(コンチェルト)」
場所:Lurf MUSEUM(東京都渋谷区猿楽町28-13 Roob1-2F)
期間:2023年7月8日(土)〜8月7日(月)/11:00-19:00
参加アーティスト:荒井理行、大西茅布、北島麻里子、黒瀧舞衣、杉山日向子、友沢こたお

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文筆家・イラストレーター
山田ゴメス

大阪府生まれ。年齢非公開。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するコラムニスト兼ライター&イラストレーター。『麗羅』(漫画原作・作画:三山のぼる/集英社)、『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版)、『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(菅原道仁共著/ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。特に身体を張った体験取材モノはメディアからも高い評価を得ている。2019年、HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)カウンセラー資格取得。2020年、温泉マイスター取得。2022年、合コンマスター取得(最年長)。
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