2021年10月22日に発売された、パナソニックの新型テレビ「レイアウトフリーテレビ」。テレビ本体を同梱のチューナーと無線接続することで、アンテナ端子の位置を気にせず設置できる、まさに“レイアウトフリー”なテレビだ。若者のテレビ離れ、という言葉を耳にして久しいが、そんな若者のひとりである筆者(20代後半)による素直な感想を交えて、本製品の特徴を紹介していこう。
新しいテレビのあり方を提案する「レイアウトフリーテレビ」
前述のとおり、「レイアウトフリーテレビ」はアンテナ端子の場所に縛れず、好きな場所に置けるのが最大の特徴となる。ディスプレイはキャスター付きの台座と一体になっており、移動もラクラク。普段はくつろぎスペースのソファの前に置いておき、食事のときはダイニングテーブルの側に移動、料理をするときは大画面でレシピを見るためにキッチンに持っていくなど、使い方は様々。
なにより嬉しいのが、テレビを見ないときは部屋の壁際に寄せておけば、部屋を広く使えること。筋トレやストレッチ、ヨガなど、リビングで身体を動かすときに役立つだろう。部屋の見た目がすっきりするし、掃除がしやすくなるのも地味にプラスポイント。
個人的な話になるが、我が家のリビングにはアンテナ端子がない。そのため自室から10mのアンテナケーブルを引っ張って、部屋をまたいで繋いでいる。とにかく不便だし、見た目も最悪だ。我が家の事情はレアなケースだと思うが、リビング内でアンテナ線が部屋を横断するなど、似たようなことが起きている家庭もあるのではないだろうか。そうでなくても、テレビの位置を前提にインテリアを配置している話はよく聞く。つまりアンテナ線から解放されるということは、インテリアの自由を得るということなのだ!
電源コードは、マグネット式コンセントが付属する。万が一、コードに足をひっかけてしまってもマグネットが外れるので、コードに引っ張られてテレビを倒してしまう心配がない。小さな子どもがいる家庭には安心な設計。なおテレビを使わないときは、電源コードを台座の収納部に巻きつけておけるので、すっきりとコンパクトに片付けられる。
機能に目を向けると、4K放送はもちろん、NetflixやAmazonプライムビデオ、YouTubeなどのネット動画にも対応。また2TBの内蔵HDDを搭載し、録画機能も付いてくる。別売りのレコーダーが必要ないということは、それだけ「レイアウトフリーテレビ」のミニマルな特徴が活きてくる。ほかにもスマホアプリ「どこでもディーガ」に対応し、ネットワーク連携が可能。外出先から録画予約ができたり、スマホでテレビを見たり、スマホをリモコン代わりに使うこともできる。
ひとりの20代のリアルな感想
ここまで基本情報と良い点を紹介してきたが、個人的なマイナスポイントも挙げていこう。パナソニックさんなら許してくれるはず……。
まず最大のマイナスポイントは価格だ。参考価格ではあるが、24万円というのはかなり高価だ。いや、値付けに理解はできる。実勢価格で、4K放送対応の43v型(10~12万円)+2TBレコーダー(5~7万円)+チューナー(1万円)+純正スタンド(2万円)と考えると、いたって妥当。しかし消費者として購入を検討したときに、選択肢から外れてしまうのだ。
どうして選択肢から外れるのか、その理由は価格に見合わないデザインだ。24万円という価格を単純に考えたときに、いわゆる“大きな買い物”に該当するだろう。しかし「レイアウトフリーテレビ」は、インテリアにフィットすることをコンセプトとしているため、良くも悪くもニュートラルなデザインなのだ。テレビとしては珍しく本体カラーにホワイトを採用しているし、背面は壁紙のようなエンボス加工が施されているなど工夫は感じられる。ただ、価格に見合ったデザインではない。例えば、マテリアルを変更するだけでも印象は変わってくるかもしれない。また、カラーのラインナップを揃えるなど、いまの時代の空気感に合ったアプローチはまだまだあるはずだ。
一歩踏み込んだ話をすると、インテリアにフィットする=部屋の雰囲気を邪魔をしないのではなく、インテリアとして部屋に置きたくなるレベルのデザインであれば間違いなく購入する人は増えるだろう。テレビのカテゴリーではないためフェアな比較ではないが、調理家電ならバルミューダ、空気清浄機ならカドー、スピーカーならバング&オルフセンなど、デザインで消費者に選ばれるブランドはある。せっかく従来の“テレビ”から脱却を試みた製品なのだから、“テレビならパナソニック”と認知されることを勝手ながら期待したい。
また、先ほど価格が高いといったが、それはあくまで現状の「レイアウトフリーテレビ」に対するコストパフォーマンスの話だ。もしデザインを大幅に変更し、インテリアとして置きたくなるレベルにお洒落で格好良いor可愛いテレビだったら、価格が上がっても構わない。いまの若者は、自分が心から気に入り、ブランドのファンになり、応援したくなるような製品だったら信念を持って購入してくれるはずだ。
もうひとつ個人的な目線で意見させていただくと、録画機能は不要だ。おそらく本製品は、20代~30代のファミリー層がメインターゲットになってくるだろう。若者はテレビを見ないと言われているが、筆者の周りだとテレビを持っていないのはごく少数派。ただし、利用方法が変わっているのだ。
なんとなくテレビを観ることはあるし、好きな番組もあるけれど、毎週観るわけではない。ましてや録画してまで観ることはない。好きなタイミングで、好きなタイトルを選べるNetflixやAmazonプライムビデオなどの動画ストリーミングサービスのほうが、いまのライフスタイルにマッチしているからだ。
次回作に大きな期待!
初めてレイアウトフリーテレビを知ったとき(そして価格を知る前までは)、2台目のテレビにちょうどいいと思った。パソコンと接続すれば、ひとつの可動式ディスプレイとしても使えるし、子どもがいる家庭ならさらに用途が増えてくるだろう。ただし、映画などのリッチコンテンツを楽しむことを考えるとメインのテレビとしては少し心もとないのだ。テレビ台が不要でどこでも動かせるということは、外付けスピーカーやサウンドバーといった音響機器との相性が悪いからである。
長々と不満を挙げてきたが、結論としては以下の通りだ。
・高級ラインと低価格ラインの2バージョンを展開してほしい。
・高級ラインでは、インテリアとして置きたくなるデザインに力を入れてほしい。
・どちらも録画機能は不要。
しかし「レイアウトフリーテレビ」が、ここ数年の紋切り型のテレビ業界に一石を投じたのは間違いない。こういうテレビが欲しかった! という声もあるはずだ。お財布に余裕があるなら購入を検討するのもいいだろう。
もし第2弾が製作されるなら、ひとりの若者の声としてこの記事を一瞬でも思い出してくれたら幸いだ。
レイアウトフリーテレビ(4K液晶テレビ)
液晶ディスプレイ:43V型
外形寸法(スタンドあり):98.0×118.2×49.2 cm
録画機能:内蔵ハードディスク 2TB
チューナー数:BS4K・110度CS4K=2、地上デジタル=3、BS・110度CSデジタル=3
参考価格:24万円