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“風の時代”のマスターピース

○(マル)と□(シカク)が織り成す、ベル&ロス無限の可能性

author: 竹石 祐三date: 2021/07/14

長い時の流れのなかで、今は200年に一度の変革期なのだという。お金の価値や仕事のあり方が変わり、そして何より、“所有する時代から所有しない時代へ”とシフトしつつある。そんな、持たない時代に“あえて”所有したくなる腕時計とは何か?

 いきなり私事になるが、初めて購入した機械式時計はベル&ロスだ。経緯はさておき、当時は航空計器に着想を得たミリタリーライクなルックスに惚れ込んだのがその最たる理由。職業柄、ラフな服装で外出することの多い筆者にとっては使いやすいデザインであると感じたし、なかでも購入した「BR 03-94」は、レイアウトが煩雑になりがちなクロノグラフでありながら判読性も良好。しかも当時の「BR 03-94」は、ケースにブラックスティールを用いた重厚感あふれる佇まいで、満足度は実に高いものだった。

 だが、その後も継続してコレクションを観察することで、ベル&ロスのさらなる魅力を知ることになる。ブランドのアイコニックなデザインに惹きつけられるのは珍しい話ではないが、ベル&ロスにも同様のエレメントがあると気づかされたのだ。

 2005年にその後の旗艦モデルとなる「BR 01」を発表して以降、ベル&ロスはスクエアケースとラウンドのダイアルを組み合わせたデザインを核にしてきた。それは「インストゥルメンツ」と「エクスペリメンタル」の両シリーズで取り入れられ、誕生から15年以上が経過した今もなお基本路線を変えていない。ただし興味深いのは、シンプルで印象に残りやすい──言い換えれば1本所有していれば満足と考えられそうなデザインでありながら、素材や色使いを変えることで多彩な表情を生み出し続けている点だ。

2005年に誕生した「BR 01」は、コックピット計器にインスパイアされたデザインを特徴とし、その後のベル&ロスにおけるアイコンとなった。

このデザインをさらに昇華させたのが、2019年秋に誕生した「BR 05」。ラウンド×スクエアのアイコニックな意匠を踏襲しつつも、ケース四隅のアールを強調し、ダイアルとケースのサイズバランスも変更。さらにケースと一体感のあるブレスレットを組み合わせたことで、航空計器にインスパイアされたそれまでのルックスから一転、モダンで都会的な雰囲気が漂うタイムピースとなった。しかもケースサイズは40mm。「BR 01」の46mmや「BR 03」の42mmよりもコンパクトになったことで手首への収まりは良くなり、装着時のバランスも向上している。

ベル&ロス BR 05 ブラックスティール 60万5000円

SSケースとサンレイ仕上げのブラックダイアルを組み合わせ、引き締まった印象を与える「BR 05」のデビュー作。ケース表面をサテン、エッジをポリッシュにそれぞれ仕上げ、立体的な表情に。自動巻き、Cal.BR-CAL.321。SSケース、直径40mm、100m防水。

 発表からわずか1年半ながら「BR 05」のラインナップは急速に拡充。ダイアルカラーはもちろんのこと、クロノグラフの搭載やスケルトンダイアル、ゴールド素材の採用など、同コレクションでもすでに多彩なバリエーションを展開しているが、最新の「BR 05 スケルトン ナイトラム」は、スモークグレーのスケルトンダイアルと、グリーンのスーパールミノバを塗布した時分針&インデックスを備え、近未来感のある新鮮なルックスを創出している。

ベル&ロス BR 05 スケルトン ナイトラム 83万6000円

「BR 05」のデザインコードを踏襲しながらも、スモークグレーのスケルトンダイアルにスーパールミノバC5の鮮やかなグリーンを配し、グラフィカルなデザインを強調した2021年の新作。自動巻き、Cal.BR-CAL.322。SSケース、直径40mm、100m防水。

インデックスと時分針には、ビビッドなグリーンが目を惹くスーパールミノバC5を塗布。暗所での視認性を向上させているとともに、フューチャリスティックな雰囲気も感じさせる。

 こうしたベル&ロス・デザインの鍵を握るのが、共同創業者のひとりで、ブランド創設以来クリエイティブ・ディレクターを務めるブルーノ・ベラミッシュ氏の存在で、かつてインタビューした際、彼は「コミュニケーションはもちろん、時計のダイアルにおけるデザインやブランドの見え方まで、ひとつのメッセージを一貫して同じレベルで発信できることがブランドの強さだと思っているよ」と語っていた。

 それは一見シンプルな記号の組み合わせだが、一度魅了されると“沼”にハマる可能性さえ秘めている。「所有したくなる」というよりむしろ、「所有する、ないしは収集する快感」を味わわせてくれるブランドと言えるかもしれない。

(問)ベル&ロス 銀座ブティック

TEL. 03-6264-3989

https://www.bellross.com/ja/

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編集者/ライター
竹石 祐三

編集プロダクション、出版社勤務を経て2017年に独立。(ほぼ)時計メインの編集/ライターとして、専門誌やライフスタイル誌などで執筆している。
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