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Interview

歌人・伊藤紺と行く

おにぎりを存分に楽しむための「鎌倉アルプス」ハイキング

author: 白鳥菜都date: 2025/11/06

日本で一番身近な「包」料理といえば? 自宅で手作りするのはもちろん、コンビニでも気軽に買えるおにぎりは、多くの人にとって馴染みのある「包」なのでは。今回はそんなおにぎりを存分に楽しむために、ハイキングへ。

気持ちの良いこの季節、一緒に歩いてくれたのは歌人の伊藤紺さん。おしゃべりを楽しみながら歩いた秋のある日の様子をお届け。

伊藤 紺

歌人。1993年生まれ。歌集に『気がする朝』(ナナロク社)、『肌に流れる透明な気持ち』、『満ちる腕』(ともに短歌研究社)がある。
Instagram:@itokonda
X:@itokonda

都心から電車で約1時間半。朝7時台に家を出て向かったのは、鎌倉駅。雨降りの多い今年の秋だが、この日は見事に晴れた。

観光地として人気の鎌倉には、この日も朝からたくさんの人が訪れている。駅を出てすぐからずらっと並ぶお菓子屋さんやお土産屋さんを横目に、通称「鎌倉アルプス」(別名:天園ハイキングコース)を目指して出発。

「鎌倉アルプス」は、鎌倉駅や北鎌倉駅をスタート地点として、3時間程度でぐるっと一周できるハイキングコースだ。頂上の大平山でも標高159mとこじんまりした山ながら、岩場や草木も楽しむことができるらしい。

「Instagramで登山に行っている人を見て興味はあったものの、私の体力で着いていけるのか自信がなく……」と語る伊藤さんにもぴったりのはず……!

この日が初めましての伊藤さんとフォトグラファー・新家さんは、なぜかリュックも靴もお揃いだった

鎌倉駅の近くでおにぎりをテイクアウト

本格的に山に入る前に、まずは旅のお供を調達。せっかくなので、鎌倉駅近くのおにぎり屋さん2店をハシゴしておにぎり食べ比べをしてみることに。

伊藤さんいわく、「おにぎりは自分で作ることがあんまりなく、人に与えられるものだと思っているところがある。自分にとっては特別感のある食べ物」とのこと。そんな「特別感のある食べ物」のなかでも、おにぎり専門店が作るおにぎりなら?

🍙 おにぎり ぱん田

最初に訪れた「おにぎり ぱん田」は、鎌倉駅から徒歩3分。賑やかな商店街を一本横道に入ったところにある。

2025年7月にオープンしたばかりのこのお店は、山形県産のお米「つや姫」と、横浜の市場で仕入れる兵庫県産の海苔でおにぎりを作る。お店に入ってすぐから海苔の良い香りがする。具材は約40種ほどで、その時々で入れ替わり、組み合わせて握ってもらうことも可能だ。

「通常サイズだと1つでお茶碗一杯分くらい。小サイズにもできますよ」という店主さんの言葉を聞き、小サイズで複数種類のおにぎりを試してみることに。この日、伊藤さんは「卵黄醤油漬け」「しゃけマヨ柚子胡椒」「焼きさば」の3種をチョイス。「卵黄醤油漬け」「しゃけマヨ柚子胡椒」は小サイズだと特に人気な具材らしい。

「なんでぱん田という店名にしたんですか?」(伊藤)

「おにぎりといえば、白と黒だから……。あとは、おにぎり屋さんは3文字が多いんですよ。『田』の字を使ったのは、お米農家さんとの繋がりを大事にしたくて、あえて漢字にしました」(おにぎり ぱん田 店主)

そんな会話をしている間に、おにぎりが完成した。持っただけでわかる、具沢山。ずっしりとした重みがうれしい。

おにぎり ぱん田

住所:〒248-0006 神奈川県鎌倉市小町一丁目6番5号 今井ビル101
営業日時:9:00〜20:00
定休日:年中無休
Instagram:@onigiri_hit_panda
公式サイト:https://onigiri-panda.com/about

🍙 おにぎり こんが

空いた片手を埋めるべく、もう1店のおにぎり屋さんへ。鎌倉駅から徒歩6分ほどの場所にあるのが、「おにぎり こんが」だ。

都内でも人気の名店「大塚ぼんご」が監修したおにぎり屋さんとして人気のお店。新潟県産のコシヒカリを使用した、大きくて迫力あるおにぎりを提供してくれる。

パッと見ただけでも、普段はなかなか食べない変わり種の具材が目に入る。おすすめとして教えてもらった「卵黄の醤油漬け×肉そぼろ」「明太マヨネーズ×しそ昆布」、そして伊藤さんが気になるという「じゃこ七味」を注文!

「ふわふわ系」だという「おにぎり こんが」のおにぎり。確かにおにぎり作りの様子を眺めていると、握るのは一瞬だけ。

できあがったおにぎりを受け取ると、こちらもずっしり。なお、今回は気づかず通常サイズにしてしまったのだが、「おにぎり こんが」でも小サイズでのオーダーも可能とのこと!

おにぎり こんが 鎌倉店

住所:〒248-0006 神奈川県鎌倉市小町2-12-27
営業日時:7:00〜18:00
定休日:第2水曜日、第4水曜日
Instagram:@onigiri_konga_kamakura

2店とも、おにぎりは注文してから握ってくれる。出来立てを食べたいという人もぜひ。

街中から階段を抜け、山の中へ突入!

無事、おにぎりを調達したら、いよいよ「鎌倉アルプス」へ。鎌倉の代表的な神社「鶴岡八幡宮」を突っ切って進んでいく。たくさん子どもたちが授業で見学に来ていて、なんだか懐かしい気持ちになりつつ、歩みを進める。

「鶴岡八幡宮」を抜けると、お次は「建長寺」に突入。このコースで「鎌倉アルプス」へ向かうには「建長寺」内を通る必要があるので、拝観料を払って、中を見学しつつ歩いて行く。

狛犬と対面する伊藤さん

少し歩くと看板が見えてくる。ここからの道は、「天園ハイキングコース」の看板を頼りに進む。

「天園ハイキングコース」の看板を見ながら進む

しばらく歩いていると、くねくねと長い階段に行きあたる。調べてみると約240段の階段だった模様。「山に入る前から辛い」「階段が終わらない」とこの時点で汗だくになりながら進んでいくと、突然現れる天狗たち。

建長寺の鎮守社「半僧坊」を守るように、全部で12体いる。明治時代の半ばに当時の建長寺の住職が見たお告げの夢に現れた大権現(神様)が天狗の姿だったことから、ここにも天狗たちが祀られているらしい。

建長寺「半僧坊」近くの天狗たち

天狗たちの近くで一息着いたら、一気に山らしい道へ。「思ったより山っぽい!」と周りを見ながら進む一行。

「ボーダーの木がある!」(伊藤さん)

普段の生活の中ではなかなか目にしない植物や、気持ちの良い空気に癒されながらのハイキングを楽しむ。山の中は、気が茂っているので歩き回っても涼しい。

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さらに少し歩くと、段差の大きな岩場や草木の茂った登山道らしいエリアに突入する。

「初めてのロープだ!!」(フォトグラファー・新家さん)

「ロープがなくても降りられそうだけど、あると助かる……! 優しい山だ〜」(伊藤さん)

親切な山かと思えば、Y字の分かれ道には覚えているだけでも3回ぶつかった。こういう場所にこそ看板を置いてほしいものだが、そこまで甘くはない。

「一旦行ってみて、間違っていたら戻りましょう!」(伊藤さん)

という温かい言葉に甘えて、勘で進む。(幸いなことに、迷子になることはなく順調に進んだ)

分かれ道の前で迷う

そうこうしてスタートから約1時間半、急に開けた場所に着いたと思ったら、頂上「大平山」に到着! 標高159mながらも、眺めは良い。鎌倉の街や相模湾を見渡すことができる。ここが鎌倉市内の最高地点でもあるらしい。

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小さい看板が頂上をお知らせ

頂上でいざ、おにぎりを実食

ちょうどよく開けた原っぱで、1時間ほど休憩することに。テイクアウトしてきたおにぎりをいざ実食。まずは、「おにぎり ぱん田」のおにぎりから。

「全体的にぎゅっと詰まっている感じでおいしい。『しゃけマヨ柚子胡椒』、今までにないしゃけの風味で、具の量もたっぷりです」(伊藤さん)

「海苔の風味が強いからか、なんだか家で作ってもらった出来立てのおにぎりを思い出します」(フォトグラファー・新家さん)

確かに、小サイズでも具材がたっぷり。最後まで飽きずに食べることができるおにぎりで、それぞれの素材の味もしっかり感じられる。

続いて、「おにぎり こんが」のおにぎりは?

「ふわふわ系とおっしゃっていたように、あんまりぎゅっと仕上げていないからか、米の粒がぱつっと感じられて、全体に一体感があり、とても好きなおにぎり!」(伊藤さん)

ボリュームがあるのにまとまっている、それでいて口の中では柔らかさも感じる不思議なおにぎりだ。

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それぞれこだわりの素材や作り方をしているとはいえ、おにぎりの味にそんなに違いが出るのか? と思いながらしてみた食べ比べ。実際にやってみると全く別物のおにぎりだった。ちなみに、伊藤さんはこんが派、新家さんはぱん田派とのこと。

中には、おにぎりだけだと何か物足りないかもしれないと思う人もいるかもしれない。しかし、動き回るハイキングだからこそ、おにぎりは賢い選択かも? とも伊藤さん。

「もともとあんまりたくさん食べれないことと、油っぽいものが苦手だったり味の好みが結構あるので、ガッツリお弁当とかだとそれだけで疲れちゃったりします。具沢山のおにぎりは、味も華やかだし食べ応えがあるけど、食事で疲れることがなく、選択肢として賢いかも」(伊藤さん)

帰り道も発見がたくさんのハイキング

腹ごしらえをしたら、さあ下山。再び看板にしたがって、木が茂る道に入って行く。お腹が満たされたからか、心なしかみんな元気になった。

午前と午後で光の様子が変わるのも楽しい

今回は、行きと帰りで別の道を歩くコース。帰りのコースの方が日当たりが悪いのか、若干湿った場所が多い。滑らないように、転ばないように気をつけながら歩いていると、伊藤さんがハッとした表情で振り返る。

大きなキノコを発見。作り物のような、いかにも「食べちゃダメです」という見た目のキノコに一同は興奮。それぞれ写真に納める。

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この後も何個かキノコを見つけた

他にも、大きな木に掘られた何者かの巣穴や、大きくて毒々しい色をした蜘蛛を見つけてはテンションを上げながら順調に山を下っていく。歩き慣れてきたからか、帰りの方が歩みが早い。

あっという間に「瑞泉寺」の看板まで到達。最後もお寺の近くでゴールという鎌倉らしいハイキングコースだ。

頂上から1時間ほどで、ついにハイキングコースのゴールに到達! 山から脱出したと思えば、突然鎌倉の閑静な住宅街のなかに出る。

車で近くまで来た人は、ここから駐車場を目指すが、わたしたちはここからさらに鎌倉駅まで20分ほどかけて徒歩で戻る。山を抜けたことで緊張感が解け、少し眠くなりながらも歩く。

無事に下山!

せっかくなので、鎌倉駅までの道中、伊藤さんに今日の感想を聞いてみた。

「鎌倉にこんなちょうどいい山があったことを知らなかったです。スーパー低山と聞いてちょっとなめていたのですが、結構山で、初心者の自分にはとても満足感がありました。

印象的だったのは、木漏れ日のきれいさ、今日は少し気温も高かったので、空気の涼しさ、おいしさ、呼吸の気持ちよさ。背の高い木や草がアーチのように生い茂っている道が結構あり、それもなんだかよかったです。複雑な木の根っこをたくさん見られたのも、うれしかったです。

テーブルみたいな大きなキノコや、Y字路の出現など、その場では結構大きいけど、人生には別に問題ないハプニングに翻弄されるのも、すごく楽しかったです」(伊藤さん)

大満足の鎌倉ハイキングとなった模様。このあと、おにぎりでお腹がいっぱいと言いながら、取材班3人はジェラートを食べて帰った。

Photo:新家菜々子
Text&Edit:白鳥菜都

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白鳥菜都

ライター・編集者。好きな食べ物はみかん、柿、桃、洋梨、辛いもの、お茶。
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