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どうせ買うならこれがいい vol.7

街でも畑でも着られるワークウェアを。農の魅力を伝えるプロジェクト『KEIMEN』

author: 日比楽那date: 2025/01/25

たくさんのものが溢れる現代、「おしゃれ」「便利」はもはや当たり前。インテリア、ファッションアイテム、雑貨……どれもせっかく買うならエシカルなものが良いと考えている人も多いのでは。

そんなあなたに向けて、本連載では「どうせ買うならこれがいい!」と思えるようなプロダクトやサービスを紹介する。

今回ピックアップするのは、ワークウェアブランドの展開を中心として、畑と農にまつわるさまざまな取り組みを行う、『KEIMEN(カイメン)』。その代表で、自身も現役モデルでありながら、モデル事務所「VELBED.(ベルベッド.)」の代表も務める、岡田章吾さんにお話を伺った。

​農業をもっと楽しく、もっと豊かにすることを目指して2021年5月に誕生。パンツやハットなどワークウェアの販売のほか、ZINEや動画、Podcast番組の制作などを通し、農業の魅力を幅広く伝える。

ECサイト:https://keimen.official.ec/
公式サイト: https://www.keimenproducts.com/
Instagram: @keimen_products

仲間のモデルと借りた小さな畑がスタート地点

岡田さんは、『KEIMEN』を立ち上げる前から長らくモデルとして活動してきた。さらに2018年、自身がモデルとして活動するだけでなく、モデル事務所「VELBED.」を立ち上げた。

「モデルは、基本的に若いときの方が仕事が多いんです。自分もモデルとして活動しながら20代後半でその後のキャリアを不安に感じた経験がありました。だから、そんな思いをするモデルを減らしたいと思い、所属モデルのセカンドキャリアも一緒に考えられる事務所を作ることにしました」

そんな岡田さんが農業に興味を持ったのは、あるモデルと始めた畑がきっかけだった。

岡田さんと親しい関係にあったそのモデルは、香川の老舗八百屋を実家に持つ。数年後には地元で家業を継ぐと語るモデルと共に、岡田さんは横浜で畑を始めたのだ。

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畑を始めた2019年当時の様子

「東京にいる間に何かセカンドキャリアにつながることをやったほうがいいんじゃないか、と提案して、横浜で一緒に畑を借りたんです。その後、そのモデルが東京を離れ、自分は1人で畑に通うようになりました」

「発芽」するように、農業は気付きの連続

8m×5mほどの小さな畑から栽培を始めたという岡田さんは、当時を振り返りこう話す。

「最初は野菜が全然上手く育たなかったんです。でも、有機農業の学校に1年間通ったことで、畑のおもしろさにハマっていきました。もともとは、農業に対してなんとくなくきついし、汚れるし、というイメージもあったのですが、ハマってからは、めちゃくちゃ楽しい一生できる趣味を見つけたと思いました」

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そんな気付きから始められたプロジェクトの名前『KEIMEN』は、ドイツ語で「発芽」という意味だそう。畑や野菜に関わる知識はもちろん、農具などの道具を自分でつくろうとするマインドなど、農業に関わる人々から学ぶことは多い。

「農業をやっていると初めて知ることがたくさんあって、自分のなかで芽が出るイメージがあったんです。おじいちゃんおばあちゃんがこれまでずっとやってきたことが僕ら世代の畑に初めて触れる人間には新鮮なことばかりで。

自分が知っていることやできることの少なさを実感するのも含めておもしろかったです。さらに、農業のことを掘れば掘るほど、日本の歴史や文化、自分は何者なのか、というところまで考えていけるのも、おもしろさだと思っています」

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畑で採れた野菜

そうして農のおもしろさにハマっていきながら、畑に入る際の服装には思うところがあったという。

「当時は、部屋着の役目も終えたくらいのボロボロのジャージを着て作業していたのですが、そのままでは都内に帰れないな、ということはずっと思っていました。あとは、膝をついて長時間作業すると痛む実感もあった。

畑を続けるなかで理想のギアが思い浮かんでいたところ、たまたま知り合いの洋服をつくっている会社の人が声をかけてくれて、ブランドを始めることになりました」

最初につくったのは、膝部分を強化したパンツと、リブが長いロンT、首まで守れるハット、そして軍手だったという。

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最初に作ったアイテムたち

「サンプルをつくっては実際に畑で着て、ブラッシュアップを重ねました。たとえばパンツだったら、膝部分が2枚地だとまだ少し痛かったので3枚地にしたり、ストレートだと長靴に擦れて上がってきてしまうので、足首で絞れるようにボタンをつけたり」

現在は、トップスだけでも、シャツからベスト、MA-1、フーディ、スウェット、ポンチョまで、と充実のラインナップの『KEIMEN』。さらに、ボトムス、ハット・キャップ、オーバーオール・つなぎ、アクセサリー、バッグと、どのアイテムもスタイリッシュでありながら遊びが感じられ、考え抜かれたワークウェアとしての機能性と普段使いもしたいと思えるファッションとしてのデザイン性が両立している。

「やっぱり、畑でもテンション上がる洋服を着たいじゃないですか。なので、街で着る想定でデザインした服に、畑にそのまま行ける機能をプラスしたアイテムが多いです。

首や頬の日焼けを防げる形状のハットは、畑で作業するときのみならず、フェスなどにお出かけする際にも活躍しているという声もいただきます」

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KEIMEN「Hat」(9350円)

「あとは、シーズンごとに選んだテーマ野菜の名前をプリントしたカレッジスウェットも人気です。また、どのアイテムも生地や縫製がしっかり頑丈なので、長く使って育てていってほしいと思っています」

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KEIMEN「BROCCOLI sweat」(1万6500円)

さらにユニークなのは、モチーフになっている野菜や農にまつわるあれこれについて、商品ページに説明書きがあること。

「ひとつのアイテムが野菜や農のおもしろさを知るきっかけになったらいいな、と思っています」と、岡田さんは話す。

「BROCCOLI sweat」の商品ページに掲載された説明書き

土に触れて体を動かしてこそ伝わる農の魅力

『KEIMEN』は、ワークウェアやギアの展開のみならず、農家さんの声を届けたり、畑のおもしろさを伝えたりする、発信も含めたプロジェクトだ。例えば、情報発信の一部として、ZINE『グリーンサム バイ カイメン』や、Podcast番組『農と脳を刺激する 別冊KEIMEN緑の親指』を制作している。

「『グリーンサム バイ カイメン』では毎回、いろいろな分野の方にお話を聞いているのですが、 ISSUE 3 "BODY ADVENTURE"で養老孟司さんに取材した際に、『何事もやらなきゃわからない』とおっしゃってたのがすごく印象的で。あれだけの知識人もそう言うんだ、という気づきがありました」

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最新号の冊子『GREEN THUMB BY KEIMEN ISSUE 5 「雷」』(1000円)

岡田さん自身、農業を始めてから数年経った今でも、農業の良さをどのように人に伝えるのがいいのかには迷っているという。しかし、一緒に農作業をすることで農業の魅力を分かち合えた経験は多いとも語る。

「都会にいると、まず土に触れられる機会が少ないですよね。僕の息子も東京育ちですが、畑に通ううちに土に飛び込むことに慣れていった。だから、ただちょっと距離があるだけで、土に触れることに慣れたら、そのよさを感じられるんじゃないかと思います。

事務所に所属しているモデルたちもよく畑を手伝いに来てくれて、車で移動するときも、畑で一緒に作業するときも、いつも以上にすごくいい話ができる感覚があります。土に触れて体を動かすことで、考えを整理できるのかな、と感じています」

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さらに岡田さんは、都会だけで暮らしたり、農業だけに専念したりするだけではなく、東京と畑を行き来しているからこそ得られる良さもあると教えてくれた。

「普段都会で生きていると、人と人、人とモノの距離が近くて、それが日常だからみんなあまり意識していないけれど、少なからずストレスを感じているんじゃないかと思います。

僕の場合は、東京と行ったり来たりしながら畑をやることで、都会にいるときは畑を俯瞰で見ることができて、畑にいるときは都会のことを俯瞰で見ることができると思っています。もちろん東京での暮らしも畑作業もしっかり根を張ってやっているんですが、どちらかに偏りすぎると苦しい気がするんです」

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“職業”で判断されない場所でできること

モデル活動やモデル事務所の代表、そして『KEIMEN』のプロジェクトと幅広く活動している岡田さんだが、実は、特別支援学校でのボランティアや、東日本大震災の被災地復興支援の活動にも取り組んできた。

岡田さんが目先の利益や自身のことだけではなく、周囲の人や社会までもを見渡して行動する背景にはこんな思いがある。

「東京にいると職業で判断される雰囲気がありますが、被災地では人のためになることをどれだけできるか、と考えさせられました。自衛隊の方や消防団の方、大工さんたちが仕事をしているなかで、モデルの自分にできることは少なかった。それでも震災の翌月から定期的に現地に通って、少しでも地元の人たちのためになるんだったら自分も生きてていいんだ、存在していていいんだ、と思えたんです」

そう話す岡田さんの言葉からは、現地に足を運び、手を動かしてきた人にしかない説得力が感じられる。

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冊子『グリーンサムバイカイメン』や、Podcast『農と脳を刺激する 別冊KEIMEN緑の親指』によって農を多角的に掘り下げながら、実際に畑に行ってみようと思い立った人や、日常的に畑作業をする人のニーズに応えるアイテムも揃えている『KEIMEN』というプロジェクトにも、そんな岡田さんの人柄が表れていると言えるだろう。

KEIMENでは、2025年3月には新たに「お酒」をテーマにしたコレクションも発表される予定だ。今後の展開にも注目したい。

Text:日比 楽那
Photo:KEIMEN提供
Edit:白鳥 菜都

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ライター・編集者・写真家
日比楽那

2000年生まれ。ライター・編集者・写真家。14歳から役者として活動開始。その後、10代後半から執筆活動を始める。現在は、主にウェブメディアでインタビューやレポートといった記事の企画や制作を担当。ゴールデン街でも働いています。
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