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小屋で飲み食いしながら釣りって!?

岡山に残る伝統漁法「四つ手網」で釣りの概念が変わった!

author: 西川 マレスケdate: 2021/06/27

釣りは好きだし、魚を食べるのも好きですが、重い道具を担いで岩場を歩くの嫌いだし、寒いのはもっと嫌いです。暖かい場所で酒飲んでるだけで魚がいっぱい捕れたらいいのに! という寝言を叶えてくれるステキな桃源郷があるのをご存知でしょうか。その名を「四つ手網」と言います。

2018年4月、岡山の児島湾に残る伝統漁法の四つ手網を体験してきました。岡山駅から車で約30分。岡山市東区の九蟠(くばん)から升田にかけて、児島湾の防潮堤沿いに、十数棟ほどの小屋が海側に張り出して並んでいます。さらによく見ると、小屋の先には一辺が5~6mもある巨大な網が吊り下がっているのが見て取れます。

この小屋に一晩泊まり込んで漁を行うのです。メンバーは私を含め3人の暇人と1組の夫婦、そして3歳の子供。そう! 四つ手網は3歳の子連れでも心配無用、安心安全な漁法なのです。だって小屋の中にずっといるから。

児島湾の湾口沿いに並ぶ四つ手小屋。夕焼けに映えてなかなか風情がある。

ズボラ漁、ここに極まり!

四つ手網漁は極めてシンプルです。17時頃から小屋に入れますので、まずバーベキューや鍋の食材と酒をたっぷり買い込み、宴会の準備をしてください。小屋にもよりますが、キッチンや冷蔵庫、カセットコンロ、ホットプレート、レンジ、調理器具など、必要なものは一通り揃っています。トイレやテレビもありますし、カラオケが設置されている小屋もありました。

次に、四つ手網を下げて海に浸けてください。網は電動で上下するので、「下」ボタンを押すだけ。網の四隅が浸かるくらいでいったんボタンを止め、網が水平に落ち着いたら、支柱が海と水平になるまで下ろします。

しばらくは小屋の中で飲み食いしてまったり過ごします。1時間ほど経ったら、おもむろに網を引き上げてみましょう。「上」ボタンを押すとどこまでも上がっちゃうので、小屋に当たらないよう上げすぎない。網を見て、何かがピチピチと跳ねていたら、柄の長いタモで網の中央部をポンポンと叩きながら集めてすくい、小屋に取り込んで酒の肴にします。これを飽きるまで一晩中繰り返す。以上。

四つ手網を引き上げた状態。
コントローラーで網を海に沈めてしばらく放置。

まるで釣りをしているようには見えない小屋

お世話になった四つ手小屋 三木さんの中はこんな感じ。冷蔵庫やレンジなど一通りのものは揃っており、2021年5月現在はエアコンも設置済みとのこと。ただ布団がないので、肌寒い時期は寝袋などが必要。外に仮設トイレがある。

餌も釣り竿も要らない。電動リールで引き上げるだけ

飲み食いしつつ、たまに網を引き上げるだけで勝手に酒の肴が増える。なんという天国……! 四つ手網漁は、釣りの待ち時間という苦行部分を取っ払った、画期的なシステムなのです。全国の河口に設置して欲しい。

1棟あたりの料金は9,000円~12,000円ほどで、収容人数が8名~12名ですから、遊びとしてもかなりリーズナブル。捕れる魚介類は、ベイカ、エビ、ママカリ、セイゴ、ボラ、チヌ、ヒラメ、カニなど。4~5月ごろは主にベイカ、6月は雨で濁るので少し釣果が悪く、アミエビは9月の終わりから10月にかけて。7月~10月は色々捕れるけど虫が増える。よく利用する人は虫が少ない春秋に来るとのこと。

ちなみに餌も必要ありません。支柱の真ん中にライトが取り付けてあり、この光に魚が集まってくるのです。よって、日が沈んでからが本番ですね。

しかし操作説明を聞いてソワソワしてしまった我々に、日が沈むまで待つという選択肢は無いのです。さっそく入れ替わり立ち替わり、15分おきに網を上下してみますが……獲物が掛かる気配は一向にありません。

やはり待ち時間が足りないかと、次は1時間待って網を引き上げてみると、ようやく何か生き物の気配が! 慌ててタモですくい取ると、ちっちゃいミミイカにちっちゃいエビが捕れました。いや、まあ初釣果なので嬉しいんですが、酒の肴には全然足りんなこれ……。

なんか捕れた! と大騒ぎの一行。
その釣果。小さなミミイカとエビ。

魚だ! 待望の魚がかかったぞー!

その後も待ち時間を増やしたり減らしたり色々試してみるのですが、見事なくらいなーんも捕れない。こんなはずでは……。スーパーで「捕れた魚も食べなきゃいけないのに買い過ぎじゃない?」とか心配していた自分が恥ずかしい。食材を買い込んでおいてよかった。最寄りのスーパーまでそこそこの距離があるので、食材は釣果ゼロを想定して用意したほうが賢いと思います。

夜も更けていい加減酔いが回ったメンバーは次々と脱落。私もいつの間にやら寝落ちしていたのですが、ふと目を覚ますと1時過ぎ。しばらく上げた気配のない網を引き上げてみると……なんかいる! さ、魚だ! うおおー今日のハイライトはここだー! とばかりにタモを用意していると、他のメンバーも目を覚まして集まってきます。

そして、ついに小屋に引き込まれた銀色に輝く魚体。良かった、本当に良かった。このまま朝まで魚の姿を見ることはないかと諦めかけていました。まあ、捕れたのは20cmほどのセイゴですけど。すごくどこでも釣れそう、とか言ってはいけない。酒飲んで寝てる間に捕れたという事実が大事なのです。

魚だーー! 今日初めて魚の姿を見た。
さっそく内臓取ってホットプレートへ。酒の肴が一品増えた。

四つ手網にコツも要らないが、運は大事!

その後も浅い眠りを繰り返しつつ、何度か網を上下してみましたが、朝までに捕れたのはミミイカが1匹によく分からない稚魚が3匹、白魚2匹のみ。結果的に、わざわざ岡山の海小屋で集まって焼き肉飲み会しただけ、みたいなショボさでした。うーん、残念。

四つ手網の体験自体はすごく楽しかったのですが、釣果にはまったくもって納得がいかないので、いつかリベンジしようと考えてはや3年。最近の状況はどうなのかと三木さんにお尋ねしたところ、やはりコロナの影響で5月いっぱいは休みでしたが、6月から営業再開とのこと。他の小屋は通年営業しているところもあるそうです。

さらに最近の釣果を聞けば、40cmのチヌに48cmのヒラメ、タコなども捕れたと言うではないですか。夢があるなあ。まあ、たまにはこんな大物も捕れるよということで、期待しすぎないのが大事だと思います。

実は日本各地に四つ手網的なもの、あります

なお、佐賀県の道の駅鹿島では、同じように四つ手網を使った「棚じぶ」漁を体験できます。こちらは宿泊施設ではなく、道の駅の営業時間内なら1基1,000円で好きなだけ楽しめる。ただし潮汐の関係で遊べる時間が限られます。年間の潮汐スケジュールは出ているので、体験してみたい人は日程を伝えて調べてもらってください。

また、鳥取の東郷池にも四つ手網の小屋が残っているのですが、こちらはあくまで観光用の施設で、宿泊も体験もできません。泊まってゆっくり楽しむなら、岡山の四つ手網一択という感じです。


九蟠漁協 四つ手小屋

四つ手小屋 三木

TEL :086-948-5158
収容人数 :10名
1棟料金 :1万円
休業期間 :1~3月
設備 :カセットコンロ、水道、冷蔵庫、テレビ、トイレ、冷暖房など

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西川 マレスケ

パソコン自作雑誌の編集を経て、フリーライターとして独立。standards社のiPhone・Android解説ムック「便利すぎる! テクニック」「完全マニュアル」シリーズなどの執筆を担当する。趣味はジビエや釣りや昆虫食など、自分の手で獲って自分で調理して食べる珍食探求。たまに仕事につながったりしている。
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