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特集

SNS時代の友人関係って複雑? シンプル?

真雪×伊藤紺に聞く“本当の友だち”のつくり方

author: Beyond magazine 編集部date: 2024/04/11

SNSが普及するにつれ、簡単に人と繋がりが持てるようになった反面、友だちになるにもフォロワー数やポスト内容が吟味される時代に。「人脈を広げるため」「仕事に繋げるため」……、損得勘定が渦巻く大SNS時代で“本当の友だち”を見つけるためにはどうしたらいいのか。
 

お話を伺うのは、俳優・モデルの真雪さんと、歌人の伊藤紺さん。異なる世代、異なるフィールドで活躍する二人だが、共にゆるぎない自分を持ち、聡明で鋭い。若いながらも酸いも甘いも知る二人が見つけた、SNSとの心地よい付き合い方や、本当の友だちの見つけ方とは。

真雪

2000年、宮城県生まれ。透明感のあるビジュアルと自然体なSNS発信が同世代を中心に支持される俳優/モデル。Aimer「残響散歌」MV出演のほか、広告、雑誌、YouTube活動、現役古着屋店員と、マルチに活動するZ世代のニュースター。

Instagram:@fujitamayuki__
X:@fujitamayuki__
WEB: https://asobisystem.com/talent/mayuki/

伊藤紺

1993年、東京生まれ。歌人。2019年『肌に流れる透明な気持ち』、2020年『満ちる腕』を私家版で刊行。2022年両作の新装版を短歌研究社より同時刊行。最新刊は『気がする朝』(ナナロク社)。

Instagram:@itokonda
X: @itokonda

SNS時代でも、やっぱり会ってみないとわからない

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――「大人になってから友だちができない」という人も多いですが、伊藤さんと真雪さんは、大人になってからの友だちってどうやって作っていますか?

伊藤さん:大人になってからの友だちはほぼ全員、歌人としての活動を通してできた友だちかも。仕事現場で出会った人とか、友だちの友だちと繋がることが多いですかね。

真雪さん:私はモデルの仕事よりも、今アルバイトしている古着屋「aNiKi」での出会いの方が多いかもしれないです。今は「aNiKi」が人脈を作る場所になっていますね。お客さんに話の流れで「俳優やっています」って話したら、たまたま同じ監督さんにお世話になったことがある方だったり、共通の友だちが何十人もいてInstagramを交換したら、「あ、この子ね!」ってなったりすることも多くて。

伊藤さん:憧れます。そういう機会があったらいいんですけど。

真雪さん:なかにはSNSで繋がっているだけの子とかもいるんですけど、その子が「aNiKi」に来て声をかけてくれて、それで仲良くなるとかもありますね。

伊藤さん:「場がある」って強いですよね。私もたとえSNSで知ったとしても、仲良くなれるのは友だちに紹介してもらったりお仕事でご一緒したりしてからですね。

真雪さん:実際に会ってみて「今度遊びに行こう!」って、ようやくなります。そうなりません?

伊藤さん:会ってみないとわからないですもんね。いやらしい人もいますし。

真雪さん:ちょっといますね(笑)。

伊藤さん:あとこれからできるかもしれないけど、自分の作品を一切読んだことがない友だちってちょっと怖いかも。

真雪さん:その人を知らずに友だちになるのって怖いですよね。

伊藤さん:うん。なんか爆弾みたいなものを隠し持っている感じがする(笑)。

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――なるほど。「いやらしい人もいる」とのことですが「この人、肩書きやSNSの数字を見て近づいてきたな」と感じることはありますか?

真雪さん:ありますね。例えば、やたら仕事の話ばかり細かく聞いてくるとか、一概には言えないけど、そんなに仲良くないのにすごいお茶に誘ってくるとか……。その時点で私の心のシャッターが下りちゃいます。「Instagramの私しか見てないな」って思う人とは、傷つく前にこっちから離れますね。

伊藤さん:目が早いんですね。そういう相手に興味もてないですよね。

真雪さん:そうかもしれないです。何でも対応する人もいると思いますけど、それをやっていたら精神も持たないだろうし、もっとほかのことに時間を使おうって思っちゃう。

伊藤さん:わかります。ちょっとちがう話ですけど、私は業界の人と無理にしゃべらなくてもいいなと思ったタイミングがありました。イベントに来てくださってお会いしたり、飲み会で紹介していただいたりしてありがたいけど、同じ業界だからって必ず友だちになれるわけじゃないからあんまり楽しくないなって思うことが増えて、だんだんそういうのがどうでも良くなっていったという。

真雪さん:そこに行き着いたんですね。

伊藤さん:うん。人脈ももちろん大事だし、昔たくさん作っておいて良かったなと思うけど、今はあんまり興味がなくなってきているかな。それに、自分が本当にやりたいなと思う仕事を運んでくれる人は、いつも人脈より作品から入ってくれるから。

“本当の友だち”を見つけるには、さらけ出すしかない

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――SNSがあることで直接会わなくても常に誰かと繋がることができますが、それが理由で友人関係が変化したと感じることはありますか?

真雪さん:SNS経由で友だちが増えやすいから、時間を潰すときに「友だちと遊ぶこと」が簡単な選択になってきている気がします。ひとりで過ごす時間の使い方が下手な方が増えてきているというか。そういう友人関係に惑わされないように、自分の時間をちゃんと確保するようにしています。

伊藤さん:それは意識してやっているんですか?

真雪:意識しています。休日、本当は予定がないけど「ごめん、この日忙しいんだ」って、友だちの誘いを断って自分が計画したことをこなす1日にしたり。

伊藤さん:すごい。私は大学生のとき短歌をはじめると同時に、InstagramとXのアカウントを初めて作ったんですけど、それからはより自分に合う友だちができるようになっていきました。

真雪さん:それはSNS経由で知り合った人たちですか?

伊藤さん:うーん、ちょっと曖昧で、SNSがあったからできた人間関係なのか、短歌というメディアを通してできた人間関係なのかは自分ではあまりわかってないんですよね。でも、SNSを始めてからの交友関係がとても心地よくて。私は大人になってから出会った友だちが大好きですね。

――では、そんなお二人が“本当の友だち”を作るために大切にしていることはありますか?

伊藤さん:さらけ出すこと。隠していたら本当の友だちにはならないのかなって思うので。より多くの自分をさらけ出せるときに、思いもよらない強い結びつきの友だちができるんじゃないですかね。

真雪さん:私は時間を長く一緒に過ごした人との友情は大切にしています。幼稚園のときからの幼馴染も、高校時代にできた親友もそうなんですが、嫌な時期も良い時期も共に過ごした友だちは、ずっと変わらず友だちですね。手放さないように、地元に帰ったら必ず連絡するようにしています。

伊藤さん:特に高校のときって悲しいとか楽しいとか、恥ずかしい姿もめっちゃ見せ合っていますもんね。

真雪さん:伊藤さんのおっしゃってた“さらけ出す”というのも、「時間が長い=さらけ出すしかない」ところもあるじゃないですか。気まずい関係になったこともあるけど、今仲良くいられるのは“本物”なんだなって。

伊藤さん:そういう時期を経てまた会ってみると、あのとき思っていたことと違うこともあったりしますよね。そんなふうに、お互いに何度も答え合わせができるっていうのも面白いなって。当時の話をしても面白いし、当時見ていた“あの感じ”が、その子の中に今でもそのまま生きている。長い期間で見る人間って、すごく面白いなって思います。

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――では、「この人とは深く仲良くなれそう」というような、ポイントは何かありますか?

伊藤さん:私は、“魂の近さ”みたいなものが大事だと思います。

真雪さん:魂の近さ?

伊藤さん:なんていうか、根底の部分が同じだなっていう感覚がある人。「世界平和とかあんまり興味ない」みたいな人とは、仲良くはなれないかな。

真雪さん:面白い!  私は初めはテンション感があったら友だちになっちゃうかな。そこから、さっき言ったような直感で距離を測っていきます。

“好き”を突き詰めれば数字なんてどうでもよくなる

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――友人関係にもいいね数やフォロワー数といったSNSの“数字”が絡むようになり、メンタルヘルスへの影響が叫ばれる場面もあります。お二人はSNSの数字に悩むことはありますか?

真雪さん:今の仕事を始めてからスマホを見る回数がかなり増えて、人のSNSを見るたび落ち込んで、緊張性偏頭痛も出やすくなってしまって。「このままだと私がダメになる」って思うくらい、ほぼ依存状態になってしまった時期もありました。

伊藤さん:依存は良くないよね。

真雪さん:そうですね。でも3年前くらいに、「SNSを見て人と比較している時間がもったいない」って思い始めて、そこからスマホと距離を置くようにしました。

伊藤さん:それだけ常に触っていたものを、すぐに手放すことってできたんですか?

真雪さん:ちょっと時間かかりましたね。でも高校生ぶりにギターをまた始めたりして、他に没頭するものや趣味を作ったら、自然とスマホと距離が置けました。今でも、いいねやフォロワー数が気になってしまうときもあるんですけどね。

伊藤さん:でも数字を持っていても面白くない人もいるし、「なぜこれにこんなに“いいね”がつくんだろう」と、思うことも多いですよ。逆に、自分の短歌の中で伸びなくてもいいと思っていた歌がいきなり伸びたときは「これ、もしかしたら良くない歌なんじゃないかな?」って思っちゃうくらい(笑)。

真雪さん:あはは(笑)。

伊藤さん:でもそこに“答え”はないから、そのままスクロールしちゃう。数字って意味ないんだなって思っています。

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――ではその“数字”に左右されない心を持つためにできることってなんでしょうか?

伊藤さん:自分の“好き”を究極までギュッと煮詰めることがいいんじゃないかと思います。自分の“好き”ができたら数字なんてどうでも良くなると思います。好きなものが一番良いに決まっているから。自分の感性、感覚を大事にすることが一番なんじゃないかなと。

真雪さん:それでいうと、好きを突き詰めるのと自分を知るために、最近本を読み始めました。

伊藤さん:いいですね!

真雪さん:物語よりも芸人さんのエッセイとかを読むことが多いんですけど、言葉が生々しいんですよね。「ここわかる」っていう折り目が増えていくたび、自分が好きなものや自分のものの見方とか、自分の人間性が学べるんです。本が言語化してくれているから。しかも本って、情報量が少ないじゃないですか?

伊藤さん:え、「本は情報量が少ない」って、初めて触れる考え方かも。

真雪さん:テレビやスマホと比べると、本って少ない情報から自分で想像するものだから、自分がやりたいことも本から見えてくることが結構あります。

伊藤:そうか。当たり前に本に触れてきたから、その感覚に今びっくりしました。動画って流動的に入ってくるものだけど、読むって主体的な行為で、自分で考えて進めていかなきゃいけないから、頭に入ってきやすいんでしょうね。

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“直感”を信じることがブレない自分を形成する

――では、お二人にとってSNSとの心地よい付き合い方とは?

真雪さん:実は最近見つけまして。今までSNSは日にちや時間をあらかじめ決めて投稿していたんですが、最近は一つの投稿に自分の“好き”をギュッと詰めて、自分が投稿したいと思える瞬間を待って投稿するようにしています。

伊藤さん:おお! でもインスタって「何曜日のこの時間帯がよく見られる」とかよくあるじゃないですか。

真雪さん:あれ全然役に立たなくて。私のフォロワーさんは学生の方が多いので、インサイトを確認すると、平日も見てくれているし、逆に夜は少なくて。

伊藤さん:「真雪バイオリズム」があるんですね。

真雪さん:はい(笑)。だから、夜中でも朝でも、何曜日でも何時でも、自分の直感で投稿しています。

伊藤さん:それ好きな話です。素敵な心がけだし、それで数字が変わらないっていうのがまた良い話。

真雪さん:あと自分の直感でやっているから、「数字が伸びなくてもまぁいいや」って思いやすくて。だからいいねとかも見なくなりました。

伊藤さん:いいですね。私はSNS模索期に皆さんの質問に答えるとかいろいろ頑張っていたんですけど、元々あまり人と関わることが得意じゃないのでやめました。SNSは基本的に告知専用ツールとして使って、DMで質問とかがきても一切返さないっていう風にしてからは、だいぶいい感じです。

真雪さん:自分の中で決めたんですね。

伊藤さん:「返したくないな」って思うものと「返したい」と思うものを決めている自分もおこがましいなと思っちゃって。いっそのこと「全員返さない」って決めてからの方がすごく楽になった。

真雪さん:私もその時期を経て、自分の直感でやるようになったのでわかります。

伊藤さん:みんな1回通る道なんでしょうね。

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――お二人は「いいね数」などの周りの評価よりも自分の評価で生きられている感じがします。それが良い友人関係にも繋がっている気がするのですが、ブレない自分でいるために、気をつけていることはありますか?

真雪さん:居心地の良い場所に月に1回は行くようにしています。実家に行ったり、友だちと海や山に遊びに行ったり。時間がないときは、近くに住んでいる姉の家に行ったり。心のケアをすることで、元の軸に戻れますね。

伊藤さん:私は特別何かしているわけではないんですが、嫌な気持ちになることが増えてくると当然嫌な方に傾いていくので、それ以上嫌な気持ちが増えないように、会ったり話したりする人を選ぶようにしています。あと、観ておいた方が良い・勉強しておいた方が良いっていうことってたくさんあると思うんですけど、自分が“いま楽しい”と思えるものを大事にすることの方が、長期的に見たら必要なのかなって思っています。

真雪さん:そうですね。大事ですよね。

伊藤さん:大学生のとき自分の気持ちを外に出すことができなかったので、「絶対に嘘をつかず、自分の心にまっすぐに書くこと」を条件に、日記を書くようになったんです。正直に書いていたから人に見せられないような内容もたくさんあるけど、4年間毎日のように書いていたおかげで、短歌を始めたときにはすでに「自分の本心」と向き合うことができていました。だから短歌もスムーズに始められたし、それで今生活もできていて。

真雪さん:そうだったんですね! それでいうと私も日記とTumblrやっています。日記は中学生の頃から地道に続けていて、Tumblrは自分が心に溜めたものが爆発しそうなときの吐き場所にしています。両方嘘はつかないって決めていますね。

伊藤さん:素敵ですね。私もあのとき“自分の心を見失っちゃいけない”っていう直感を信じて日記をつけていたから、今があるんだと思うので。だから直感で思うことはやっておいた方がいいんだろうなって思っています。

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Text:宮谷行美
Photo:原口良太
Video:Shinji Arai
Edit:那須凪瑳

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