職業の数だけ“つい目がいく”光景あり。
「クリエイティブさんぽ」は、クリエイターや職人、研究者など、さまざまな専門分野を持つ人が好きなエリアを心赴くままに歩き、独自の視点で気になった場所を紹介してもらう連載企画。読んだ後にちょっとだけ視野が広がるかもしれないし、未知の仕事への理解が深まるかもしれない。そんなレポートをお楽しみあれ。
今回さんぽしてくれたのは、グラフィックデザイナーの脇田あすかさんです。
脇田あすか
グラフィックデザイナー・アートディレクター。1993年生まれ。東京藝術大学デザイン科卒業後大学院を修了、その後コズフィッシュを経て独立。あらゆる文化に対してデザインで携わりながら、豊かな生活をおくることにつとめる。プライベートワークとしてアートブックやスカーフなどの作品を制作・発表もしている。
Instagram:@wakidaasuka
X:@astonish___
文字、色、形に心ときめく。中目黒~恵比寿エリアをクリエイティブさんぽ
アートディレクター・グラフィックデザイナーの脇田あすかです。普段はずっとパソコンの画面に向かって座りっぱなしなので、散歩はなにより手軽な気分転換。
今回は中目黒から代官山、恵比寿にかけて良い天気の中を歩きました。以前、このあたりに5年くらい住んでいて、大通りを一本入った小道に心ときめく景色にばったり出会えたことも多かったです。急いで歩いているときには気づくことの出来ない、街の片隅の魅力的な看板や壁の色、そのときにしか出会えない陽の光を見るとうれしくなります。
まず見つけたのは、目黒川沿いの柵に張られていた布。こういう、別に絵がなくてもいいけど絵があることでちょっと心がほころぶ、みたいなものが大好き。ここに花と虹の絵があったらうれしいじゃん、と思った誰かがいたということがうれしい。
街中でふと出会う鏡は、急に目の前の世界と違うものがあらわれる感じがして好き。ゆがんだ自分があらわれたりするから、ハッとします。
代官山のある喫茶店の看板。イタリアと四葉マークの位置の入り方が気になる。後付けか、はじめから入れる想定だったのか……。
こういう窓の外を向いているぬいぐるみ、誰かのちょっとしたユニークな心がうかがえてにやっとしてしまう。人の気配がするのが好きなのかも。
恵比寿駅近くで見つけたビル。緑色の建物ってピンク色が差し色になりがち。かわいい。古い建物に多い気がする。
ナイスタイポグラフィ。「1F」「2F」の書体と「101」「102」の書体が全然違うけど、どちらも可愛い。
工事中の様子は普段の景色とちょっと違う。展示みたいで、まじまじと見てしまう。
左右の入り口、階段の感じがかっこいい。同じ建物なのに雰囲気が全く違うところにすごく物語を感じる。
団子のような看板。まじまじ見ていると数字の書体もかわいいし字組が両箸揃えになってるのも洒落てるなぁ。
ナイスタイポグラフィ。そして絵になるタイミングで入ってきたナイスな人。
「痕跡」に思い巡らす、穏やかでクリエイティブなひととき
このエリアは何回も歩いている道のはずなのに、あらためて眺めているとこんな景色があったんだ、と新たに気づくこともしばしば。偶然生み出されたような痕跡を見て、その過程を想像するのが楽しいです。何より、平日の昼間、天気のよい中を目的なく(いや、あるのですが)ふらふらと歩いていることの気持ちよさといったら! ありがとうございました。
Text:脇田あすか
Edit:山梨幸輝