2023年の私のベストバイは、Kiko Kostadinov(キコ コスタディノフ)のリボンブーツである。同ブランドのコレクションは毎回チェックしていたし、とても好きなブランドで洋服もいくつか持っているが、シューズを買うのは今回が初めて。普段からシューズはとても好きなので色々チェックしているが、このブーツは特に目に留まる2023年ナンバーワンのシューズだった。バイイングのお仕事もしているため、お勉強のためにも買い物は普段からたくさんしている。洋服が派手めになりがちなので、シューズのカラー選びはおとなしめが多かった自分にとって、なかなか難しいカラーのブーツを選んだことは今までの自分なかで革新的で新鮮だった。
渋川舞子
新宿歌舞伎町にある人気セレクトショップ「THE FOUR-EYED」のディレクター、スタイリスト。「THE FOUR-EYED」の店舗のお仕事とスタイリストとしてのお仕事をしている。普段は動物園や珍スポットのような少し風変わりな場所に行くのが趣味。
Instagram:@maikoshib
WEB(THE FOUR-EYED):https://www.thefoureyed.shop/
「THE FOUR-EYED」ディレクター・渋川舞子のBEST BUY 2023
「Blue & Off-White Ribbon Boots – Frozen Blue」$725
私がKiko Kostadinov(以下、Kiko)を好きになったきっかけは、ユニフォームやワークウェアのような洋服に、どこかしら不思議なシルエットのデザインが加えられているそのコントラストに興味が湧いたからだ。ウィメンズコレクションが登場する前から、着こなすのが難しそうなこのデザインや色味を、それでもなんとか着こなしてみたいという好奇心をくれたし、まさにそこがブランドの魅力だと感じる。
Kikoのウィメンズコレクションは彼の交際相手のローラ・ファニング(Laura Fanning)がデザインしていて、基本的なブランドのテイストを残しながら、程よくフェミニンなデザイン要素が付け加えられているのが特徴だ。そんなKikoからリリースされたこのブーツは、デザイン自体はスポーティな要素もあるのだが、ホワイトをベースにベイビーブルーのリボンのディティールが大胆かつ細やかで、フェミニンさを感じる。スポーティ×フェミニンなデザインは新しいトレンドを生んでいて、このアイテムはそれを象徴するアイテムだ。一度見たら忘れない「プリキュア」のような見た目と配色は唯一無二の存在感を醸し出している。
コレクションをみてすぐに一目惚れして、「欲しい!」と思ったが、なかなか手に入らずに再入荷まで粘り強く待って、ついに「SSENSE」で入手した。カラーバリエーションもあったのだが、あえてこの一番難しいホワイト×ブルーを選んだのは、やはり保守的になってしまったりマンネリ化してしまいがちになる自分の日々のスタイリングに刺激を与えたかったし、より難しい色のシューズを履くことで、わざとコーディネートに悩んだりしたかったし、むしろそれを楽しみたいと思ったからだ。
私にとっては、自分のコーディネートだけは「楽なゾーン」から少しはみ出して頑張ったり悩んだりすることが苦ではなくて、むしろ趣味のようなもの。だって、失敗しても成功しても誰に何を言われるわけでもないし、とにかくこのブーツを見た瞬間に頭に焼き付いてしまったのだから、背伸びしてでもチャレンジしないわけにはいかないと思った。仕事柄、毎日膨大な数の新しい洋服やシューズを見てどこか感覚が麻痺している私にとって、そんな気持ちにさせてくれるファッションアイテムとの出会いは稀有なことだし、心踊らせてくれたことに感謝である。
気に入っている点は、細身のロングブーツだが、ジップがなくそのまま履けてしまうところ。また、ヒール部分のデザインのディティールが気に入っている。一見2色づかいのデザインかと思いきや、足先はマットなベイビーブルーで、ベルト、リボン、バックル部分はメタリックブルーに配色されている所も、デザインへの愛情を感じる。
このブーツを買ったおかげで、今まで自分のなかでは控えめにしていた“足元へのチャレンジ精神”が大きくなって、シューズ選びの幅が広がったことも新しいこと。今年はたくさんの素晴らしいフットウェアが登場した豊作の年。そんなタイミングに、自分のファッションスタイルへの挑戦心を高めるきっかけをくれたこのブーツは、やっぱり買ってよかったベストバイである。
Text:渋川舞子
Edit:那須凪瑳