日本では馴染みがない中国発の「realme(リアルミー)」。じつは世界シェア7位の、今、最も勢いがあるメーカーだ。手頃な価格でスペックも上々。それでいてブランディングも成功している。日本市場を席巻するする日もそう遠くない!?
海外メーカーのスマートフォンが日本でも当たり前のように販売されている。ファーウェイ、シャオミ、OPPOと中国メーカーの製品も増えているが、この3社はもはやグローバルに製品を展開しており、「中国の」メーカーという立ち位置にはない。カウンターポイントが調査した世界のスマートフォンの出荷台数を見ても、1位サムスン、2位アップルの次にこの3社が名を連ねている。ちなみに日本で人気のソニーやシャープはグローバルで見れば10位以内にも入っていないのだ
この上位5社の下を見ると、6位にVivo、7位にrealme、8位にレノボ、9位にようや中国以外のメーカーとしてLGが食い込んでいる。LGは事業不振により2021年7月末でスマートフォンビジネスを終了することになったが、世界シェア9位でも経営は火の車だったのである。
このグローバルランキング7位に位置するrealme(リアルミー)が日本市場に参入した。全く聞いたことのないメーカーにもかかわらず7位に位置しているのは、realmeが2018年創業と若いメーカーであること、インドや東南アジアなど人口の多い新興国向けのスマートフォンで一気に販売数を伸ばしたからだ。カウンターポイントの調査を細かく見てみると、realmeは2019年から65%と高い成長を記録している。次々と低価格スマートフォンを出して出荷台数を伸ばしているシャオミですら前年比17%増なので、realmeがいかに勢いのあるメーカーであるかわかるだろう。
realmeが売れている理由はズバリ、「手軽に買えるおしゃれなスマホ」だろうか。洋服であればファストファッションに近い感覚だろう。日本では誰もが「iPhoneが一番いい」と考えているが、新興国の若者たちにとってiPhoneの価格は高すぎる。また苦労して中古のiPhoneを買うくらいなら、今では最新のrealmeのスマホを買ったほうがイケてるのだ。
realmeのスマートフォンは、安いものからハイスペックなものまで多数の製品を展開している。例えばインド市場では「realme X」「realme C」「realme 8」「realme 7」「realme 6」「realme 5」と6つのシリーズがあり、それぞれ3から10機種程度を展開。つまりrealmeだけで20機種以上も常時販売されているのだ。価格も「C20」は6799ルピー、約1万円と格安品もあれば、26999ルピー、約4万円の「X7 Max 5G」はハイエンドチップセットを採用しカメラは6400万画素、50Wの超高速充電や120Hzの高速駆動ディスプレイを搭載。5Gにも対応。realmeは高性能なスマートフォンも出しているのだ。
しかしスマートフォンの数が多いだけで販売数が伸びるのならば、どのメーカーも苦労しない。ましてやrealmeは後発メーカーだ。realmeが短期間で人気になった理由には、スマートフォン以外にも魅力的な製品を多数出しているからだ。たとえばrealmeのモバイルバッテリーを見てみよう。なおモバイルバッテリーは日本でも発売になった。
イエローとブラックのボディーに大きく書かれたrealmeのロゴ。そしてモデルがバッテリーを手に持つ姿は、モバイルバッテリーというよりもファッションアイテムのような売り方だ。モバイルバッテリーはそれこそ百社以上が製品を販売しており、多くのメーカーは充電容量や価格を競い合っている。そんな競争の激しい市場にrealmeはデザインで勝負を挑み、若者たちの心をつかんだのだ。確かに適当なモバイルバッテリーを買うくらいなら、シンプルデザインでスマートフォンメーカーでもあるrealmeの製品を買ったほうが安心かつ楽しいだろう。
realmeはもともとOPPOのインド向けのブランドとして登場し、低価格かつ若い世代をターゲットにしたブランドだった。ところがインドに上陸するとあっという間に人気になったことから、OPPOから分社化されrealmeとして独立展開しているのだ。ブランドスタート当初から「Z世代」と呼ばれる若者向けの製品を数多く出していたrealmeは、コストパフォーマンスを高めつつも「安っぽくない」デザインで人気を集めていった。インドや新興国では激安なバッテリーやケーブルなどは街中の屋台でいくらでも売られている。realmeはそれらとは全く違う「ブランド品」ながらも、そう変わらぬ価格の製品を展開することで人気を不動のものにしていった。
ちなみにイエローカラーはrelameのコーポレートカラーだ。同社のスマートウォッチやワイヤレスヘッドフォン(TWS、True Wireless Stereo)もイエローカラーをまとったものが多い。さらにはスマートTVも出すなど、生活関連のIoT製品はあらゆるものを販売中だ。
他にもバッグやスーツケースなども販売している。これらファッションアイテムやIoT製品はrealme以外のスマートフォンユーザーでも使うことができる。シャオミのスマートフォンユーザーがrealmeのバッグを買い、それを使っているうちに次のスマートフォンはrealmeしよう、と思うようになるかもしれない。バッグやTシャツはアパレルメーカーのようにイメージを大きくアピールした売り方をしており、realmeファン獲得に一役買っているのだ。
日本は平均所得が高いために、realmeのコスパ色の強いスマートフォンはすぐには受け入れられいだろう。そのためrealmeの日本展開はIoT製品からとなり、スマートフォンの投入はまだ先になるようだ。まずはイエローカラーのモバイルバッテリーやヘッドフォンなど、他社にはない大胆なカラーリングのIoT製品を出し、日本で認知度を高めることが何よりも重要だ。
そして「気が付けばrealmeのモバイルバッテリーを使っていた」そんな日本人が増えたころに、realmeはスマートフォンを投入するのだろう。今はまだ無名だが、1年後か2年後、日本でもrealmeを誰もが知っている時代がやってくるかもしれないのだ。