自宅にテレビがあってもテレビ番組を見ずに、NetflixやYouTubeばかりを視聴している人も多いだろう。また一人暮らしならそもそもテレビも持っていない、なんて人もいるかもしれない。大学生ならタブレットやノートPCを持っているだろうから、15インチくらいの画面サイズでもネット動画配信サービスをそれなりに楽しむことができる。テレビメーカーもこの動きには敏感になっており、従来の「据え置き型テレビ」という概念を打ち破る製品を次々と送り出している。ベルリンで開催された「IFA2023」の会場にはそんな最新スタイルのテレビが多数展示されていたので紹介しよう。
アタッシュケースごと持ち運べるモバイルテレビ、LG「StandbyMe Go」
LGの「StandbyMe Go」は持ち運べるテレビだ。これまでも家の中で移動させることのできる取っ手付きのテレビはあったが、「StandbyMe Go」は移動の概念を大きく変えるテレビだ。
家の中だけではなく、屋外や車の中などあらゆるところに持ち運べるのである。本体はちょっと大きめのアタッシュケースのように見えるが、この金属製のボディは中にあるテレビをしっかり守ってくれるためのものだ。重量は約12kgあるので女性が片手で楽に持ち運べる大きさではないものの、車での移動ならどこにでも自由に持っていける。
見た目はアタッシュケースにしか見えない「StandbyMe Go」
アタッシュケースを開くと、そこには27型のテレビが内蔵されている。なお、「StandbyMe Go」を含め、今回紹介するテレビはすべてインターネット機能搭載のスマートテレビだ。
「StandbyMe Go」は、NetflixやYouTubeを見るときも、スマートテレビ内蔵またはダウンロードしたそれぞれのアプリを使って視聴することができる。また、アマゾンのFire テレビ Stickなどをわざわざ買って接続する必要はなく、スマートフォンも接続できるので小さい画面を「StandbyMe GO」の大きな画面に投影も可能だ。そして、アタッシュケースの蓋の裏側の部分は、高音質な音楽再生が可能な全面スピーカーとなっている。
27型テレビが内蔵されている
テレビモニター部分は、スタンドとヒンジにより自由な角度に引き出せる。電源は外部コンセントがあるほか、映画1本分を見られるだけのバッテリーも搭載しているため、屋外でも仲間たちと映画を見ながらキャンプ場でも……といった楽しみ方もできる。また、スマートテレビのアプリとしてオセロなど対戦ゲームも内蔵されているので、画面を水平にしたままタッチパネルを指先で操作して2人で対戦もできるのだ。
テレビの角度は自由自在に調整できる
トイレットペーパーサイズ? 円柱形のプロジェクター「The Freestyle」
すべてのテレビにディスプレイを搭載していると思ったら間違いだ。サムスンの「The Freestyle」は超小型のプロジェクターだ。白い壁があれば100インチのサイズで動画を投影することができる。本体は360度回転するうえに、スタンドや電球のプラグに装着するアタッチメントも販売されているため、好きな場所から好きな角度で投影が可能だ。斜めの位置から投影してもしっかりとゆがまない長方形の画面だって投影することもできる。
こんな形でもスマートテレビになるThe Freestyle
この製品もスマートテレビ機能を搭載しているので、ネットの動画配信サービスもそのまま利用可能。また、「The Freestyle」にはGame Hub機能も内蔵しており、オンラインゲームがそのまま利用できるので別途Bluetooth接続のゲームコントローラーを買うだけでゲームも楽しめる。
「The Freestyle」ならキャンピングカーの室内がミニシアターに
窓枠型や絵画フレームのような「ハイセンス」のデザインテレビ
一人暮らしの自宅の窓を開けると、すぐ目の前には隣の家の壁しか見えない、そんなアパートに住んでいる人も多いだろう。「ハイセンス」は、窓のない部屋でも開放感を与えてくれる窓枠型のテレビを開発した。
写真や動画を表示できるが、あえて窓枠を残しており、本物の窓のように見える。自分の好きな都市の写真を表示すれば、あたかも旅先のホテルにいるような感覚を味わえるわけだ。また、あえてこの縦画面でTikTokなど縦動画を再生するのも面白いかもしれない。部屋の内装を変えずとも窓から見える風景を変えるだけで自室ステイが楽しくなるだろう。
窓枠型テレビにお気に入りの都市の写真を飾ろう
この壁掛け式のテレビはフレームが木製で、テレビとして使わないときは絵画などを表示できる。自室をまるで美術館のようにすることができるのだ。もちろんこれもスマートテレビで、アートギャラリーアプリが入っているので有名絵画を複数購入して時間や曜日によって表示を変える、ということもできる。
これまでのテレビは「いかにきれいに映像を表示できるか」という技術を争ってきたが、「ハイセンス」のアートテレビはテレビをインテリアとして使うという、新しい概念の製品なのだ。
絵画フレームのような「ハイセンス」のアートテレビ
「ベステル」は天板がディスプレイになったテーブル型テレビ
トルコの家電メーカー「ベステル(Vestel)」はヨーロッパではよく知られたメーカーで、さまざまなテレビを販売している。コンセプトモデルとして展示されていた製品のひとつがテーブル型テレビだ。
LG の「StandbyMe Go」の蓋を開けたときの状態と同じように、テレビを水平方向に使うことができ、食事しながら動画を小さいウィンドウで見たり、勉強しながら参考書を表示させたり……いろいろな使い方ができそうだ。あるいはカフェに導入してお客さんにおすすめメニューを見せる、というのもいいだろう。「テーブルの天板をテレビにする」アイディアは、今まで出てこなかったのが不思議なぐらいだ。
チェスゲームもできる「ベステル」のテーブル型テレビはコンセプト製品
同じく「ベステル」のテレビの下にパネルが設置された不思議な形の製品は、コロナの影響でリモートワークやリモートスクールが当たり前になった時代向けの自宅用テレビだ。
テレビ部分はタッチパネル対応でパソコンやスマートフォンを接続して画面を表示し、Bluetoothキーボードやマウスを繋いで使うこともできる。テレビの上にある細長いスピーカー部分にはロール式のカーテンが入っており、それを引き下げるとテレビ画面を隠すこともできる。
つまり、自宅でOFFの時間を作りたいときは画面をカーテンで隠すごとで、テレビという存在を消し、ディスプレイ下のパネル部分にマグネットを使ってメモを貼ったり、テレビにはない新しい用途のインテリアとして機能する。
リモートワーク用テレビのコンセプトモデル
透明テレビの時代はやってくる?
「ベステル」が参考出展していたテレビはほかにもいくつかの種類があった。なかでも注目だったのは55型の透明テレビだ。使わないときはガラスと同じ透明になるので、海外では地下鉄の窓に透明テレビを搭載してトンネル内で乗り換え案内や、CMを流す用途として使われている。またオフィスの受付に設置するなど、ビジネス向けには様々な用途が考えられる。
「ベステル」の透明テレビ
では、透明テレビを自宅で使うメリットはあるのだろうか? 「ハイセンス」のアートテレビのように、透明テレビには花火やライトなど「光るコンテンツ」を表示すればインテリアとして使うことができる。自宅で友人たちと食事やパーティーをするときも、間接照明などを買わずともテレビそのものが映えるライティングを演出してくれるのだ。
透明画面ならではのコンテンツを活用したい
透明テレビはほかにも数社が展示をしていた。スマートフォンでの動画視聴が当たり前になった今、今後テレビメーカーは透明テレビを「デジタルインテリア」として売り出していくかもしれない。
チャンホンの透明TVはインテリア用途をデモ