サムスンディスプレイが、7.2インチのディスプレイを3分割し「Z」字型に折りたたむことのできるディスプレイを発表。これからはディスプレイの進化が主役となる!
価格が高く製品種類が少ないことから、ディスプレイを曲げることのできる折りたたみ式スマートフォンはまだまだ一部のマニア層だけが購入する製品になっている。しかしユーザー数が少ない状況の中でも、折りたたみスマートフォンはさらに進化を遂げようとしている。2021年5月17日から21日までオンラインで開催されたDisplay Week 2021(主催:SID)で、サムスンのディスプレイ開発製造子会社、サムスンディスプレイは3つに折りたためるディスプレイを搭載したスマートフォンのコンセプトをビデオで発表した。
サムスンディスプレイが発表した「S-Foldable」は、7.2インチのディスプレイを3分割し「Z」字型に折りたたむことのできるディスプレイだ。これまで発売された折りたたみディスプレイは「ヘ」の字に畳む2つ折り型だったが、S-Foldableはヒンジをさらに加えて3つ折りできるようにしているのである。2つに折り曲げられるだけでもすごいと感じられるだろうが、これが3つ折りになるとは、まるでマジックを見ているようだ。
3つ折りにできるメリットはスマートフォンの「大画面化」と「本体の小型化」を両立できる点だ。2つ折りスマートフォンでも8インチ前後のタブレットを半分に畳むことで、一般的なスマートフォンサイズにすることができる。これが3つ折りになればさらにコンパクトな大きさとなり、胸ポケットにも楽に入る大きさにできるのだ。
ヒンジは開いた途中で留めることも可能で、三角形型のクレードルの上に置けばメディアプレーヤーや置時計のように使うこともできる。机の上やベッドサイドに手軽に置くことができるし、料理中に調理方法の動画を流したい、なんて時にも便利だろう。この三角形のクレードルはワイヤレス充電器が組み込まれるだろうから、置いたまま充電も簡単にできるわけだ。
一方、開いて使うときは全体を1画面としても利用できるし、ディスプレイを3つのパーツに分けて3つのアプリを表示することも可能だ。なおディスプレイは開くと右端側が透明パーツとなっており、この部分には表示はできない。開いた時のディスプレイの縦横比を保ちつつ、折りたたんだ時にちょうどいいサイズになるように端の部分を伸ばしているようだ。2つ折りディスプレイでも2つのアプリの表示が可能だが、縦長の表示となってしまい見やすいものでない。3つ折りスマートフォンなら「2つのスマホ画面」「1つのスリム画面」と、マルチウィンドウもより使いやすくなる。
すでに発売されている2つ折り式のスマートフォンは「タブレットをスマホサイズで持ち運べる」というメリットがあったが、3つ折り式スマートフォンは「さらに小型に」「3つのアプリが使いやすい」という利点が加わったのである。サムスンには今すぐにも製品化してほしいと思うが、残念なことに大きなデメリットもある。それは3つに畳むために本体の厚みが増してしまうことだ。コンセプトビデオを見ると、S-Foldableを使ったスマートフォンは現在販売されている一般的なスマートフォンの3倍くらいの厚さになってしまうようだ。
そのため畳んだ状態でスマートフォンとして使おうとすると、片手持ちは難しそうである。しかし今回発表されたモデルはコンセプトにすぎず、3つ折り型スマートフォンのユースケースを提案したに過ぎない。今後製品化に向けて薄型化を進めていくことは間違いないだろう。
なお折りたたみ式のディスプレイは、サムスン以外にTCLのディスプレイ関連子会社であるCSOTが3つ折り式を開発中と言われている。TCL/CSOTは3つ折り式スマートフォンのコンセプトモックアップを2020年1月に披露したが、その後は折り畳みよりも巻き取り式のローラブルディスプレイの開発に注力しているような動きを見せている。またこの2社以外には中国のディスプレイメーカーのBOEが、ファーウェイに2つ折り式のディスプレイを提供している。
スマートフォンの大型化がより求められるようになれば、普段は小型サイズながらも開けばタブレットになる折りたたみスマートフォンの需要は今以上に高まっていくだろう。横向きの2つ折りスマートフォンは現在4社が販売しているが、今後より多くのメーカーから製品が出てくるだろう。そして3つ折り式のスマートフォンも数年内に実用化されるはずだ。新しいスマートフォンの開発にはチップセットやカメラモジュールといった部材に注目が集められていたが、これからはディスプレイの進化が主役となる時代になるだろう。