さまざまな事象を分かりやすい図解で表現し、Twitterやnoteでの発信で支持を集めるこばかなさん。多摩美術大学を卒業後、デザイナーとして歩み始めたのち、コーチング会社THE COACHの代表へ。SNSなどで発信する内容は理路整然としているこばかなさんだが、普段どんなことを考えているのか。そして普段の発信から削ぎ落とされている“無駄”な部分にこそ、感性を刺激する大事なモノが宿っているはず! 外からの力が作用しなければ、物体は静止、または等速度運動を続けるという「慣性の法則」をなぞり、「こばかなの無駄話から生まれる“感性”の法則」と題した連載。こばかなさんと無駄話をして、日々の生活で静止しがちな思考を動かし始めよう。第12回目は、キャリア選択における「しっくり感」のお話し。
キャリアの自分らしさについて
この10月末、私はTHE COACHの代表を退任しました。背景は私のnoteに書いています(『THE COACHの代表を退任して、新たな道に進みます。』)。そんなわけで、今後のキャリアについては完全に白紙状態で毎日を過ごしていました。
ありがたいことに、現在(この記事の公開時点)では次の道が定まっています。そこで、読者のみなさまにとって少しでも参考になればと、キャリアの岐路に立ったときに私が考えたことをお伝えしようかと思います。
次のキャリアの可能性をいったん広げて考えたときに、選択肢として「起業」「就職」「フリーランス」の大きく3つがありました。また、私はもともとアーティストを目指そうと考えていた時期もあり、いっそ漫画家を目指すというような、思い切った選択も視野に入れてもいました。
さまざまな思考を経て、結果的に一番大切なのは「自分なりにしっくりくる仕事」をすることだなと腹落ちして。これは前出のnoteにも書いたんですが、THE COACHを退任したひとつの理由に「この先どういう会社にしていくか、未来を自分の中で描けなくなってきた」という点が大きかったんです。
経営はもちろん大変なことの連続。それを乗り越えるためには「ここが私の場所なんだ」というしっくり感や、大げさに言えば「絶対にこれをやらないと死ねない」みたいな覚悟が必要です。自分にとって本当にしっくりくるジャンルの活動じゃないと、特に起業においては難易度が髙いと実感しました。
「しっくり感」のある状況って?
ただ、自分の過去を振り返ってみたとき、仕事でしっくりきていた状況って意外となくて。私はかなりのジョブホッパーを自認していて、大学時代の4年間ではアルバイトを15回くらい変えてます。また、社会人としてのキャリアは7年目ですが、フリーランスや起業も合わせると、すでに3、4回転職しています。
どうしてジョブホップするかというと、「もう少し自分に合った仕事ってあるんじゃないか」と考えてしまうことも理由のひとつです。だから自分は「しっくりきているかどうか」みたいなところに、相当シビアなんだなと改めて思います。
「結婚しておめでとう」と同じように、「しっくりくる働き方/仕事を見つけられておめでとう」と言ってもいいくらい、自分にとってぴったりの仕事を得られるのはスゴいことだと、私は思うんです。
「起業」という道について
そんなストライクゾーンが狭い自分なので、今後もしっくりくる仕事を見つけるのは難しいかもと思ったりもしました。でも一方で、以前と比べて自己理解の解像度が上がっているので、何かが見つかるような気もしています。
それは「選択肢を潰していった結果、残りカードが少なくなってきたから」というわけではなく、逆に「カードにある山札自体が増えたから」とも言えるんです。たとえば、私は経営者になる自分を想像していませんでしたが、いま一番しっくりきているのは「起業家」で。
これはキャリア初期にはなかったけど、歩んでいく中で山札に追加されたカードです。だから、現状いいカードが見当たらない人には、打席に立ち続けると見える世界が変わってくることを知ってもらいたいです。
もうひとつ、以前の私は起業家に対して遠い世界の人たちだなと思っていました。解決したい何かがあって、強い炎を持っているようなイメージで。でも私にはあまりそういうのも見当たらないし、起業家っぽくはないなって思っていたんです。
でもいろんな先輩に話を聞いていく中で、起業家のイメージが変わってきました。実は自分の原体験から起業する人と、ビジネスチャンスがあるから起業する人では、後者の方が成功する確率が高いそうなんです。原体験の前にまず「起業したい」「成功したい」のような気持ちがモチベーションにあってもいいんだなと、ある種の安心感がありました。
こうしていろんな可能性を考え、「自分らしいしっくり感」にこだわりながらも、年内までにはキャリアを決めなければとは思っていました。重要なのは時間です。キャリアにはこの1年ほど悩んできて、充分休んだ感覚もありました。考えすぎて動かないのが一番の機会損失とも言えます。次回は、そんな「決断」についてお話ししてみようと思います。
Text:弥富文次