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日本でCBDオイルの偏見をなくす

ENDOCAに聞く、“ヘンプの正しいエデュケーション”

author: 那須凪瑳date: 2022/08/21

「CBDオイル」をご存知だろうか。CBDとは、“大麻(ヘンプ)”の種子および茎から抽出された大麻特有の成分、CannaBiDiol(カンナビジオール)の略語。日本では、いわゆる“ハイ”な状態になるTHC(テトラヒドロカンナビノール)は規制されているが、THCフリーのCBDは「食品」や「化粧品」に分類される。このCBDオイルは、2015年頃から欧米で爆発的に流行し、急速に社会に浸透していき、身近なところにCBD製品が並ぶのが当たり前になった。しかし、こんなにも日本でCBD製品の普及が遅れているのはどうしてだろう。

そこで、自身が自律神経失調症になり「CBDオイルに救われた」という、ENDOCA(エンドカ)ジャパン・ディレクターの松本敏さんに、CBDの効果から日本における麻(あさ)の歴史までを伺った。もちろん、日本で禁止されている大麻使用を誘発するものではないし、THCとCBDは別物である。ただ、大麻に偏見を持っている人ほど、松本さんの声を聞いてほしい。

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 今回訪れた『エンドカ・ショップ 鎌倉店』外観

『エンドカ・ショップ 鎌倉店』内観

「CBDオイル」に救われたあのとき

──松本さんは数年前に自律神経失調症になってしまったそうですが、原因はどのようなものだったのでしょうか。

当時ファッション業界で働いており、毎月のようにヨーロッパと日本を往復する忙しい日々を送っていました。そんな生活だったので、体内時計もめちゃくちゃで、常に交感神経 が“ON”の状態だったんです。自分的には“冴えている”と思っていたんですが、寝られない日が増えてきて、だんだん動悸までしてきて。そしてある日突然、倒れました。そこから2年間寝たきりの生活になってしまったんです。

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ENDOCA(エンドカ)ジャパン・ディレクターの松本敏さん

──2年間もですか。その間に何か治療はされたんでしょうか。

まず西洋医療から始めたんですが、全然症状は良くならなくて。その後、漢方などの東洋医療を勧められて、鍼灸やカウンセリングなどを試して、最終的にスリランカに渡って、アーユルヴェーダ(インド・スリランカ発祥の伝統医療)施設に1か月ほど入ったんです。僕にはそれが一番合っていて、症状が緩和されました。でも、日本に帰国したら、また悪化してしまったんです。そんなときに海外の友人に勧められたのが、CBDオイルでした。

──松本さんが使い始めた時には、すでに日本に「CBDオイル」はあったのでしょうか。

2015年頃だったんですが、その時点では日本になかったため個人輸入しました。使い始めたら、過緊張と慢性的なパニック状態でバラバラだった心と身体が一気に1つに繋がるように感じたんです。まさに再び“心身のバランスが整った”という感覚でした。

──それがきっかけで、「ENDOCA」を日本へ広め始めたのでしょうか。

はい。今でも取り扱いのある『Biople(ビープル)』や『伊勢丹』に関わっている友人にCBDオイルについて話したところ、とても興味を持ってくれて。そこで本格的に日本に輸入しようと思い始めました。ですが、結局色々とあって、日本に正式に流通できたのは2019年でした。

日本は“麻の国の民族”だと知った

──やはり、日本人は“大麻”という言葉を過度に嫌う?

そうですね。「大麻=悪」という認識が強くあると感じます。2019年に正式に流通できたときも、興味を持ったり購入したりするのは、海外の情報を取り入れている方や、あらゆる物事にオープンな方が多かったですね。

──今年6月9日には、タイで大麻に関する規制緩和*1が進められましたが、日本では未だに医療用大麻さえ許されていません。アメリカでは難治性てんかんの治療に大麻成分を使った薬が効果を示した例もありますよね。

はい。難治性てんかんを患っていたアメリカの子どもが、医療用大麻を使用したことで発作が緩和された例がありますね。実は他にも、治療に医療用大麻やCBDオイルを使用して効果を示した、という論文がたくさんあります。

ただ実は日本でも、厚生労働省が産業用大麻や医療用大麻の栽培などの規制の緩和に向けた議論を進めている最中なんです。

*1 タイで大麻に関する規制緩和……タイでは2022年6月9日に、大麻が規制薬物のリストから除外され、家庭栽培が解禁されるなどしている。しかし、タイにおいても、解禁されたのは医療等を目的とする使用や栽培であり、引き続き娯楽目的での使用は認められておらず、公共の場で大麻を吸引することなども禁止されている。(参考:在タイ日本国大使館

──有効活用できる成分のみを合法化するのは良い流れですね。

はい。実は僕、すごく驚いたことがあって。以前、ENDOCAが設立されたデンマークに、オーナーのヘンリー・ヴィンセンティ(Henry Vincenty)に会いに行ったことがあったんです。すると、すぐにヘンリーに「日本は麻の国の民族だろ。何しにきたんだ?」と言われたんです。びっくりして「え?」ってなって。

というのも、実は戦前までの日本では大麻(麻)は日常的に活用されていて、日本人の生活を支えるものだったんです。昭和29年には大麻栽培者免許者数が3万7千人ほどもいたそうで。でも、今では30人ほどにまで減ってしまいました。(参考:厚生労働省

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──そこにはどのような背景があるのでしょうか。

戦後、GHQの意向により、昭和23年に『大麻取締法』が制定されたことが背景にあります。それまで大麻は衣類や建材に当たり前に使われていましたし、実は神社のしめ縄などの材料には国産の麻が使われてきました。今は以前のように栽培することが難しくなったため、危機に直面しているそうです。

さらに、取締法が制定されたことで、大麻がアンダーグラウンドに潜ってしまい、“品種改良”された陶酔成分の高い品種(マリファナ)ばかりが求められるようになりました。元来日本には、大麻に含まれる陶酔成分であるTHCの高い大麻草の品種は存在しなかったのですが、日本に自生している安全な大麻草が禁止され、海外から輸入したTHCの高い大麻が日本のアンダーグラウンドに入ってくるという状況になりました。

戦前まで日本人にとって大麻草は、衣類から建材、医療や神事にまで使う生活必需品だったため、大麻が人を酔わせる存在になるなんて誰も想像していなかったと思います。

──大麻は時代とともに変化してきた?

そうですね。アメリカではようやく10年ほど前から大麻の見直しが始まり、THCが低い品種(ヘンプ)は安全なものと見なされ、規制に従いさえすれば、農家であれば誰でも栽培できるようになりました。その流れで、ようやく日本にも「CBDオイル」という形で、戦前の日本で使用されていたような、本来の姿の大麻が舞い戻ろうとしています。

日常にENDOCAのCBDオイルを取り入れるには

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左から:ENDOCA 「ヘンプオイルドロップス 300mg CBD(3%)」「ヘンプオイルドロップス1500mg CBD(15%)」

──では、実際にCBDオイルを生活に取り入れる場合、どのように取り入れたら良いでしょうか。

コーヒーやお茶に入れてもいいですし、オイルをそのまま口に入れても良いです。「ヘンプシード」の味なので、想像しやすいもので近いのは「オリーブオイル」の味だと思います。

抵抗がある方はENDOCAが販売している「バーム」などの化粧品類から使い始めるのがいいと思います。『伊勢丹新宿店メンズ館』に直営店舗があるのですが、店頭でもバームを使ってCBDに対する抵抗がなくなる方が多くいらっしゃいます。

Hemp Salve(ヘンプサルヴ) 750mg CBD
CBD Lips + Skin(リップ&スキン)20mg CBD

──『エンドカ・ショップ 鎌倉店』では、対面で質問などを受けているそうですが、お客さんからはどんな質問を受けることが多いですか?

やはり取り入れ方、使い方の質問ですね。お話しすると、皆さんCBDへの理解が深まって、ポジティブな気持ちで帰る方ばかりです。実際に、一度使用するとリピーター率はとても高いですね。

あと、少し前までだったら、エナジードリンクのように「ONにするもの」を摂取することがリセット方法だったかもしれないんですが、テレワークやオンライン会議が当たり前になった今、お客さまの話を聞いていると、「OFFにするもの」が求められている印象があります。

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──「CBDに効果を感じなかった」という方はいらっしゃいますか?

効果を感じない方には、大きく分けて2パターンあると思います。

一つ目は、効果が出る前に途中でやめてしまうこと。CBDオイルの取り入れ方としてオススメなのは、少ない量から徐々に増やしていく、というやり方です。すると、自分に適した量が分かるようになります。CBDオイルには身体的依存性はないので安心してください。

二つ目は、CBDが正しく表示された成分が含有されていない製品を使っているパターンです。アメリカには3,000から5,000ほどCBDブランドがあると言われていますが、市場でまともな製品は3割程度であるとFDA(アメリカ食品医薬品局)も警告しています。日本ではまだ規模こそ小さいですが、似たような状況になりつつあると危惧しています。どこの畑でヘンプを栽培して、CBDをどのように加工・抽出しているのかがオープンな、透明性の高い企業やブランドを選ぶと良いと思います。ちなみにENDOCAでは“種から棚まで”をポリシーに、畑から製品製造まで一貫して行なっています。

『エンドカ・ショップ 鎌倉店』にはCBDオイル入りのチョコレートも

──一貫して行っている会社は多いのでしょうか。

栽培から製造までを行なっている会社は多くあるのですが、オーガニック栽培を徹底し、ENDOCAくらいの規模で行なっている企業を、僕はあまり知りません。ENDOCAはオーガニックであることにこだわっており、コスメ製品は「食品グレード」のみで作られています。デンマークに行ったときにオーナーの子ども達が、ENDOCAのボディバターコスメをパンに塗って食べていたのには驚きました。

──すごいですね。

オーナーのヘンリーは、常に自分自身で考えて、社会に対して疑問符を持っている人なんです。なので、「コスメだとしても、オーガニックなら、食べられて当たり前だよね」という姿勢なんです。

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今後は正しい“大麻のエデュケーション”が重要

──日本にCBDオイルを普及させる際に苦労した点はありますか?

麻薬取締官には、自ら説明しに行きましたね。麻薬取締官の方々は、疑いから入るのは当たり前だと思うんですが、僕は、純粋に「食品」として届けたいことなどを説明しました。

彼らに取引先リストを提示したのですが、そこには多くの病院や歯科医院、動物病院まで入っていたので、逆に興味を持ってもらえました。彼らの多くは薬学を学んだ方々なので、海外の論文や臨床データを用いてお話しすると、「それは人を救う可能性のある素晴らしいものですね」と言われたくらいです。最悪の場合、逮捕されるのではないかと緊張していましたが、麻薬取締官の方々と対話することで安心することができました。

──「CBD議連」や「麻産業創造開発機構」など多くの協会が立ち上がり、政府の動きも活発になってきていますね。

そうですね。来年には日本の『大麻取締法』が改正される*2と言われていますし、それによって日本の人々が抱く大麻に対するイメージも大きく変わっていくと思います。ENDOCAのポップアップを開催する際に、大麻草をイラストにしたポスターを展示しているんですが、みなさん「え、これが大麻なの?」って驚かれるんです。つまり、みんな植物の見た目さえ知らずに「大麻=悪」になっている。なので僕は、これからは正しい“大麻のエディケーション”をしていくフェーズに入ったと思っています。

メディアで声を発信していくこともそうですし、今後もリアルなイベントを行っていく予定です。いずれ、日本でももっとCBDオイルが広まって、治療の選択肢のひとつになって、僕や周りの友人のようにCBDオイルに助けられる人が増えたら嬉しいです。また、いつかは「風邪の引き始めに漢方を飲む」のと同じくらいに、CBDが当たり前に生活にある状況を日本で作れたらいいなと思っています。

*2 来年には日本の『大麻取締法』が改正される……令和4年6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」の中には「大麻に関する制度を見直し、大麻由来医薬品の利用等に向けた必要な環境整備を進める。」という記述がある。

ENDOCA 鎌倉店

住所:神奈川県鎌倉市鎌倉山2-16-36

ENDOCA 伊勢丹新宿店メンズ館店

住所:東京都新宿区新宿3-14-1 伊勢丹新宿店メンズ館1F

ENDOCA WEB SHOP

https://endoca.co.jp

Text:那須凪瑳
Photo:岩田エレナ

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Beyond magazine編集者・ライター
那須凪瑳

音楽メディア会社で働いた後、フリーランスに転身。現在はカルチャーメディアを中心に執筆、企画、編集も。音楽をはじめとする「文化」が社会に与える影響に興味を持ち、日々その可能性を探究中。
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