カーラーを髪に近づけるだけで、髪が勝手に巻きつき、ふんわりカールを作ってくれる画期的なヘアスタイラー「Dyson Airwrap(ダイソン エアラップ)」を世に送り出してから、およそ2年半。ダイソンが2022年6月に、次世代モデル「Dyson Airwrap マルチスタイラー」を発売しました。※直販価格は付属品・ツール8点付きで6万3250円(消費税込/編集部調べ)。
ダイソンといえば掃除機を思い浮かべる人も多いとは思いますが、カールが作れるだけじゃない、髪へのやさしさを追究し続ける「Dyson Airwrap マルチスタイラー」へのあくなきこだわりを、開発者に聞いてきました
といってもモーターの性能など本体は変わっていません。変わったのは、アタッチメント部分のみ。つまり、アタッチメントさえ付け替えれば、初代モデルユーザーも、新モデルと同じ機能を享受できるというわけです。
なんだ、それだけか……とつぶやくなかれ。アタッチメントを変えるだけで、こんなに使いやすくなるとは、さすが空気力学を知り尽くしたダイソンと言わざるを得ない進化を遂げているのです。
そもそもエアラップとは、ダイソンが得意とする「コアンダ効果」を利用したヘアスタイラー。カーラーを近づけると、髪が自動でしっかり巻きつき、温風で濡れた髪を乾かしながらスタイリングすることができます。ヘアアイロンのような高温の熱を使わないため、髪への過度な熱ダメージを抑えるとして人気になっています。
ただ従来モデルには、使いづらい点もありました。カーラーによって髪が巻き付く向きが決まっていたため、左巻き、右巻きと変えたい時は、いちいち付け替えて使い分ける必要があり、けっこう手間がかかるのです。
でも新しいカーラーは、付け替えることなくカールの向きを変えることが可能。またドライヤーに搭載されている「浮き毛抑制モード」は、 “アホ毛”を抑えてくれます。実際に使ってみましたが、圧倒的に使いやすくなっていました。
これは大進化! 果たしてどのような経緯で新モデルは生まれたのでしょうか。ダイソンのシニアプリンシパルサイエンティストで、ヘアケアプロダクトの開発に「人生を捧げている」と自負するロブ スミス氏(以下、スミス氏)に、熱い思いを語ってもらいました。
コアンダ効果のコントロールで使いやすさと仕上がりの良さを実現
田中:さっそく使わせてもらいましたが、前モデルでうまく使いこなせなかったところが改良されていて、驚きました。カールもよりきれいに、しっかりスタイリングできるようになったと感じます。
スミス氏:ありがとうございます。本当は初代モデルから、これが提供できればよかったのですが、やはり多くの技術と知見が必要で、時間がかかってしまいました。正確にいうと技術自体はあったのですが、“きれいなカールを作る”ところに到達するまでが大変だったんです。
まず大前提として、消費者がどんなカールを“きれいなカール”と考えているのか、市場調査から行う必要がありました。そのうえで “きれいなカール”を作るための気流をシミュレーションするメソッドとして、CFD(Computational Fluid Dynamics / 数値流体シミュレーション)を開発。一方で、それを実現するためのカールの形状をエンジニアと一緒に研究し、検証するという工程を何度も繰り返しました。長い道のりでしたね……。
田中:改めて以前のアタッチメントとの違いをご説明いただけますか。
スミス氏:見比べていただくとわかるのですが、オリジナルはスリット(溝)が大きく、一方に向かって風が流れる形状になっています。そのため、右巻き、左巻きで使いわける必要がありました。一方新モデルは、カーラーの先端をひねるだけで、右向き、左向きと風の向きが変えられます。またスリットも狭くし、ドライヤーの風が抜けないようにシーリングすることでコアンダ効果を高め、より美しいカールが作れるようになりました。
田中:モーターを変えずにアタッチメントを変えるだけで、ここまで性能が変わるんですね。
スミス氏:そうですね。私は科学者であってエンジニアではないので、これを開発したエンジニアは、私から見ても魔法使いのように感じます(笑)。
田中:「浮き毛抑制モード」がドライヤーに搭載されたのも、アホ毛に悩む私にとっては嬉しい進化でした。一回滑らせるだけでツンツン飛び出ていたアホ毛がピタッと収まり、ツヤツヤに仕上がって驚きました。
スミス氏:「Dyson Airwrapマルチスタイラー」は、日本人の髪質や好みにも合っていると思います。日本人の方に多い太くて丈夫な髪は、しっかりカールがつきやすいですし、ストレートヘアを好む人なら、浮き毛抑制モードでツヤのあるさらさらストレートヘアが作れますので。
傷んだ髪は戻らない。いかに傷めないかが重要
田中:しかも「Dyson Airwrap」には、髪が傷みにくいという大きな特徴もありますよね。
スミス氏:ヘアケア製品の開発が、掃除機や空気清浄機と異なる点は、ヘアサイエンスという観点から髪の知識を深める必要があることです。いくら技術があっても、この部分をないがしろにしたら、消費者に良いものが提供できませんから。私たちが10年以上にわたり、1億ポンド(約163億円※)を投資してヘアサイエンス研究を行ってきたのは、そのためです。
Dyson Airwrapが髪にダメージを与えにくい150℃以下の温風を使用しているのも、過度な熱がダメージにつながることが分かったからです。もちろん、より低温であれば、さらにヘアダメージは抑えられると思いますが、スタイリングという観点では、ある程度の温度も必要です。私たちは、スタイリングと髪へのやさしさを両立するバランスを探り、この温度にたどり着きました。
田中:逆に、他メーカーがうたっているような“髪質を改善する”という観点で、研究されていることはありますか。
スミス氏:一度傷んだ髪は元に戻らないため、いかに髪へのダメージを最小限に抑えるかが重要、というのが私たちのヘアサイエンス研究に基づく見解です。理想としては、生え始めた髪の根本部分、伸びてきた真ん中部分、ダメージを受けやすい毛先の状態がほぼ変わらないということですね。特に髪はドライヤーの熱だけでなく、紫外線を浴びたり、摩擦を受けたりすることによっても傷みやすくなります。でも日頃から髪のダメージを抑え、キューティクルが整った状態をキープしていれば、こうした外部刺激から髪も守ることができます。
田中:うるおいのある健康な髪とは、やはり水分をたっぷり含んでいるのでしょうか。
スミス氏:実は必ずしもそうではないことが、私たちの研究でわかってきました。水分が多すぎると逆に髪が膨らみ、キューティクルが曲がったり開いたりして、ダメージにつながりやすいのです。実際、私たちは水分量の異なる髪を用意し、どの髪が一番きれいに見えるかを調査しました。すると驚いたことに、もっともきれいに見えて手触りもしっとりしていた髪が、もっとも水分量が少なかったんです。
ですから私たちは今、髪にとっての適切な水分量がどれくらいかを追究し、その状態を科学的な観点と最新テクノロジーから目指していきたいと思っています。
田中:他社の考える美髪や、美髪を叶えるアプローチとは異なる新たな視点で、とても興味深いです。いつか髪の水分量を測りながら乾かせるドライヤーなどを、ダイソンさんなら作ってくれそうですね(笑)。
スミス氏:それは分かりませんが(苦笑)、私自身ヘアドライヤーや初代Dyson Airwrapの開発に携わってきており、ダイソンのプロダクトは他社とは全く異なると自負しています。もっとも大切にしているのは、髪のダメージを抑えながら、いかに美しいスタイリングが叶えられるかということ。髪がきれいにまとまると、その日1日を気分良く過ごせるし、それが消費者のみなさんのQOL(生活の質)向上にもつながると思うんです。
田中:常に問題を解決し続けるダイソンさんの熱意には驚かされるばかりです。次はどんな進化を遂げた製品が出てくるのか、ワクワクしますね。
スミス氏:私はいわゆる“オタク”ですから、ヘアサイエンスをさらに追究していくつもりです。新しいプロダクトには、必ず最先端のテクノロジーを搭載していますので、楽しみにしていてください。
いろいろなヘアスタイルを楽しみたいMZ世代に
インタビューを終えて、改めて「Dyson Airwrapマルチスタイラー」が高度な研究に基づいて開発されたものであることを実感しました。そして美髪のために私たちが行うべきケアもたくさんあると思いますが、毎日使うヘアスタイラーには、髪へのやさしさを追究した製品を選ぶことが重要です。日々ヘアアレンジを楽しみたいMZ世代のみなさんも、髪を労りながらストレートもカールも叶える「Dyson Airwrapマルチスタイラー」をセレクトしてみてはいかがでしょうか。