検索
menu
close
loading...
Special特集
close
検索
Tags
  1. top/
  2. Review/
  3. スマホカメラ新時代「画質から味わい体験へ」回帰が進む
Review

ハッセルブラッドとカール・ツァイスのスマホ参入

スマホカメラ新時代「画質から味わい体験へ」回帰が進む

author: 山根 康宏date: 2022/06/27

スマホのカメラの技術は日進月歩で進化しており、カメラメーカーとの協業も進んでいる。老舗カメラメーカーのライカは2016年にファーウェイ、2021年にシャープと提携を行い、2022年5月には世界3位のスマホメーカー、シャオミとの提携を発表した。ファーウェイのスマホ事業が行き詰まりを見せているなか、「シャオミxライカ」のコラボがこれからのスマホのカメラを大きく進化させていくだろう。

ライカとシャオミの歴史的な提携が始まる

カメラメーカー・ハッセルブラッドとスマートフォン

カメラ大手のニコンやキャノンはスマホメーカーとの目立った提携は行っていないが、老舗メーカーは積極的なコラボを進めている。現在はドローンメーカーDJIの傘下となったスウェーデンで生まれのハッセルブラッドは、アポロ計画で採用されるなど高い信頼性のおけるカメラを長年にわたり輩出してきた。

デジタル化の流れのなか、2016年にモトローラから発売になった「moto mods Hasselblad True Zoom」は、カメラマニアたちの注目を一気に引き寄せた。モトローラの合体式スマホ「moto Z」の背面にマグネットで装着するモジュールで、10倍ズームの高性能なカメラフォンに変形できるのだ。

moto mods Hasselblad True Zoomを装着したmoto Z。見た目はデジカメそのものだ

しかし、合体式というニッチな製品であり、またモトローラという市場シェアの高くないメーカーの製品であったことからコラボはこの1製品で終わってしまった。その後、ハッセルブラッドの名前がスマホ市場に復活したのは2021年。今度はOnePlusが「OnePlus 9シリーズ」にハッセルブラッドカメラを搭載した。

ハッセルブラッドは2021年にOnePlusとの協業を開始

OnePlusとハッセルブラッドの協業はカメラの画質だけではなく「カメラ体験」へと一歩踏み込んでいる。OnePlus 9にはハッセルブラッドの「Xpanモード」を搭載。これはハッセルブラッドのデュアルフレーム35mmカメラ「HASSELBLAD XPAN」を模した撮影モードだ。HASSELBLAD XPANは通常の写真撮影モードと、2コマを1フレームにする65:24(8:3)のワイド撮影を可能にしたカメラだった。

35mmフィルム2コマでワイド撮影を可能にしたHASSELBLAD XPAN

OnePlusのXpanモードでは同様に65:24の撮影が可能であり、風景の空気感までも写し出せるという写実的な”作品”を作り上げることができる。OnePlus 9は4800万画素の広角と5000万画素の超広角カメラを搭載しているが、Xpanモードではその2つのカメラから2000万画素相当の高画質な写真を写し出せるのだ。他のスマートフォンでは撮影できない瞬間を納めることができるのだ。

Xpanモードで撮影。その場の空気感が伝わってくる
スマホの写真を「作品」に変えてくれる

ハッセルブラッドは2022年にOPPOとも提携を開始し、現在は「OPPO Find X5」「同Pro」そして「OnePlus 10 Pro」と協業モデルの幅を広げている。Find X5シリーズは画像処理用に自社開発したチップ「MaliSilicon X」を搭載しカメラの処理速度を高めているが、その話はまた別の機会に譲ることにしよう。

カール・ツァイスがスマホに授けた「ボケの美しさ」

老舗メーカーとスマホメーカーの提携はこの2社だけではない。レンズメーカーであるカール・ツァイスも実はレンズ部分でコラボを古くから進めている。その歴史は、スマホ黎明期である2005年から始まっており、ノキアのカメラフォン「Nokia N90」にCarl Zeissの名前の入ったカメラが搭載された。ノキアはその後マイクロソフトに端末事業を売却するが、2017年に復活を果たし現在も協業を行っている。

カールツァイスレンズ初搭載のNokia N90

ツァイスは2020年にソニーのスマホ「Xperia 1 II」のレンズとも協業。ソニーとはすでにデジタルカメラなどで提携を行っており、スマホへの搭載は長年待たれたものだった。Xperia 1 IIにはツァイスのT*(ティースター)コーティングが施されている。

これはレンズ表面での光の反射を防ぐコーティングであり、複数のレンズを組み合わせたカメラでゴーストなどをほぼゼロまで抑えてくれる。カメラの性能を高めるためにはセンサーやレンズそのものだけではなく、内部で複数組み合わさったそれぞれのレンズ間の反射を抑える技術も必要なのだ。

T*ロゴの入ったXperia PRO-I

ツァイスはソニーと同年に中国のvivoとも提携し、vivoのカメラフォン「Xシリーズ」にT*コーティングレンズを搭載した。この協業はソニーと同じレンズの高性能化のためであり、ツァイスの高いレンズ技術力を採用したものだ。

だがvivoはそれだけには飽き足らず、ツァイスのレンズ体験そのものをスマホのカメラに搭載をはじめた。最新モデル「X80シリーズ」はツァイスの歴代の名レンズの性能を再現するフィルターが搭載されているのだ。その性能とは「ボケ」。フィルム時代からカメラのレンズは製品ごとに様々な特性があり、明るさやレンズ構成により撮影を行ったときのボケの度合いも異なっていた。

ツァイスのレンズは様々なカメラメーカーにも採用されており、「ボケの美しさ」はレンズごとに微妙に異なる。X80にはツァイスの名レンズ「Biotar」「Distagon」「Planar」「Sonnar」のボケモードが用意されており、それぞれに異なるボケを使ったポートレートの撮影を行うことができるのである。

左上から時計回りに「Biotar」「Distagon」「Planar」「Sonnar」のボケフィルターを適用

ハッセルブラッドもツァイスもユーザーとともに長い時間をかけて写真の技術を培ってきた。スマホのAI処理能力が高まりその写真技術が取り込まれていく中で、AIには処理できない人間の感性を生かした写真を撮影できる新しい体験こそが、これからのスマホカメラの性能差別化に必要とされるだろう。

author's articles
author's articles

author
https://d3n24rcbvpcz6k.cloudfront.net/wp-content/uploads/2021/04/028.jpg

携帯電話研究家
山根 康宏

香港在住。最新のIT・通信事情を取材するため世界各国の展示会・新製品発表会を1年中追いかけている。日本のメディアに海外事情の執筆記事多数。訪問先では現地取材と称し地元のキャリアや家電店を訪問し必ずスマートフォンを買い求める。最新のハイスペックモデルからジャンクなレトロ端末まで興味の幅は幅広く、時には蚤の市で20年前の携帯電話を買っては喜んでいる。1度買った端末は売却せず収集するコレクターでもあり、集めた携帯電話・スマートフォンの数は1700台を超える。YouTubeでは日本で手に入らないスマートフォンや香港情報を発信している。YouTubeチャンネルは「yamaneyasuhiro」。Twitter ID「hkyamane」、Facebook ID「hkyamane」。
Follow us!!
Copyright © Connect Beyond. All Rights Reserved.