2年以上続いているコロナ禍が過ぎ、様々な条件下で衛生的に気を遣うことはあるものの、また旅行を楽しめるようになってきた。どこかに行きたいモチベが上がったところで、久しぶりのデスティネーションとして選んだのは沖縄。筆者はもう数え切れないほど訪れていて、本島は北から南まで、離島もいくつも体験してきた。
そんな中で“やんばるの森”を堪能しようと思い立った。無論、素晴らしい青さをもつ名護のビーチもよいのだが、中部から北部にかけて広がる鬱蒼とした“やんばるの森”は独自の生態系があり、そのプリミティブな雰囲気から沖縄の新たなスポットとして注目されている。
やんばるの海は本島の南側と異なり、山からすぐグッと深くなることで生まれる紺碧が森の緑と相まって独特の景観を生み出している。環境を壊さぬように配慮しながら整えられている彼の地は、リピーターが楽しめる新しい沖縄の一面だ。
今回、選んだのは本島の北部に広がるやんばるの森の入り口に位置し、さらに徒歩10分でビーチまでも楽しめてしまう立地の「オリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパ」。2022年の3月に改装を終えたばかりで、県内でも最大級の広さのプールも完備している。予約したのはクラブラウンジを使える高層階の部屋で、やんばるの森に自生している植物を採り入れたラウンジでウエルカムドリンクをいただきながら優雅にチェックイン。それにしてもホテルに入るといい香り。このオリジナルアロマは、やんばるの森の香りにシークワーサーをプラスしてあるとか。
14、15階はクラブラウンジ利用が可能で、調度品などを白で統一している。リビングの一部がガラス張りで眼下はやんばるの森、その向こうに海が見えるという贅沢な眺め。カウチがあり、ここで日がな一日のんびりと過ごすのも悪くない。
サウナにエステ、ハンモックヨガ、バギーとSUPで充実のアクティビティ
わざわざ観光に行かなくともホテル滞在だけで満足度が高い。ここでスパと呼ばれているのは、いわゆるお風呂。流行りのサウナも水風呂も完備した本格派で、クラブルーム宿泊者は無料で使えるのがうれしい。
オープンの15時、開くと同時に入ってみると誰もおらず、独り占め。露天のバイブラバスに身を沈めたり、サウナと水風呂を行ったり来たりしているとあっという間に1時間。ととのうまではもう少し時間が必要だったが、この後にエステの予約を入れていたので後ろ髪を引かれる思いでスパを出てきた。
「クレエ デュ 美」では疲れた体を癒すためにアロマオーダーメイドトリートメント(60分、1万6500円)をチョイス。100%カスタマイズトリートメントなのでカウンセリングの時に自分の疲れているところを言っておけば、入念に揉んでもらえる。まずはうつ伏せで背中から。深呼吸に合わせて背中を上下に伸ばされると、縮こまっていた背骨が本来あるべき間隔に戻っていくかのよう。実は触れられた瞬間に「あ、この人とは気が合うな」とわかった。担当の方は手が温かく、生来の“癒す人”だ。仕事だから、レポートしなくちゃと思いつつも思わず寝入ってしまい自分のイビキで目覚めたこと数回。繊細かつダイナミック、グイッと押したかと思うと波が引くようにスルりと力を抜く。いやはやお見事。
プールサイドのガゼボで行われる「ハンモックヨガ」もぜひ、体験して欲しい。普通のヨガに比べると浮くことでリンパと血液の流れがよくなり、インナーマッスル、特に骨盤底筋に効くという。相撲部屋のトレーニングから老人ホームのリハビリまでに採り入れられているという話題のエクササイズ。
インストラクターに動きを丁寧に説明してもらい、おっかなびっくりハンモックに身を委ねる。「300kgまで大丈夫です」と聞いたものの慣れるまでは、やはり不安。しかし、ある時、身体がほぐれるのに呼応して心もフッと軽くなり、「預けても大丈夫」と思うことができた。すると不思議なもので、余計な力が抜けて呼吸に集中できるように。周りを見る余裕もでき、今まで目の前しか見えていなかったのに急に森が見え、海が見えた。心が解放されると身体も解放され、流れる。サウナでは整わなかったが、ハンモックヨガでは整った。
最後はハンモックに包まれる“パワー チャージ ナップ”を。胎内回帰のような効果があるらしく、その心地よさは格別。まるで世界遺産の斎場御嶽(せーふぁうたき)に入ったようなそんな不思議な感覚も。毎朝7時30分と8時30分の2回行われ、40分で3500円とリーズナブル。これ、もっと受けたいかも。
森の体験ならアウトドアのアクティビティもいい。「どきどきヤンバルンチャー」のスタッフの方が島言葉で明るく元気にガイドしてくれる。バギーは操作にちょっとコツがいるが、慣れれば平気。直接地面の力強さを感じられ、童心に返って素直に楽しい。途中で食用のヤギにエサをあげるなんてことも。
また、以前から興味があったSUP(スタンダップ パドル ボード)にも挑戦できた。海ではなく森の中の池なので波もなく、初心者や子どもでもOK。安定感のあるBIG SUPなのでさらに安心。単なるアクティビティではなく体幹や腹筋に効くエクササイズでもある。
バギー、SUPともに30分で大人3500円と、こちらも気軽に参加できるのがいい。
カジュアルからBBQまで 沖縄の地元素材を食べ尽くす
旅の楽しみといえば、何といっても食。メインダイニングはブッフェ&グリル クワッチー。カジュアルな色とりどりのブッフェが便利だ。とはいえ、しっかりとサーブされるサーロインやスペアリブなどをもあり、満足度が高い。このホテル、とにかく野菜がおいしいと評判。というのもゴーローカルという取り組みで、毎週金曜の朝に名護の野菜を買い付けに行くそう。地元の公民館に農家の方々が採れたての野菜を持ってくる「やんばる朝市かあちゃんの会」から買い付けているのだから、そりゃ新鮮。
また天気がよければ、プールサイドでの“プレミアムBBQプラン” をどうぞ。八重山石垣牛リブロースはもちろん、オマール海老(半身)あり、泡盛豚のスペアリブ1本焼き、やんばる鶏手羽先ありで、1人前8500円はお値打ち。たとえあいにくの天候でも屋内で楽しめる。
普通、クラブラウンジは高層階の一角に秘密の小スペースとしてあるものだが、ここはなんとメインのロビーにドンと鎮座する。開放的で天井も高い上にソファーがたくさん。カクテルタイムはビールにワインと軽いおつまみ。そして、朝食の予約もできる。これもクラブレベル所以の特権なり。
ブッフェ以外に日替わりの卵料理がサーブされ、この日はエッグベネディクトのサーモンとアボカド添え。至福。なぜかチーズや生ハムなどのおつまみプレートも。ここにワインがないのはむしろ拷問!? のような気も……。朝シャン(朝っぱらから飲んだくれるシャンパーニュ)したかったなあ。
2日目の朝は趣向を変えて、メインダイニングのブッフェの朝食を部屋に持ち帰って楽しんだ。二日酔い気味の胃に優しいゆしどうふの味噌汁にもずくをたっぷり入れ、沖縄そばの焼きそばとタコライスを盛る。野菜サラダにチーズとハム、島豚のステーキにスクランブルエッグ。搾りたてのオレンジジュースとコーヒー。そして冷蔵庫にあったオリオンビールも。これが作りたてのハンバーガーによく合う!
南国の森は植生が豊かで楽しい。だがしかし、様々な要因でその自然が損なわれているのも事実。「沖縄の在来種のモクマオウに外来種のツタが絡みついて気を弱らせてしまうこともある」とバギーのスタッフに教えてもらった。
こちらのホテルではプラスティック削減のためにあえて部屋に備え付けのミネラルウォーターは缶入りにしたり、滞在中に部屋の掃除をしなくてもいいという選択をするとショップで使える商品券がもらえたりするなど、環境を考慮して積極的に施策している。
沖縄の言葉に“ぬちぐすい”というのがあり、これは“命の薬”の意。 心と体に元気があふれることをさすのだが、まさに今回は森の気に癒された。ただ、今までのように無邪気に飛び込んで自然を消費するのではなく、責任を持った行動と意識を持つことの重要さも学んだ。そんなSDGsな気づきをもらった有意義な旅となった。
オリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパ
沖縄県名護市喜瀬1490-1
0980-51-1000
https://www.okinawa.oriental-hotels.com/
クラブルーム1室1泊・朝食付 4万4800円〜
取材協力:オリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパ