年々大型化するスマホのディスプレイがさらに大きくなろうとしている。「スマホは片手で操作するもの」という時代は終わり、これからは大画面で映画や複数アプリを使うことが当たり前になりそうだ。
世界のスマホ販売シェアで常にトップ5位に入っている中国のスマホメーカー、vivoは2022年4月に新製品発表会を開催し、7インチディスプレイを搭載した「vivo X Note」を発表した。vivo X Noteはこれまで各メーカーがなかなか手を出さなかった7インチオーバーの大型ディスプレイを備え、さらに高画質カメラも搭載した次世代向けのスマホである
全世界で販売が好調なiPhone 13シリーズも、小型の「iPhone 13 mini」「iPhone 12 mini」の販売は思わしくないという。調査会社カウンターポイントが四半期ごとに発表している「世界8か国スマホ販売トップ5機種」最新データを見ると、この2つのモデルが5位以内に入っている国はなんと日本だけなのだ。
ちなみに8か国とは、日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、インド、中国、韓国。なお、どの国でもiPhoneはmini以外のモデルの人気が高いが、韓国で一番売れているスマホはサムスンの縦折り式スマホ「Galaxy Z Flip3 5G」。iPhone人気に一石を投じる製品となっている。
スマホ市場全体のトレンドを見ると、2021年に販売された5G対応のスマホのうち、6インチ台のモデル数は約250機種あった。このうち6.6~6.9インチの大画面モデルはざっくり半数だったのだ。アップルのiPhone 13、iPhone 13 Proは6.1インチサイズだが各国でベストセラーであり、消費者はまだこのサイズを求めているが、メーカー側は6インチ後半のモデルも数多く展開しているのだ。
とはいえスマホは手持ちで操作する製品であるから、あまりにも大きいと持ちにくく使いにくい。そのため各メーカーの製品は大型サイズでもディスプレイは6.9インチ、本体の横幅は80mm以下にしている。これ以上大きいと片手では保持しにくいのだ。
大型化する最新スマホトレンド
だがスマホの使い方は日々変わっているし、生活様式もコロナ禍によってで大きく変わった。たとえば満員電車に揺られて早朝から通勤する姿は過去のものになろうとしている。自宅で過ごす時間が増えれば、もうスマホを片手だけで操作する必要もなくなるだろう。その結果、なるべく大きいディスプレイサイズのスマホを求める人が増えているのだ。
たとえば、筆者の知り合いは仕事が完全にリモートとなり、出社は週に一度だけ。今やiPhoneを使う機会はほとんどなくなり、出勤や外出時もiPad miniばかりを使っているという。まあそこまで極端な人は少ないかもしれないが、毎日のようにNetflixを見ている人が大きい画面のスマホやタブレットで映画を見れば「大きいほうがいい」と思うようになるだろう。
vivoはこの大画面化の動きにいち早く動き出したというわけだ。vivo X Noteの本体サイズは168.8 x 80.3 x 8.4 mm。横幅はわずかだが80mmを越えており、実際に手に持ってみるとかなり大きいと感じられる。だがその代わりに7インチという大きなサイズを手に入れることができるのだ。vivo X Noteで映画を見たら、もう6インチ前半のスマホには戻れなくなるだろう。
7インチ超えのスマホは、実はvivo以外も出している。ファーウェイから独立したHonorは2021年秋に7.09インチ、横幅84.9mmの「Honor X30 Max」を発売した。vivo X Noteよりさらに幅が広いモデルだが、売れ行きは好調とのことである。なおvivoとHonorの製品名についている「Note」「Max」はほかのメーカーにも大画面スマホの代名詞としてよく使われている。
スマホの大型を先駆けた2つの名機種
大画面スマホは、サムスンが2011年に発売した「Galaxy Note」がその市場を開拓していった。当時4インチ台が当たり前だったスマホ市場に、いきなり5インチを超える製品を出したことは大きな話題となった。だが当時は「こんな大きいスマホ、だれが使う?」とばかりにメディアはこぞって否定の声を上げた。
ところが消費者は持ちやすさが多少スポイルされようとも、コンテンツを大画面で見ることのできるGalaxy Noteに飛びついたのだ。ソニーが2013年に6.4インチの「Xperia Z Ultra」を出したのはやや時代が早すぎたものの、その後中古市場で人気が長く続いたのは、その画面サイズに時代が徐々に追いついていったからだろう。
同様にファーウェイが2019年に発売した7.2インチの「Mate 20 X (5G)」も人気は長らく続いている。Mate 20 X (5G)はファーウェイが「5G時代は動画を見ることが当たり前になる」ことを意識して大きいサイズのディスプレイを搭載した。
2022年の今、たしかにNetflixやYouTubeを視聴する時間が日常生活でも大きく占めるようになっているのではないだろうか。高速通信の5Gが広く普及したことで、スマートフォンはテキストや静止画よりも動画を見るビュワーとして使われる時間が増えたのだ。
スマホの大型化は7インチ台が上限?
ではこれからスマートフォンのディスプレイサイズはさらに大きくなっていくのだろうか? 実は7インチ台前半で打ち止めになると見られている。より大きいスマートフォンを求めるのであればタブレットもあるからだ。ただしタブレットはディスプレイ周辺のベゼルの幅が広く、スマートフォンと比べると本体サイズは大きい。タブレットは大画面スマートフォンの代替にはなりにくい。
そこでディスプレイメーカーは折りたたむことのできるディスプレイを開発し、大手メーカーが次々と採用を始めている。vivoもvivo X Noteの発表と同時に自社初の折り畳みスマホ「vivo X Fold」を発表した。畳むと6.53インチ、開くと8.03インチになる一台二役のスマホであり、この画面サイズは現時点で折りたたみスマホのなかで最大だ。
外出の機会が減り、動画を視聴する時間が増えることで、スマホの画面サイズは今より大きくなっていくことは自然の流れだ。おそらく2022年から2023年にかけて、7インチを越えるスマホの製品数は増えるだろう。だがその上限は7.4インチ、7.5インチ程度になると思われる。一方折りたたみスマホは今よりも若干サイズが大きくなり、開くと9インチ、閉じると7インチくらいになるのではないだろうか。
もちろん「小さいスマホのほうが使いやすい」と考える人もいるだろう。だが大昔の3インチ台のスマホを今でも使おうと思う人はどれくらいいるだろうか? スマホの使い方と生活環境が変わることで、スマホの大型化はこれからもさらに進むのである。