「長瀞でSDGs系キャンプイベントがあるので来ない?」というフォトグラファーのお誘いで、スーパーカブにテント泊の道具を積み、“埼玉の奥座敷”こと長瀞を訪れたのは今年3月のこと。そのイベントの名は「長瀞外遊(ながとろがいゆう)」。
「長瀞外遊ってなに?」「SDGsってキャンプと関係ある?」などと考えつつ、舞台となる荒川沿いの長瀞オートキャンプ場までの道中、春を迎えた秩父の自然の中を走るのも楽しいもの。都心から気軽に来られる場所で、これだけ自然が豊かな場所も珍しいですよね。
長瀞オートキャンプ場と言えば、超人気のキャンプ場です。泊まれるなんてラッキーだなぁと、ウキウキ気分でキャンプサイトに到着したら、「どうぞ」と手渡されたのはゴミ袋。そう、今回の長瀞外遊のテーマは「ゴミ拾い」なのです。
発起人の一人で、長瀞でリバースポーツのガイドを行う「アムスハウス&フレンズ」代表の平井琢(ひらい・たく)さんによると「長瀞外遊とは、“アウトドア×環境問題”を軸に、自然や遊びから学び、自然と共に生きること。そして、遊びながら未来をより良くしていくきっかけ作りのための企画なんです」とのこと。
そういった学びと同時に、長瀞のある秩父エリアの自然やアクティビティの魅力も発信しており、第1回目となる今回は、長瀞エリアのクリーン活動を楽しみながら 環境問題やゴミ問題について一緒に考えようというもの。
“タクさん”の愛称で呼ばれる平井さんは、大学卒業後に一般企業に就職するものの、ふと手にしたオーストラリアのガイドブックに運命を感じ、ワーキングホリデーで渡豪。ケアンズでラフティングガイドをすることになったという、ちょっと、というか、かなり面白い人。帰国後に長瀞でガイドサービスに携わるだけでなく、現在は町の観光協会で常務理事も務めるなど、地域の魅力を発信する長瀞活性化のキーマンの一人でもあります。
さて、今回のイベントに集まったのは、主催者から招待された20組約40人の方々。ファミリーありカップルありと多彩ですが、どなたも極めておしゃれ。それぞれが自分のスタイルを持っているアウトドア愛好家ばかりで、ブームと言われて久しいキャンプ&アウトドアがカルチャーとして成熟しているのを感じさせてくれます。
主催者の一人である、長瀞地域おこし協力隊の清水勇多さんからイベントの説明を受け、さっそくゴミ拾いをスタート。今回はキャンプ場内を周る「CAMP SITE CLEAN」や、荒川を清掃する「RAFTING RIVER CLEAN」、そして国道140号を周る「ROUTE 140 RIVER SIDE CLEAN」の3つのルートが用意されていました。
「あったよ!」と、キャンプサイトの近くにある蓬莱島公園でさっそくゴミゲットの歓声があがると、子どもたちはよりいっそう真剣かつ楽しそうに次なる獲物を探しはじめます。
50年以上の長い歴史を持つ長瀞オートキャンプ場ですが、2019年の台風19号で壊滅的被害を受けたことでも知られています。どうやらその時によそから流されてきたゴミも多いようです。
「こっちのゴミの方が大きいぞ!」などと、相変わらず子どもたちは楽しそう。やっぱり子どもは遊びの天才です。
土砂に埋まった大物は大人と協力しつつ、少しずつ、かつ着実にキャンプサイトをクリーンアップしていく子どもたち。かれらを荒川で待っていたのは、ラフティング用のゴムボート。長瀞名物の川下りをしながらゴミを見つけちゃおうというタクさんのプランに子どもたちは大興奮でした。
そうそう、最近何かと話題の「SDGs」。2015年に国連サミットで採択された、持続可能でよりよい世界を目指す国際目標なわけですが、改めて調べてみると、「地球上の誰一人取り残さない(leave no one behind)」という普遍性のある誓いも盛り込まれています。だったら、年齢性別を問わず今日から実行できる、“ゴミ拾い”はその入り口として申し分ないはず。
「春に行う“長瀞外遊”は、長瀞エリアの観光シーズン到来の合図となるイベント。地域全体の発展に繋がる存在に育つといいなと思っているんです」とタクさんは、おおらかなヴァイブスが溢れ出す笑顔で教えてくれました。
自分の関わる場所を自分の手でキレイにするのって、当たり前だけど、ものすごく気持ちがいいんだなと気づかせてくれた長瀞外遊。大きなゴミ袋を手に、「こんなキレイな景色の場所になんでゴミを捨てちゃうのかな?」とつぶやいていた少年。その気持、ずっと忘れないでほしいぞ。
Photo:下城英悟 TEXT:杉山元洋
取材協力:長瀞オートキャンプ場