画面が折り曲げられる折りたたみスマホは、次世代のモバイルデバイスとして注目を少しずつ高めている。サムスン、ファーウェイ、シャオミ、モトローラ、OPPO、Honorと大手から中国新興メーカーまで参入企業も続々と増えている。その市場にまた1社、新たなプレーヤーが参入を始める。テレビメーカーの「TCL」だ。TCLって何のメーカー? と思う人もいるだろうが、実は海外ではよく知られている企業である。
サムスン、LGに続く巨大メーカー「TCL」
TCLの「Flex V」は縦に折りたたむデザインで、本体を開くと6.7インチ画面を持つ普通のスマホサイズとなる。一方、閉じると約8cm四方の正方形となり、小さめのバッグにも入るコンパクトな大きさになる。
このデザインのスマホはサムスンがすでに「Galaxy Z Flip3 5G」として製品化している。Flex Vは閉じたときに隙間がなく、ピンクゴールドのフレームと明るいベージュ系の本体カラーは、スマホというよりも化粧品のような上品な見た目が美しい。ケースなどつけずにこのまま使いたくなる外観だ。
TCLのテレビは日本ではあまり存在感がないが、グローバルではサムスンとLGをすぐ後から追いかける世界有数の巨大メーカーだ。
一方、スマホでは存在感は薄いものの、数年前までは「アルカテル」の名で製品を世界各国で展開していた。スマホのパッケージをVRグラスにしたり、背面にLEDライトを埋め込み簡易的に文字やアイコンを表示できるモデルなど、ちょっと変わった製品も出していた。
しかし、シャオミなどが低価格モデルを一気に投入したことで価格競争で負けてしまったのだ。2019年からアルカテルではなくTCLブランドでスマホを販売している。
ディスプレイで高い評価を受けるTLCスマホ
TCLのスマホはディスプレイに特徴を持たせたモデルが多い。
実はTCLはサムスンディスプレイ、LGディスプレイ同様、子会社にディスプレイを製造するCSOT(TCL China Star Optoelectronics Technology)を持っている。テレビのみならずスマホのディスプレイの開発力にも長けており、高画質技術「NXTVISION」は業界でも高い評価を受けている。そのCSOTは、すでに折りたたみディスプレイを商用化しており、モトローラの「razr」に採用された。
CSOTの折りたたみディスプレイはサムスンディスプレイのものに比べ、折り目がなくすき間なくたためるという利点がある。
Flex VはチップセットにSnapdragon 765というミドルレンジモデルのものを搭載しており、製品化されれば10万円以下という手ごろな価格で出てくる予定だ。TCLはこのFlex Vを2021年に発売する予定だったが一旦延期。しかし、今年になって市場投入する意向を見せている。7万円前後で出てくれば誰もが折りたたみスマホを普通に選ぶ時代がやってくるだろう。
TCLのグローバル展開はいかに…
TCLは折りたたみスマホだけではなく、次世代スマホの開発にも注力している。5Gに対応したスマホをアメリカで次々と出しているのだ。
1月にアメリカキャリアのベライゾン向け「TCL 30 V 5G」と、T-Mobile向け「TCL 30 XE 30」の2機種を発表。ミドルレンジモデルで3万円前後で販売される予定であり、これから5Gに加入しようと考えている消費者にとって魅力的な存在になるだろう。
すでにiPhone 13は全機種が5Gに対応しているし、中国メーカーも2万円台の格安5Gスマホを出すなど、世界中で5Gの時代がやってきている。
しかし、日本のみならずヨーロッパや東南アジアでシャオミなど中国メーカーの格安5Gスマホがメジャーな製品になっているのに対し、アメリカはファーウェイやZTEの制裁などにより中国メーカーは思うように進出できていない。
TCLは中国のテレビメーカーではあるが、アメリカでのテレビの販売は長い歴史があり、ブランドはよく認知されている。TCLブランドのスマホを出してもアメリカの消費者はすぐに受け入れてくれるのだ。今からTCLが5Gスマホを出しても多くの国では競争力がないだろう。
しかし、シャオミ不在のアメリカなら、今からでも十分勝負になるのだろう。アメリカ市場を重視するTCLに対し、アメリカのキャリアも協業体制を構築している。
TCLのスマホは一時期日本でも販売されていた。もしかすると折りたたみスマホや5Gスマホが日本に上陸することもあるかもしれない。 スマホメーカーの新規参入が増えれば市場は盛り上がるし、海外の販売価格より割高と言われているサムスンの折りたたみスマホも価格が引き下がるかもしれない。TCLのスマホの今後の動きは気にしておきたいものだ。