スマートフォンで一番カメラ性能が高い製品を知っているだろうか? カメラ性能のベンチマークとして、業界で高い信頼を受けている「DXOmark」のレビューによると、2021年10月時点で最高のカメラ画質を持つスマートフォンはファーウェイの「P50 Pro」である。話題のスマートフォン「iPhone 13」が出た直後ではあるが、ファーウェイのカメラ性能の高さに揺るぎはなく、市場からの存在感が急落するなかでもその技術力の高さは健在だ。
筆者も「P50 Pro」を2021年8月の発売直後に入手し、現在日常的に使っている。「P50 Pro」のカメラのすばらしさはライカと協業したカメラのチューニングに加え、AI処理による写真の仕上げが美しいのだ。
これはほかのスマートフォンと比べると、時にはやりすぎと思える処理がされることもある。たとえば青空を撮影すると、「P50 Pro」では青さがより鮮明となり、雲もはっきりと写される。実際に目に見る光景よりも“映える”画になるのだ。
このようなAI処理された写真をSNSでシェアすると多くの高評価が集まる。人々が求めているのはその場に忠実な写真ではなく、見た瞬間に美しいと思える写真なのだ。
“カメラ性能向上競争”は静止画から動画へ
「P50 Pro」は4つのカメラを搭載している。5000万画素画素の広角カメラ、1300万画素の超広角カメラ、6400万画素の3.5倍望遠カメラでワイドから遠距離まで幅広いレンジの撮影に対応。この望遠カメラは、デジタル100倍の撮影も可能であり、遠くの木の枝で休んでいる野鳥を写す、なんてこともできる。
加えて、4000万画素のモノクロカメラも搭載。これによりコントラストにも優れた美しい写真が撮影できるのだ。「P50 Pro」のカメラが業界で一番の評価を受けるのも納得できるものである。
ファーウェイ以外のメーカーも高画質カメラを複数搭載したモデルを次々と出しているが、写真の写りはハードウェアだけではなくソフトウェアの技術にも大きく左右される。ライカとの長年の協業がファーウェイの写真仕上げを最強と呼べるレベルまで引き上げたわけだ。
しかし、スマートフォンの“カメラ性能向上競争”は静止画から動画へと、徐々に次のステップへの移行が始まっている。静止画のAI処理ではほかのメーカーの技術も十分高まっているからだ。
iPhone 13の発表会では、動画にボケを自在に欠けることのできるシネマティックモードの搭載が大々的にアピールされた。シネマティックモードは動画のAI処理でもあり、まるで映画のようなドラマチックな映像が撮影できる。
だが、これも人間の目が実際に見たものを撮影しているのではなく、見方によってはやはりやりすぎ感のある動画となる。とはいえiPhone 13のボケ動画を見て誰もがため息をついただろう。
結局のところ、AI処理したかどうかは重要ではなく、「人々が感動する写真や動画を撮れる」方向にスマートフォンのカメラ性能の進化の道は進んでいるのだ。
個性が際立つvivo、LG、ソニーのスマホカメラ
いずれ紹介したいと考えているが、vivoのフラッグシップスマートフォン「X70 Pro」は、手振れに強い5軸マイクロジンバルをカメラに搭載している。これはカメラのレンズ部分が上下左右に動き、手振れを抑えてくれる機能だ。マイクロジンバルの搭載は2020年6月発売の「X50 Pro」からで、vivoは1年前からスマートフォンカメラの動画性能の強化を進めているのである。
そういえば2020年9月に登場したLGのT字型変形スマートフォン「WING」も類似のジンバル機能を搭載していたが、LGはスマートフォン事業そのものから撤退してしまった。今もLGがスマートフォンを作り続けていれば、動画に強い製品を次々と展開していたことだろう。
このように大手メーカーのスマートフォンカメラの性能強化が続くなか、突如として伏兵とも言える製品がソニーから登場した。「Xperia PRO-I」はソニーのデジタルカメラ「RX100VII」が搭載する1インチの大型センサーを搭載。1インチセンサー搭載スマートフォンはこれまで数機種しかなく、それだけでも驚きだ。
しかし、「Xperia PRO-I」がすごいのは3インチの外付けモニターが別売され、手持ち式のシューティンググリップに取り付けることでVlog撮影用のデジタルカメラのように使えるのだ。
スマートフォンで自分を撮影する場合、これまではフロントカメラを使っていた。フロントカメラは画質が低く、背面の高画質なメインカメラで撮影した動画よりも品質が落ちるところだが、「Xperia PRO-I」は自分を撮るときは3インチモニターを見ながらメインカメラを使っての撮影ができるのだ。もはやビデオ撮影にデジタルカメラが必要なのは、望遠撮影するときぐらいであり、Vlogなど手軽な動画を撮る時はスマートフォンだけで済む時代になりそうだ。
もちろんファーウェイもこのカメラ進化には気づいており、動画機能も充実させている。「P50 Pro」が搭載するファーウェイ開発の「Haromy OS2」では、同OSを搭載したほかのスマートフォンやタブレットのカメラからの映像を切り替えて撮影できるのだ。
スイッチャーなどの機材は必要せず、手持ちのスマートフォンと三脚に取り付けたスマートフォン、あるいは自分の持っているスマートフォンと友人が持つスマートフォンなど、複数のスマートフォンをマルチカメラとして同時に使えるのである。
スマートフォンの“デジカメ駆逐”はまだまだ続く
スマートフォンのカメラの進化は安価なデジカメを駆逐してしまい、手軽なスナップ写真撮影のためにデジカメを買う人はほぼいなくなった。そして次の進化が進めば、動画撮影用にデジカメを買っている人も、やがてスマートフォンで済ませる時代がやってくるかもしれない。
スマートフォンとデジタルカメラがより融合することで、「Xperia PRO-I」のように映像技術に長けたソニーが存在感のあるスマートフォンで競争力を高めていくかもしれない。
一方で、AI技術を強化するためにスマートフォンの心臓部、すなわちチップセットを他社にまかせるのではなく自社開発する動きも加速するだろう。グーグルが10月に発表した「Pixel 6」は同社初の自社開発チップ「Tensor」を搭載した。
ファーウェイはアメリカ政府の制裁により、自社開発チップセット「Kirin」をリリースできていないが、開発は今も続けているはずだ。最近のスマートフォンの機能進化はカメラの進化にフォーカスされているが、カメラの性能アップはまだまだ止まらず、来年にはあっと驚くような機能が搭載されているに違いない。