掃除機といえばスティック掃除機が主流になりつつある。だが、それらスティック掃除機が本当に正しい掃除機か? といえば、昨今のスティック掃除機の多くが、カーペット掃除が意外と苦手! ということもあり、プロの家電レビュアー石井和美さんは疑問に感じることも多いという。ここではミーレのキャニスター掃除機「Compact C2」シリーズの「Clean Meister」を使ってみたことで、あらためて本物の掃除力がどういうものかをレポートする。
ミーレのキャニスター掃除機は吸引力がとにかくスゴイ
髪の毛やホコリが落ちていたら、パッと取り出して掃除できるコードレスクリーナーは手軽に使えてとても便利だ。バッテリーやモーターの性能が向上し、一昔前のコードレスクリーナーと比較すると吸引力や運転時間も大幅にアップ。メインの掃除機をコードレスクリーナーに変更する方も増えている。
筆者宅でも使っているが、本格的に掃除しようとすると「カーペットはもっと根元からゴミを吸ってほしいなあ」「全部屋掃除できるほどはバッテリーがもたないな……」といったストレスを感じることがある。
そんなときは、昔使っていたキャニスター掃除機を思い出す。コードは確かにちょっと邪魔だけれど、手元は軽いし、吸引力についてはやっぱりコードレスクリーナーよりもずっとパワフル。バッテリーの残量を気にすることなく、部屋中が一気に掃除できる気持ちよさ。今になって、やっぱりキャニスターのよさも捨てがたいな、と思うようになった。
そこで、「吸引力がスゴイ」と話題の海外製キャニスター掃除機を使ってみることにした。ドイツのプレミアムブランド「ミーレ」の「Compact C2」シリーズだ。
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ミーレの「Clean Meister」は、佇まいがとても美しい。深みのある色、そして丁寧な塗装、なだらかな流線型。コードレスクリーナーは出しっぱなしにして使い、キャニスター掃除機は使用しないときにしまっておく……という使い方が主流だが、ミーレの掃除機に関しては見えるところに置きたくなる。
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キャニスター掃除機なので、当然コードがある。そして、今となっては少数派になってしまった紙パック式を採用している。とはいえ、紙パック式はゴミ捨て時にゴミが巻き散ることもないので、特にアレルギー体質の方にはずっと支持されているのだ。「紙パックじゃないとイヤ」という理由でキャニスター掃除機を選ぶ方も多いので、そういう方にもぴったりだ。
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パッと見て驚いたのは、ヘッドに回転ブラシがないこと。直接吸い込むので、空洞になっている。日本で発売されている高級掃除機はヘッドについた回転ブラシがモーターで高速回転する仕組みのものが多く、汚れを掻き込みながら吸引するタイプが多い。一方、ミーレの掃除機は回転ブラシが付いておらず、空気の力でゴミを吸い取るタイプだ。
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実際に掃除をしてみると、他社の回転ブラシ式より、ミーレの標準床用ノズルの方が床に吸い付くような感覚がある。ハンドル、ホース、本体から成る流線的な設計が効率よく空気を運び、ノズルや本体の気密性も高いので、ブラシにモーターを搭載せずとも十分に効率よくゴミを吸い取ることができる。
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手元にON・OFFスイッチなどがないことも初めての体験だった。なんと本体に大きなフットスイッチがあり、そこを「踏む」のだ。
ドイツらしい合理性や堅牢性も随所に感じられる
なぜこのような構造にしているのかといえば、ドイツらしい「長く使う」という思想から。掃除機は動かして移動しながら使うので、ホース部分に配線することで断線する場合がある。パワーブラシで電源オン・オフボタンがある場合、ブラシを回転するための給電用と、電源オン・オフのために信号を送る線など、複数必要になる。そういった配線が一切ないので、長い期間使用する中で引っ張ったり、ねじったりしても問題なく、長期間使用できるのだ。
最初は恐る恐る足を乗せていたが、屈強なボディは安定感が抜群で躊躇なく踏むようになった。慣れてしまうとこの方式も意外とラクだ。
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強弱はつまみを回して調整する。レトロなつまみ式は、シンプルな構造で壊れにくい構造だ。つまみの範囲が広いので、MINからMAXまで強弱を微調整できるのも便利。床にヘッドが吸い付きすぎて重く感じる場合は、つまみで調整するほか、ハンドルの風量調節カバーを開くことで吸引力も調整できる。
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また、標準床用ノズルのフットスイッチで床に合わせて最適なモードに切り替えられる。ノズルはカーペットやラグなどやわらかい床用モードと畳やフローリング、Pタイルなど硬い床用モードがあり、切り替えて使用する。硬い床用モードでは、ヘッドの裏側を囲うようにブラシが飛び出る。
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吸引力テストではカーペットもキレイに
実際にフローリングとカーペットで吸引力テストを行った。フローリングの床には重曹とペットのトイレ砂をまいておく。ブラシがないのできちんと吸引できるか不安だったが、ブラシの幅分きちんと吸い取っていた。他社製の掃除機のように隅のゴミを吸引するためヘッドの前方が開いているわけではないので、前に大きなゴミを少し押し出してしまったが、少し持ち上げることでしっかり吸引できる。
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これまでストレスが溜まっていたカーペットの掃除。重曹をまき、手でならしてあえてカーペットの奥まで入り込んだ状態で吸引を行った。この状態では、フローリングのパワーブラシではほぼとれないのだが、1回でほぼ取り切れている。もう1度吸引したところ、キレイに落ちていた。
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吸引力はかなり高いが、手元ハンドルにある風量調節カバーですぐに吸引力を調節できる。それが可能なことで、小さめのマットは貼り付いて持ち上がったり、ずれたりすることを防ぐことができる。結果的に高速回転するブラシでこするより、カーペット上の重曹をやさしく、しっかり吸い取ってくれるので安心して使えた。ソファの下などの狭い場所も、持ち手部分を横に倒すことで奥まで届いた。
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また、付属品は付属ノズルホルダーでハンドルの接続部分にホコリ取用ブラシ、すき間用ブラシ、家具用ノズルを装着して収納できる。掃除中でもサッとソファなどの掃除ができるのは便利だ。なんとなくホコリがついて薄汚れたソファもぐんぐんゴミを吸い込んでスッキリした。
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気になったのは大きさと重さだ。コンパクトシリーズといっても外形寸法は高さ230mm、幅250mm、奥行き430mmでホース、延長管、ハンドル、標準床用ノズルを合わせると6.3kgもある。3カ所ある大きめのキャスターは滑りがよく、方向転換も簡単で掃除中には重さを感じないが、やはりシニア世帯や家に段差が多く重い掃除機が苦手という方には厳しいかもしれない。
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ダストバッグが大きく吸引力も持続しやすい
紙パック式は詰まってくるととたんに吸引力が落ちてしまうが、ミーレのフリース素材のダストバッグ容量は3.5Lとかなり大きく、ふくらみやすく、内部もゴミを一か所に溜めない構造なので、ゴミが一カ所に溜まることがなく、吸引力が持続する。日本の軽量キャニスター掃除機はダストバッグの容量が1.5L前後のものが多く、コードレスクリーナーに関しては500mL以下のものがほとんどなので、ゴミを頻繁に捨てる必要がない。ダストバックのフタが自動でしまってゴミを遮断するので、ゴミが溜まっても紙袋をポイッと捨ててしまうだけなので本当にラクだ。なお、使い捨てだが、ダストバッグはミーレの公式サイトで購入できる。
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また、排気のケアもしっかりしている。排気フィルターは微細なホコリやニオイを吸引できるHEPAフィルターを搭載。床のホコリを巻き上げないように本体上側に排気口がついているが、掃除中も掃除機独特のニオイも気にならず、快適だった。
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電源コードもフットスイッチを軽く踏むと一気にスルスル~ッと自動的に巻き取られる。一般的な掃除機では途中でひっかかり、いったんコードを引き直すことも多いが、毎回一度スイッチを押すだけで本体に収納される。コードについてはキャニスター掃除機特有の面倒くさいところで見逃されがちだが、しまいやすさは大事なポイント。コードまわりの煩わしさを感じることがないので、一般的な掃除機よりも掃除を始めるときのハードルが低く、こまめに掃除できた。
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今回、改めてキャニスター掃除機の本物の掃除力を実感した。サッと使えるコードレスクリーナーの手軽さはふだん使いにちょうどいいが、バッテリー残量を気にすることなく、カーペットのゴミもガンガン吸えるキャニスター掃除機は頼もしい。特に『Clean Meister』はシンプルな操作性と凄まじい吸引力が魅力。さらに、天井から棚の上、階段、ベッドの下など、ありとあらゆる空間をきっちり掃除できるアタッチメンの豊富さも便利の一言。掃除完了後のゴミ捨ても紙パックにゴミがたくさん溜まるので、1ヶ月くらい溜め込んでも臭いも気にならない。
とにかく部屋という空間をこれでもか! というほどちゃんときれいにしたい。アレルギー持ちの家族などがいて、目に見えないレベルのホコリもしっかり取り去りたい。そんな本気で掃除をしたい人にとっては、ミーレの「Clean Meister」がきっと心強い味方となってくれることだろう。
製品貸与:ミーレ