ランニングをするとき、着地時にかかる足への衝撃は体重のおよそ3倍だと言われている。体重60kgの人であれば180kgの負荷が着地時にかかるということ。運動不足で筋力がなく、そのうえ体重過多の人が突然長い距離を走ったら、膝などを痛めてしまうのは当然といえば当然なのだろう。
ヒザを守ってくれる「サロモン」のシューズ
足底筋膜炎やアキレス腱炎、シンスプリントなど、慢性的に脚のトラブルに悩まされているというランナーは多い。特に膝の外側に痛みが出る腸脛靭帯炎は、ランナー膝、ランナーズニーと呼ばれるほど、ランニングと関係が深い障害だ。
健康維持やダイエットを目的に始めたランニングでケガをしてしまうのは、とてももったいないし、走ることが好きなランナーにとって“走れない”のは大きなストレスだろう。
最先端のテクノロジーを搭載した高機能のランニングシューズは、速く走ること、長く走ることをサポートしてくれるが、ケガなく走ることを目的とするならば、それに適したシューズを選ぶことが助けになってくれるかもしれない。
サロモンの「PREDICT(プレディクト)」シリーズは、“膝を守る”ことをコンセプトに、フランスの医療機関との共同で開発されたランニングシューズだ。
サロモンの調査によれば、膝のトラブルがランニングにおけるケガの42%を占めているそうで、多くのランナーが抱える頭痛のタネ(痛いのは膝だけれど)を解消することが製品開発の核とされた。
「PREDICT」シリーズのシューズの最大の特長は、特許を取得している10分割されたボトムユニットだ。脚(股関節から下全体)の動きに着目して開発されたもので、脚が動くことによって起こる筋肉や腱の自然な伸び縮みを制限しないように10個の独立したパーツが柔軟に変形する。これにより、足や脚が本来持っている機能が十分に発揮され、膝などの関節にかかる負担が軽減されるという。
もちろん、ランニング時に脚を保護するためには、クッショニング性能や安定性能などの機能も重要な要素だが、「PREDICT」シリーズは視点を変え、足と脚の機能性を最大限引き出すことに重きを置いたのだ。
今シーズン、シリーズの第2世代となる「PREDICT 2」と「PREDICT SOC 2」がリリースされた。「PREDICT 2」は、特許取得技術の可変ソールはそのままに、INFINITIRIDE(インフィニティライド)という名の耐久性に優れたTPU発泡フォームをミッドソールに採用。一方の「PREDICT SOC 2」は、ニットアッパーの通気性が向上。ヒールパッドの増量により、足首周辺のフィット感、快適性が高まっている。
「PREDICT SOC 2」を履いて、数回に分けて30kmほど走ってみたが、すぐに実感できるのは、足の筋肉を使えている感覚だった。足とシューズの一体感がありながらも、足、特に足裏が自由で、普段よりも解放感がある。おそらく、足のアーチが持っているクッション作用やバネ作用、バランス作用も引き出されているのだろう。もちろんケガ予防に繋がるのだろうが、足を鍛え直すという目的で着用するのも良さそうな印象だ。
ナイキが目指す「怪我ゼロ」への取り組み
ケガは本当に避けられないのかという疑問から開発がスタートし、“怪我ゼロ”を目指す第一歩として2020年に登場したのが「ナイキ リアクトインフィニティ ラン」だ。
ケガの軽減というのは、パフォーマンスの向上よりもある意味で難しい問題だとも言える。パフォーマンスは測定して数値化することがそれほど困難ではないが、それに比べるとケガやトラブルを捉えるのは容易ではないからだ。
従来のナイキのランニングシューズが、主にケガの軽減のためにアプローチしてきたのは、オーバープロネーションの抑制だった。着地時に踵が内側に過度に倒れ込むオーバープロネーションは、腸脛靭帯炎、シンスプリント、アキレス腱炎などの原因になるため、それを防ぐために、シューズで足の動きをサポートしてきた。
ケガの原因がプロネーションにあれば、モーションコントロールだけでも十分な対策だが、それだけでは抑制できないケガもある。別の解決策を探るために、アスリートの声を聞くという原点に立ち返り、ランナーたちがどんなことを気持ちいいと感じるのか、正しいと感じているのかをリサーチするところから、シューズの開発を始めたという。
リサーチの結果わかったのは、ランナーたちはクッショニング性能の高いシューズを心地よい、正しいと感じているということ。
そこで「ナイキ リアクトインフィニティ ラン」は、ミッドソールにリアクトフォームを採用したハイクッショニングモデルである「ナイキ エピック リアクト フライニット 2」よりも、フォームの量を24%アップ。加えて、ソール形状をロッキングチェアのようにし、さらにスムーズな足運びを可能にした。
226名の男女を対象にした12週間に及ぶテスト(ランニングトレーニングプログラムに参加)では、モーションコントロール性能を重視した「ナイキ エア ズーム ストラクチャー 22」と比較して、ケガ(参加者の判断により、ランニング関連の痛みで、3日もしくはそれ以上連続してランニングができなかったこと)が52%軽減したという。
ちなみにこのテストでは「ナイキ エア ズーム ストラクチャー 22」を着用したランナーの30.3%がケガを経験した一方、ナイキ リアクトインフィニティ ラン」を履いたランナーのケガの発生は14.5%にとどまっている。クッショニング性能の高さは、ケガの抑制にかなり貢献してくれるということなのだ。
現在、ランナーがケガをせず速くなることをサポートするためのシューズとしてナイキが展開しているのは、「ナイキ リアクトインフィニティ ラン2」と、「ナイキ ズームX インヴィンシブル ラン」の2モデル。どちらのシューズも、「ナイキ リアクトインフィニティ ラン」と比べてケガの発生率に統計学的な差異は見られないという。
「ナイキ ズームX インヴィンシブル ラン」の方は、エネルギーリターンに優れたフォームを採用しており、より推進力を感じられるのが特長だ。
実際、どちらもシューズも高いクッショニング性能が感じられ、足運びも滑らかに行える。「ナイキ リアクトインフィニティ ラン」については、ハーフマラソンのレースでも着用したが、かなり快適に走ることができた。
アプローチはブランドによって異なるが、速さよりも安全性を追求したシューズは、あなたの健康的なランニングライフをしっかりとサポートしてくれるはずだ。