サムスンが、折りたたみ可能なGalaxyを2機種発表しました。1つは開くと7.6インチの大画面になる「Galaxy Z Fold3 5G」。もう1つが、いわゆるガラケーと呼ばれる折りたたみ携帯電話のように閉じることができる「Galaxy Z Flip3 5G」です。フォルダブルというと、やや特殊なスマホと思われるかもしれませんが、両機種はこれまでの端末とは一味違います。誤解を恐れず言えば、メインストリームとして一般層にも広がる可能性を秘めていると感じました。その理由を紹介していきましょう。
理由1:auに加えて、ドコモでも買えるように
1つは、販路の拡大です。これまでのGalaxy Z Fold、Flipは、au限定の製品になっていたこともあり、その他のキャリアを契約しているユーザーは蚊帳の外に置かれていました。もちろん、番号ポータビリティを使ってauに移る手はありますが、キャリアの変更はそれなりに手間がかかること。解約金がなくなるなど、以前より環境はよくなってはいますが、IDの取得やメールアドレスの変更などの手間が残っているのも事実です。
これに対し、新機種はauに加えてドコモが取り扱いを表明しています。単に1つキャリアが増えただけと思われるかもしれませんが、販路の拡大という観点でのインパクトは決して小さくありません。全国各地に張り巡らされたドコモショップ網の数は約2000店。ここには家電量販店は含まれていないので、ドコモのスマホを取り扱う店舗数はさらに多い計算になります。各ドコモショップが最低1台販売しただけでも2000台になると言えば、その影響力の大きさが分かりやすいでしょう。ありていに言えば、一般的なストレートタイプのGalaxyと同じように買えるということです。
理由2:競合のハイエンドスマホと横並びの価格設定
そうは言っても、フォルダブルスマホはこれまでかなり高額で、色々な場所で売っていても気軽に手を出せる製品ではありませんでした。一方でサムスンは、Galaxy Z Fold3/Flip3 5Gで価格も大胆に引き下げてきています。これが、両機種がこれまで以上に売れると思う、2つ目の理由です。グローバルでの価格は、Foldが1799.99ドル。より広い層を狙ったFlipに至っては999.99ドルと、ついに1000ドルを下回りました。日本では、ドコモがすでに価格を発表していますが、前者が23万7600円、後者が14万8896円です(auは価格未発表)。
1ドル=110円で計算するとやや海外より高いというのが率直な印象ですが、後述するように、2機種には日本向けのカスタマイズも加えられています。また、予約キャンペーンも実施しています。両機種とも、購入前に予約をするだけでノイズキャンセリングに対応した「Galaxy Buds Pro」がプレゼントされます。これに加え、Galaxy Z Fold3 5G限定の特典として、専用のSペンやSペンを収納できる機能のついたケースも用意されています。Galaxy Buds Proは約2万円の製品で、これを加味すると海外との価格差が縮まります。
価格面で注目したいのが、Galaxy Z Flip3 5Gです。こちらは、14万8896円で金額だけを見るとまだまだ高いように見えますが、昨今のハイエンドモデルと比べると、同等のレベルまで下がっています。例えば、ソニーの「Xperia 1 III」は15万4440円、シャープの「AQUOS R6」は11万5632円と、ハイエンドモデルは軒並み10万円を超えています。アップルの「iPhone 12 Pro」も、256GB版は14万2560円。こうしたモデルと価格が並び、横並びで購入の検討ができるようになったことは大きなトピックと言えるでしょう。「折りたたみスマホ=高い」の図式が崩れたからです。
理由3:防水・防塵対応でおサイフケータイも使える
3つめの理由として挙げたいのが、機能の強化です。中でも、日本版がおサイフケータイに初めて対応したインパクトは大きいと考えています。調査にもよりますが、おサイフケータイの利用率は20%前後と決して高くはありませんが、キャッシュレス決済という日々の生活に密着した機能だけに、一度使うと手放せなくなります。おサイフケータイがあっても購入する理由にはなりませんが、ないと比較・検討の対象から外れてしまうと言い換えることもできるでしょう。これまでのフォルダブルスマホは、海外版に最小限のカスタマイズを加えただけでしたが、Galaxy Z Fold3/Flip3 5Gは国内仕様をしっかり満たしているため、より買いやすいスマホになっています。
日本向けというわけではありませんが、2機種ともフォルダブルスマホとして初めて防水・防塵に対応したのも、ユーザーの購入を後押しすると思います。フォルダブルスマホは、折り曲げる画面を支えるためにヒンジ(蝶つがい)が必要になり、ディスプレイが浮いてしまうこともあって、防水・防塵への対応は難易度が高いと言われていました。そこでサムスンは、ヒンジを境にした上下(左右)それぞれを防水にしたり、ゴムや液剤で空いたスペースをふさいだりすることで側面の穴をふさいだりと、様々な工夫を施すことで防水を実現しました。
ゲリラ豪雨に代表されるように、日本は急な雨が降りやすい気候。水濡れが大敵な電子機器に防水仕様を求めるのは、生活環境を考えると自然なことと言えます。だからこそ、フォルダブルスマホだからという理由で諦めざるをえなかった防水に対応しているインパクトは大きいと言えるでしょう。
機能面では、Galaxy Z Fold3 5GがSペンによる手書きに対応しているのも、大きな進化です。サムスンは、これまで秋冬モデルとして投入してきたGalaxy Noteシリーズを終了させ、フラッグシップモデルのGalaxy SシリーズとフォルダブルのGalaxy Zシリーズにラインナップを集約しました。手書きの精度が高く、大画面モデルの先駆けとなったGalaxy Noteですが、一般的なスマホと形状は同じで、サイズには限界があります。横幅が限られてしまうため、ノートを開いたときのように、広々と文字や絵を書くのが難しかったのも事実です。
一方のGalaxy Z Fold3 5Gは、冒頭で述べたように開けばディスプレイサイズは7.6インチまで拡大します。Galaxy Note以上にノート的な端末で、Sペンとの相性は抜群に高いと言えるでしょう。実機で手書きを試してみた筆者も、その書き心地のよさに興奮しました。もちろん、大画面を生かしたマルチウィンドウ機能や、半開きの状態で使える「Flexモード」など、フォルダブルスマホならではの便利な機能も健在です。
フォルダブルスマホを普及させる起爆剤
このように、普段使いに欠かせない機能に続々と対応したうえで、フォルダブルスマホならではの使い勝手にも磨きをかけてきたのがGalaxy Z Fold3/Flip 3 5Gと言えるでしょう。販路の拡大や手に取りやすくなった価格と相まって、これまで以上にフォルダブルスマホの普及は進んでいくことが予想されます。徐々に進化してきたGalaxy Zシリーズですが、Galaxy Z Fold3/Flip3 5Gの2機種は、フォルダブルスマホの転換点になるような気がしてなりません。