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「志」を旗頭に、新たな価値を量産する

手仕事のすすめ。デジタルとアナログが楽しい

author: 長島 聡date: 2021/08/29

VIVE、Oculus、HoloLens、insta360、DJI、Looking Glassなどなど。この4-5年、イケてる様々なデジタル機器に触れてきた。とにかく、まず使って、体験してみた。どれも脳みそをかき混ぜてくれるインパクトのあるものばかりだった。すべては、本サイト執筆陣のひとりで、私のデジタルガジェットの師匠であるGOROman氏がもたらしてくれた刺激のお陰だ。まだまだデジタルネイティブの領域には踏み込めていないが、それぞれの機器のメカニズムにまで踏み込み、使い方を妄想できるようになってきた。結構、夢中になる。新しいものが出てくる度に、何ができるようになりそうか、考えるのが楽しみな状況だ。

工場のデジタル化と、
ものづくりの暗黙知

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本業では、この10年近く、インダストリー4.0に取り組んできた。デジタルの力を借りて、異次元の視野と圧倒的な機動力を身につける取り組みだ。工場の様々な装置、材料や仕掛品、製品、働く人々といった、ものづくりの現場にある「ありとあらゆるモノや人」をデジタル空間に再現して「何が忙しいか」、「どうすればムリ、ムダ、ムラが無くせるか」などをシミュレーションしてきた。どの装置を誰が操作して、どんな製品を作るか。どんな順番でそれぞれの製品を作ったら、それらを欲しい人たちを待たせないか。何を自動化すれば人が人にしかできないことに集中できるか。それぞれの製品や工場の設計をどう変えたら、工場全体で充足できる顧客のニーズを増やせるか。

シミュレーションを重ねていくと、それぞれの条件下で、最適な方法論は見つかる。でも実際は、シミュレーション通りに行かないことばかりだった。例えば、ロボットを導入しても、人のように巧くモノを掴んでくれない。画像で傷をチェックしようとしても、光の加減で簡単に見落とす。シミュレーションで考慮していなかったメンテナンスで、計画が破綻する。在庫データが実際の在庫の数と違っていて、生産が止まる。トラブルはいくらでも出てきた。これまでは現場が、人ならではの柔軟な対応力に支えられていたからこそ、大事に至らなかったのだ。ものづくりの現場で過ごす中で培っていた知恵や暗黙知が、現場には間違いなく息づいていると実感した貴重な体験だった。

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暗黙知をシミュレーションに込めることができると、状況はかなり変わった。現場の声を吸い上げれば、うまく動かないであろうことを予測しながら、シミュレーションを動かすことができた。しかも、特に最初はかなりシンプルなシミュレーションで十分なことが分かった。その方がスムーズに工場を動かすために大事なことが何かを理解することもできた。シンプルにすることで、工場の全体に手触りを持てるようになったのだと思う。また、これにより、新しいデジタルガジェットを試す余裕も出てきた。失敗しても全体の作業の流れを妨げないところに入れて、試すことができるようになった。自動化で上手く時間の余裕を生み出しておくと、現場が楽しみ、小さな活気が生まれるようになった。なかなかの好循環が生まれたのだ。

ゲームの世界で発見した
現実世界との共通項

工場の話ばかりではつまらないので、話題を変える。昨年秋、ゲームの世界で、工場の現場やシミュレーションと似た感覚を感じられるものに出会った。Nintendo Switchの「マリオカート ライブ ホームサーキット」だ。コンピュータやVRの画面の中に閉じ込められていたゲームの世界が、現実の世界と融合を果たしたのだ。自分の部屋にサーキットを作れる。そこでカートについたカメラの映像を見ながら、実物のラジコンを走らせる。コントローラの画面には現実の画像に加えて、マリオの敵がたくさん出てくる。それらを避けながらコースを進む。現実に障害物はないのに、敵にぶつかるとカートは止まる。一方、現実の世界では、絨毯とフローリングではカートの走り方が違う。糸ゴミなどを踏むと大変だ。タイヤに絡みつく。夢中になると、現実とバーチャルのどちらで起きた問題なのか、一瞬分からなくなる。

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Z世代は、デジタルネイティブ、ソーシャルネイティブと言われている。正直、とても羨ましい。特に、インスタやTikTokなどを自在に操る様子をみていると、時代の違いをひしひしと感じる。i-modeで初めて触れた世界観がこんな短期間で、ここまで進化するとは、全く想像できていなかった。アナログネイティブ世代からすると隔世の感がある。でも、ふと思った。これからの世界、アナログネイティブとデジタルネイティブの交わりが必要なのだ。幸いなことに、日本にはそれぞれに得意な人たちがいる。残念なのは、アナログとデジタルの交流がまだまだ少ないことだ。人やモノ自体は間違いなくアナログの世界に存在するものだ。だから、アナログにも手触りがいる。一方、そうしたアナログの経験を数多くの人に伝えたり、新たな妄想や創造をたくさん楽しんだりするにはデジタルが不可欠だ。

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そういえば、GOROman氏の職場は、単にデジタルガジェットが溢れているだけではない。分解されたガジェット、改造されたガジェット、なぜかまだ動いている昔のPCなどなど、所狭しというか、持ち主にしか分からない状況で置かれている。工具やハンダゴテなどもあちこちにある。アナログとデジタルが散乱しているイメージだ。一方、私自身はというと、最近はたくさんの仲間と家づくりをしている。古民家の伝統工法でつくる四畳半の家だ。“ほぞ”や“ほぞ穴”を使って、釘は使わない。アナログを極めている方と触れ合うことで、アナログの感度を高めているのだ。それから、ものづくりの巧みの技を子供たちに体験してもらう「アソビバ」づくりも進めている。その傍らで仮想通貨やNFTの話にも口を出している。デジタルとアナログ、垣根などない。好きなものを、好きなように、好きなだけ触れてみて欲しいと思う。

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きづきアーキテクト代表
長島 聡

早稲田大学理工学部にて材料工学を専攻し、各務記念材料技術研究所(旧・材料技術研究所)にて助手として、研究に携わるとともに教鞭も執る。欧州最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーに参画し、東京オフィス代表、グローバル共同代表を務める。2020年には、きづきアーキテクトを設立。「志を旗頭に得意技を集め、新たな価値を量産する」をコンセプトに、共創を梃子にした事業創出の加速化を目指す。経済産業省、中小企業政策審議会専門委員など政府関係委員を歴任。スタートアップ企業、中小企業のアドバイザー、産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト WG3 産業構造転換分野 委員、Digital Architecture Design Center アドバイザリーボード、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特任教授などを務める。
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