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スポーツシューズの未来が見えた!

アディダスが挑戦し続ける、3Dプリント技術を用いたシューズ作り

author: 神津文人date: 2021/06/28

間もなく、アディダスより最新の3Dプリント技術を用いて新たに開発されたボウタイ(蝶ネクタイ)型の格子状ミッドソールを搭載した「4DFWD(フォーディー フォワード)」の国内販売がスタートする。新作シューズの詳細をお伝えする前に、少しアディダスと3Dプリント技術の歴史を振り返ってみたい。

アディダスと3Dプリントの歩み

アディダスの3Dプリント技術を用いたシューズが初めて披露されたのは、2015年のこと。3Dプリントのランニングシューズ用ミッドソール「Futurecraft 3D(フューチャークラフト スリーディー)」が試作品として発表され、その斬新なスタイルと未来への期待から注目を集めることになった。

そして、2016年にはアディダスとして初めて3Dプリント技術を使用した「3D RUNNNER(スリーディー ランナー)」が商品化。ロンドン、ニューヨーク、東京の3都市にて足数限定で発売され、話題になった。

2017年4月には、アメリカの3Dプリンターメーカーのカーボン社とパートナーシップ契約を締結。同社の3Dプリント技術を活用したシューズ「Futurecraft 4D(フューチャークラフト フォーディー)」のリリースが発表され、これを機に進化のスピードが速まっていく。

日本国内で、アディダスの3Dプリント技術を搭載したシューズが多くの人の目に触れたのは2018年11月、「ALPHAEDGE 4D(アルファエッジ フォーディー)」の登場時だと思われる。

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「アルファエッジ4D」に搭載されたミッドソール“アディダス 4D”は、アディダスが17年に渡って蓄積したアスリートデータの分析結果をもとに、Digital Light Synthesis(デジタルライト合成)テクノロジーを活用して開発されたもので、UV硬化ポリウレタン混合樹脂を光と酸素で固めて作り上げられている。このデジタルライト合成により、マイクロメーター単位でのデジタル設計が可能になり、複雑な構造をもつミッドソールを作れるようにもなった。

また、「アルファエッジ4D」に採用された“アディダス 4D”の入り組んだグリッド構造は、バネのような推進力と、優れた着地衝撃の緩衝を両立。一般的なフォーム素材よりもやや硬さがあるが、その分、安定性が高く、横方向の動きにも強いものだった。

さらに、2020年には“アディダス 4D”を搭載した「4D RUN(フォーディー ラン)」というランニングシューズも登場している。

500万を超える中から選ばれた「ボウタイ」の形

そして今年5月に発表され、間もなく発売されるのが「4D フォワード」だ。この“4Dフォワード”は、新たに作り出された“アディダス 4D”の次なるステップとなるミッドソールテクノロジーの名前でもある。

“アディダス 4D”の発表以降、さらにさまざまなテストと、アスリートから得られたデータをもとにしたチューニングを繰り返し、500万パターン以上の格子構造の中から、ボウタイの形をした“FWD CELL(フォワード セル)”と呼ばれる格子を組み合わせたものが選ばれた。この“フォワード セル”の集合体こそが、“4Dフォワード”だ。

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“4Dフォワード”の開発期間中、各種の生体力学テストがカルガリー大学で実施され、アリゾナ大学では最先端の認知機能試験が行われたという。機械的な試験条件下において“4D フォワード”は、従来の4Dミッドソールと比較して、垂直方向の衝撃を水平方向への前進運動に変換する力が3倍以上になり、クッション性は23%増加している。また、バイオベースの素材を39%利用し、サステナビリティに配慮されている点も見逃せない。

アッパーには、リサイクルポリエステルを一部利用したプライムニット+を採用。マッピングデータに基づいて部位ごとに密度を変えることにより、計算し尽くされたフィット感を実現している。

デイリーランニングに向いている履き心地

実際に「4D フォワード」に足を通すと、まず感じるのはアッパーの心地よいフィット感。ソックスのように足をやさしく包み込んでくれる。

走り出すと、すぐに高いクッション性が感じられた。特に後足部は、クッション性を重視した設計だと思われる。改めて、「アルファエッジ4D」とも走行感を比べてみたが、接地感は「4D フォワード」のほうがかなりソフトな印象だ。着地後は前方への重心移動をサポートしてくれるが、強く押し出されるような感じや、上方に跳ねるような感覚はなく、ナチュラルな前進力が得られる。

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もちろん、3Dプリント技術で作られたミッドソールを搭載している「4D フォワード」は、アディダスを代表する“ブースト フォーム”などのフォーム系のミッドソールを採用したシューズとは履き味が異なる。従来のシューズと比較すると足裏が感じる感覚がとてもユニーク。自分の走りに合わせて、ミッドソールが適切な形に姿を変えているような不思議な感覚がある。加えて、最先端のものを履いているという高揚感も出てくる。

フルマラソンのような長距離よりも、5~10km程度の距離をデイリーにランニングを楽しむための設計ということなので、多くのランナーが3Dプリント技術を駆使した最先端のランニングシューズの履き心地を堪能できるはずだ。

3Dプリント技術がシューズを進化させる

3Dプリント技術を使ったシューズの開発は、木型や金型が不要になるため、通常のシューズよりも短いサイクルでテストシューズを作ることができる。また、一般的なミッドソールは素材の高度や密度を調整することしかできないが、データに基づいて構造をチューニングすることも可能だ。

数年前、複数のスポーツブランドが3Dプリント技術を使ったミッドソールを搭載したシューズを、小ロットリリースしていた時期があったが、継続的に商品展開はされていない。この分野でアディダスが抜きんでているのは間違いないだろう。今後の進化にも期待したい。

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ライター・編集者
神津文人

雑誌編集者を経てフリーランスに。「Tarzan」などのヘルス&フィットネス系メディアや、スポーツの領域で活動中。「青トレ」(原晋/中野ジェームズ修一著)、「医師も薦める子どもの運動」「医師に運動しなさいと言われたら最初に読む本」「60歳からは脚を鍛えなさい」(中野ジェームズ修一著)、「100歳まで動ける体」(ニコラス・ペタス著)、「肺炎にならない!のどを強くする方法」(稲川利光著)、「疲れない体になるライザップトレーニング」(RIZAP)などの書籍の構成も手掛けている。趣味は柔術、ときどきランニング。
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