ラップユニット・chelmicoのRachelさんによるエッセイ連載がスタート!
2025年にソロ活動を本格始動したほか、さまざまなポッドキャストのパーソナリティを務め、DJとしてのイベント出演(通称・DJ行為)にも積極的。日々、全力で試行錯誤しているRachelさんが、大小さまざまな“やったことないこと”に挑戦。その中で感じたことや、“やったこと”が1つ増えた景色について綴ってもらいます。初回のテーマは、「レンタカーで富士吉田まで行く」。

Rachel
2014年にMC・Mamikoとラップユニット・chelmicoを結成。2023年ごろからプロデューサーのESME MORIと楽曲を作り始め、2025年にソロプロジェクトohayoumadayarouも本格始動。楽曲リリースを軸に、ライブ活動も試行錯誤しながら挑戦している。DJとしての活動を同名義でやるか、牡蠣姫(かきき)でやるか悩んでいる。
Instagram:@ohayoumadayarou
X:@ohayoumadayarou
やったことないことをやってみる
「デジタルデトックス」の記事が好評で、好評というか伝説で、それは言いすぎなんだけど少なくとも俺の周りでは非常に話題になったこともあり連載を始めることになったよ。経験の少ない私に依頼をしてくれるなんて大抜擢だよね。Beyond magazine、止まんねーな。2年前に占い師の方に「エッセイに向いている」と言われたことがあり、連載の話をいただいた時に引き受けようかやめておこうか迷わなくて済んだよ。ありがとな、dainmt(占い師・敬称略)。ありがとな、Beyond magazine(この記事を連載している媒体・敬称略)。

さて肝心の連載の内容はというとずばり「やったことないことをやってみる」! 以前私がXに「やったことないことをやるとやったことないことが減っていいよ」とポストしていたのを見て(優秀な編集者は、当該ポストのスクリーンショットを貼ってくれるだろう)、企画にしてくれたみたい。

自分でポストしたことだけどこれは本当にそうだし、年齢を重ねるにつれてやったことないことが減ってきている気がしていたのでそんな自分の毎日に新しい風を吹かせる良いキッカケになるといいな。どんどんチャレンジしてこうよ。
ってなわけで初回の今回は「運転して、県外の行きたかったお店に行ってみる」! 6月に免許を取ってから今までで、一番長い時間のドライブに挑戦したよ!
初心者マーク、富士吉田へ
とここで、簡単に俺の運転バイオグラフィーを。6月に、山形にあるドライビングスクールに免許合宿へ行き、免許を取る。山形から帰ってきて初めて運転した都内の道路事情に衝撃を受け、週に一度ほど運転を手伝ってくれる友人知人たちの指導を受け練習を続けている。駐車に課題を感じているがYouTubeなどで駐車のコツ動画を視聴し粘り強く取り組んでいる。都内下道に限らず首都高や第三京浜など、その活動のフィールドを広げている。
と、こんな具合でしょうか。練習は頑張っているのだけどまだまだ1人で運転するのは緊張する感じ。なので今回も、助手席に運転できる人に乗ってもらって挑戦をすることにしたよ。

挑戦を手伝ってくれたのは写真家のRio Watanabe(以降、りおさんと呼ぶ)。りおさんは私のアイコンにしてる写真やソロ名義のジャケ写などを撮ってくれている人だよ。なんで手伝ってもらうことに決めたかというと、今日の目的地がりおさんの実家だから!
「LONGTEMPS」(ロンタン)は富士吉田市にある家具屋さん。ここが実家だとりおさんから聞いてずっと行ってみたかったんだ。富士吉田といえばあのドラマ「ホットスポット」の撮影が行われている土地でもあり、ワクワクが止まんねえよ。
当日はタイムズカーシェアで借りた車でドライブしたよ。便利なサービスだよなぁ。持参した初心者マークをビタッと貼り付けていざ出発!

エンジンをかけてすぐにガソリンが少ないことに気がつく。やべえ。私給油した事ないよ!ということでさっそく初めての給油チャレンジ。少なめのメーター、なんか異様に気にならない?
運転慣れてる人はそんなことないんだろうけど、もし今ここでガソリンなくなったらどうしよう! ってなる。初めての給油チャレンジはりおさんが優しくやり方を教えてくれたので大きなトラブルもなくクリアした。給油をするところに並行に駐車するのはうまくできなかったけどな。最初だから許してくれい。
飛び出せハイウェイ
そのまま都内の道を走って高速に乗る。都内の道(というかどこもそうなのか?)は、いきなり右しか行けなくなったり左しかいけなくなったり、車が駐車したりしていてそれを避けたり正しい道を選びながら進まなくてはならないので常に気を使う。歩行者も多いし、自転車とLUUPはなぜそんなに車と車の間を自信満々に運転しているのか不明だ。言っとくけど、危ないぞ。俺のような初心者にはかなりハードモードだ。さっさと高速に乗ってしまいたいが、合流なんかもまだまだ普通に怖い。常にどこかに意識を向けながら無事に高速に乗った。

運転という行為はマルチタスクの頂点だと思う。なぜ平気でこんなことをやっているのだろうか。周りの車たちに尊敬が止まらない。前に入れてくれてありがとうの気持ちを込めてハザードランプを点灯させたいが、それどころではない時もある。初心者マークに気を遣ってくれて、みんなありがとう。高速に乗ってしばらくは少し混んでいたので進みが遅かった。あんまりスピード出すのも怖いのでそれはそれで助かるんだけど。走っても走ってもずっと東京だった。まだ府中かよ、みたいな。(府中の悪口ではございません。)

そんな中でもりおさんは最近あった出来事なんかを話してくれたり、音楽もかけてくれたから全く退屈なんてしなかった。りおさんのお父さんはLeinaが好きらしく私も大好きなのでかけてもらったりして、一緒に口ずさみながら運転した。りおさんは名前は知ってるけどしっかり聴いたことないアーティストをたくさん知っていてそれらを次々にかけてくれたから知らない音楽を知る良い機会になったよ。世の中には素敵な音楽が沢山あるねえ。
それから、初めて自分の運転でSAにも入った。マジでマジでトイレ行きたかっただけなので特に買い物もせず出発。少し混雑していた道を抜けたから、ずっとかけてもらうチャンスを狙っていたくるりの「ハイウェイ」もかけてもらった。ハイウェイチャンスは大成功。もう高速道路ってこの曲のためにあるんじゃねえか。
快晴で、山で。高速道路ってスピードも速いし、アゲアゲなイメージもあるけどその点くるりのハイウェイってかなり革新的な気がするぞ、という話もしたりした。すげえよなあ、あの曲。そのあともくるりを何曲か聴いて、やっぱりもう一回ハイウェイかけてもらって、おかわりハイウェイにも成功した。これから、高速道路に合う音楽を見つけていけると思うと楽しみだよ。

ずっと続く山の景色の中を走っていくと富士急ハイランドも見えてそれはそれは楽しい気持ちになった。遊園地が大好きだ。私がときメモのヒロインだったら、遊園地に連れて行っとけば簡単に付き合えると思う。りおさんと「戦慄迷宮入ったことある?」とかなんとか話してそれもすごく楽しかった。いつか自分の運転で富士急ハイランドも行きたいな。

河口湖で高速を降りて、富士吉田に着いた。サイドミラーをチラッとみるとでっかいでっかい富士山がそこにいて、やっぱ富士山ってほかの山とは違うことをハッキリ感じたよ。でけえよ。すげーよ。商店街に入る前にりおさんが「観光客が富士山の写真を撮りたくて飛び出してくることがあるからゆっくり進んでください」と注意してくれた。こういう話を聞くと、地元の人だなぁという感じがしてグッときた。
少しだけゆっくり進むとすぐにロンタンはあった。隣に駐車場があって、4、50回切り返して無事駐車。ついに着いた! 念願のロンタンだ!
すごいスピードで、すだち蕎麦
家具屋さんとはいえりおさんの実家。ドキドキしながら入るとご家族が優しく迎え入れてくれた。りおさんが次々に紹介してくれる。みなさん本当に素敵な家族だった。荷物を置いたらすぐにご飯を食べることにした。お蕎麦屋さんがあるよと教えてくれたのでそこに行こうと言うと、ご家族がすぐに電話をしてくれてスムーズに入店できた。優しすぎる。ロンタンを出る直前にお母様から「すだち蕎麦があるよ」という情報をキャッチ。そういうことなら、すだち蕎麦にするしかねえよなあ。

「而今庵」はロンタンから歩いてすぐにあった。女性がインカムを使って(ホールを)ワンオペでバリバリ働いていてカッコよかった。ちょっとした名言のポスターや飾り付けがあたたかい。テーブルにあるポットのお茶もあたたかい。サイドメニューも豊富で悩んだけど、すだち蕎麦を2つと、ホタテの天ぷらを注文した。もう昼の営業が終わりかけだったからかすごいスピードで出てきた。それをすごいスピードで食べた。現場みたいな速さで食べた。もっとゆっくり食べれば良かったね2人で笑った。美味しかったからしょうがないね。

ロンタンに戻って、早かったねと驚かれる。なんとなく恥ずかしくて「お蕎麦がすぐ出てきたんですよ~」とミニ嘘をつく。その流れで(?)、奥のテーブルでお茶とシャインマスカット、小さなゼリーを振る舞ってもらう。少し暑いなと思っていたらお祖母様がうちわまで出してくれた。竜宮城ぐらいもてなしてもらった。ありがとうじゃ足らないや。

胸がキュッとなる、可愛いものに囲まれて
一息ついて、ゆっくり店内を見て回る。ツバメのマークが入ったお皿や見たこともないくらい小さいキャンディの形をしたクッキー型、形の違う手編みのカゴや茶色いまあるいお弁当箱(りおさんが学生時代に使っていたらしい)など、見ているだけで胸がキュッとなる可愛いものたちでいっぱいで、外に出たくないくらいだった。
2階は土足禁止で、イカしたチェアやソファ、サイドテーブルがたくさんあった。これが家にあったらどんな風だろうと想像して楽しかった。なんと、隣にも別の家具コーナーがあってそこには大きい机やタンスなどが並んでいてその区画も本当に良かった。もう少し覇者になったらこんなテーブルを家に置きたいもんだ(金を稼いだら覇者ということではないが面白いと思って言っている)。

家具を見ていると、りおさんのお母様が「サイン書いてください」と黄色くて可愛いノートを2冊持ってきてくれた。光栄すぎるよ。サインを書いている途中私のソロ名義の楽曲「mo osoi」を口ずさんでくれてかなり恥ずかしくそしてかなり嬉しかった。

一通り店を回ったあと、目に入った布を2枚と、カップを2つ購入した。布は富士吉田の織物とのことで、色使いが綺麗なのとガッシリした手触りが頼もしくて気に入っている。カップは色がどれも素敵で悩んだけどクリーム色っていうのかな、優しい黄色のものと、あたたかくて深い茶色のものを購入した。なんとなくカップって2個で買ってしまうよな。

帰路はブチアゲ!
買い物を終えたあとも看板犬のデイジーと戯れたり、近くにある神社に行ってお参りしたりそこで引いたおみくじに厳しいことを言われたり馬を見たりして楽しんだ。

またロンタンに戻り、カーシェアの時間が来ていたので帰ることを伝えると「もう!?」と驚かれた。あっという間でした。お土産としてシャインマスカットを2房もいただいた。帰る直前にお店の前でご家族との写真をりおさんに撮ってもらう。どう見てもホストファミリーと最後の記念写真を撮る交換留学生だった。とても良い写真だった。

お母様が案内してくれて無事に車道に出る。行きの運転で自信をつけた私は安全運転で富士吉田を後にしたのだった。帰りの車内ではすっかり火がついてしまい平野綾の1stアルバムを熱唱したり、マクロスFの楽曲を熱唱したりkalafinaを熱唱したりして在りし日のオタクとして車内はブチアガっていた。

途中またマジでマジでトイレに行きたくなりPAに寄るという実績解除も果たした。もうすぐ納車もあるので(車買ったんだ、笑)、りおさんという心強い味方と共にこのドライブができて良かった。ありがとう、ロンタン。ありがとう富士吉田。ありがとう、りおさん! これからもこの連載でやったことないことにチャレンジしていく予定だから楽しみにしててくれよな。


LONGTEMPS(ロンタン)
住所:山梨県富士吉田市下吉田3丁目12−54
電話:0555-22-0400
営業時間:10:00〜19:00
定休日:火曜日
公式サイト:https://longtemps.jp/index.html
Instagram:@longtemps_est1934
Text:Rachel
Photo:Rio Watanabe
Edit:山梨幸輝