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梶原由景が歩いて出会った美味しい店

日本最高の立ち飲み屋から、日本最高の唐揚げチェーン店へ。

author: 梶原 由景date: 2021/06/29

福岡に僕が日本最高の立ち飲みと称した立ち飲み屋があった。あった、というのは既にその店は後進の手に任され、店主は別の道を歩み始めたからだ。

「赤たん」というすでに伝説となったその店は、とにかく他では滅多に出会うことがないレアな焼酎で埋め尽くされており、しかも価格は適正。たこ焼き(塩味とソース味のハーフアンドハーフもできる!)や麦チョコ、梅水晶(サメ軟骨の梅和え)などをアテにしながら心行くまで九州の焼酎が楽しめる奇跡の空間だった。ファッション関係者も多く集い、ちょっとした福岡の高感度サロン的な趣すらあった。「赤たん」のその後にはまだ訪ねる機会を得ていないが、一年半ほど前、店主が新しいお店を開いたとの一報を聞いた時は居ても立ってもいられず即伺ってしまった。

それは「とりあん六本松店」。宇佐、中津を発祥とする大分県北部独特の唐揚げ文化はいまや広く全国に知られている。宇佐の「とりあん」も東京や大阪に進出し多くの食卓へその味を届けている。と、それは良いのだけど、なぜ唐揚げ? 「日本三大唐揚げ」と言われる自由が丘「とよ田」や長崎の今はなき「江戸善」(その味はひとくち餃子で有名な宝雲亭の女将が「江戸善」の職人を招き開いた鳥料理の店「とり福」で継承している)のような専門店でもない。主に持ち帰りで買っていくいわば惣菜店のような存在。しかもチェーン店。あれだけのこだわりの店を営んでいた店主だけにそのギャップに苦しむところだが、行けばその違和感は解消されるだろう。行けばわかるさ、わかるさ行けば。

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夕刻その店は、晩ご飯のおかずにと唐揚げを買い求める客が絶えない。その風景を横目に見ながら僕はカウンターに腰を下ろした。そう、ここ、広くはないがイートインスペースがある。

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そして店主の機嫌次第では取っておきの焼酎も供されるのだ。この日は100本限定の「栗東 宮路」が開けられた。唐揚げをアテに焼酎。モモと言った定番も良いが手羽先も良い。むしろ唐揚げ好きにとってはこのスタイル、堪らない。

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福岡は本当に酒飲みの街だと思う。今ではそう驚きもしないが、女性だけで呑み歩くことが珍しかった時代からこの街にはうわばみが闊歩していた。「とりあん六本松店」はまた酒飲みの新しいドアを開けたのだった。

とりあん六本松店
唐揚げ屋

住所:〒810-0044 福岡県福岡市中央区六本松2-5-8
電話:092-726-6505
営業時間:11:30~23:00
(持ち帰り窓口 21:00終了、立ち飲みラストオーダー 22:45)
※新型コロナウイルス感染対策のため、営業時間は変更の場合がございます。
休:不定休

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クリエイティブディレクター
梶原 由景

LOWERCASE代表。元BEAMSクリエイティブディレクター。ソニーとのデザインホテル・プロジェクトを行うなど異業種コラボレーションの草分けとして知られる。またルイ・ヴィトンとKDDIのモバイルコンテンツを手掛けデジタル、デザインからアパレルまで幅広い業界にクライアントを持つ。藤原ヒロシ氏とコンテンツサイトRing of Colourを立ち上げ情報発信中。
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